認知症が進み、オムツ替えを全力で拒否する父 イヤがる気持ちもわかるけれど…【実家は 老々介護中 Vol.30】
81才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私は、実家を手伝いながらどうにか仕事をこなしています。家で穏やかに過ごす父も、認知症が進んできました。少食ながらも食欲を維持していますが、オムツ替えをイヤがることが増えて苦戦しています。
無言でギュッと力を入れてイヤがる
「人の体は小さくまとめると動かしやすいんですよね」
実家に来てくれるヘルパーさんは全員60代、全員女性です。みんな小柄なのに父の向きを変えたりオムツを替えたりをスムーズにできて、へぇーこうやるのかーと驚きっぱなしです。
父の腕を胸の前でクロスして、膝も立てるのがコツ。体が小さくまとまるだけでなく、ベッドとの摩擦も減るので小さい力で動かせるのだそう。これは父が退院するときに病院で教わったけれど、素人はやっぱりうまくできず、母・兄・私の3人は相変わらず肩も腰も痛くなります。
父は認知症が進み、症状が出ているときのお世話はやりづらいです。オムツ替えをイヤがって介護者を叩いたり引っ掻いたりするから、こちら側はケガ防止のために長袖着用がマスト。体に触れられたくないらしく、ギュッと全身に力を入れて拒否することも。
正直、私たちの方が力は強いのですが、無理やりオムツ替えするのはよくないし…。私もついイライラして「ちょっとやめてよ!」と父に声を荒げてしまったりも。統合失調症のお薬を飲んでいて、暴力的な行動は抑えられているはずだけど、認知症って性格を変えてしまう病気なのかな…。
さて、なぜ抵抗するのか、兄が父から聞き出しました。
「オムツを替えるの、お母さんにしてもらいたいんだって。子どもにやってもらうのイヤなんだってさ」
そうだよね。私もそれは感じ取っていました。
「俺すごくよく覚えてるんだけど、初めて俺が替えたとき本当に悲しそうな顔してたんだよ」
うん、私のときもそうだったし、今もイヤそうにしてるとは思う。
「テレビをつけて気をそらすとかさ、どうにかやっていくしかないよね」と、兄はそれ以上感傷には浸らず、結論が早い。
「紙おむつの医療費控除と購入助成金の申告書類を作っちゃうね」と、もう頭を切り替えて、市町村の使える支援の申し込みをサクッとやっていました。兄は優秀で役に立ち、その分ドライだから私と正反対の性格だな、といつも思います。
なんかごめんね、お父さん。家族みんな疲れちゃうから、お互い割り切ってやっていこう。
「お父さん、ごはんの前にマッサージでもする? コリを取りましょうかー」と母が父の世話を焼きに来ました。母はいつでも前向きで、本当に偉い。能天気なふりをして、耳や顎の近くにある唾液腺エリアをぐるぐる刺激しながら、
「唾液が出ると食べ物を飲み込みやすくなって、誤嚥性肺炎を防げるんだって。唾液が口の中のバイ菌を退治して体にいいっていうし」
訪問看護師さんもイチオシの唾液腺マッサージで、表情もいきいき、若々しくなってくれればなあ。
父は空腹を感じにくくなっているようですが、母の作るおかゆ、市販の介護用ゼリーなどを少量ずつ口にしています。一度にたくさんは食べられず、1日に6回くらいにわけているのでかなり手間ですが。ヘルパーさんと家族の介護で少量ずつ食べ、どうにかカロリーを摂れている状況。
「ほら、ほかほかだから食べなさいよ。お出汁が美味しいですよ」なんて、母が上手いこと言ってどうにか食べさせ、父も落ち着いているなあと思っていたら。
またも、ジェットコースターのような展開が待っていました。数日後に再び緊急入院してしまったんです。またもや熱が出て肺炎の疑い。
年齢的に、肺炎を治療しない手もあるのかもですが、まだ家で過ごせる余地があるなら、治してもらいたいというのが父母の考え。
次は家に帰ってこられるのか、最期が病院になっちゃうのか、ハラハラしています…。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛
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