70才以上の3割も!まぶたが重い「眼瞼下垂」とは?症状や保険適用治療のビフォー・アフター【医師解説】
まずは自分の目の具合を見てみよう。下記の16項目のうち、10個以上該当した場合、眼瞼下垂がかなり強く疑われる。6~9個で中等度、4~5個だと関連は弱く、3個以下なら心配なし!
※主観を基準にしたチェックのため、確実な診断は医師による評価が必要です。
□ おでこのしわがある(眉が上がる)
□ 頭痛が月に1回以上ある
□ 慢性の肩こりがある
□ 慢性の腰痛がある
□ ドライアイのため点眼している
□ 不眠がある
□ 体が疲れやすい
□ コンタクトレンズを20年以上使用している
□ 花粉症もしくはアトピー性皮膚炎がある
□ メイクをする習慣がある
□ 40才以上である
□ 目が落ちくぼむ
□ あごを突き出している
□ 背中が丸くなってきた
□ 顎関節症がある
□ 不安障害がある
出典:眼瞼下垂治療専門の形成外科医・金沢雄一郎さんのウェブサイト「まぶたのお医者さん」https://manabuta.jp/
「この16項目は、眼瞼下垂の症状であり、眼瞼下垂になりやすいポイントでもあります。おでこのしわや眉が上がるといった見た目の症状は、まぶたを開くために無理をしているサイン。肩こりや頭痛もおでこの筋肉の使いすぎが原因かもしれません。あごを突き出すのは、開かない目で見ようとするための姿勢です。6個以上該当すれば、眼瞼下垂かもしれません」(金沢さん)
ただ、チェックリストで6個以上に該当したからといって、生活に支障がなければ手術をする必要はない。保険適用の手術は、あくまで“生活に支障があるから”という前提あってのことだ。
眼瞼下垂の治療法「専門医に相談を」
「私も眼瞼下垂かも」と思ったら、眼科や形成外科を受診して正確に診断してもらおう。
すでに、ドライアイや白内障などの目のトラブルで眼科に通っている場合は、「最近まぶたが下がって見えづらい」などと医師に症状を訴え、相談するのがおすすめだ。
「眼科では、まずどのくらい見えているか、ほかの病気が隠れていないかなどを調べるために、視力と眼圧の測定、眼底・視野検査などを行い、目の機能も検査します。ただ眼科医の中には、眼球まわりのことは詳しくても、まぶたはあまり触りたくない、メスでの切開には抵抗があるという医師がいます。その場合は、必要に応じて医師を紹介してくれるでしょう。
一方、形成外科は体の欠損部分の形や機能改善を外科治療する分野ですが、私のように眼瞼下垂が専門の医師もいます。ホームページなどで医師の特性を調べた上で相談してみるといいでしょう」(金沢さん)
診断~治療の流れ
【1】整形外科・眼科を受診
眼瞼下垂に対応しているクリニックを選ぶこと。美容(整形)外科では保険適用外のことが多いので注意を。
「眼瞼下垂は緊急性のある病気ではないので、医師選びに時間をかけ、納得できるまで説明し、不安なく施術してくれる医師を選ぶこと。これは直感でもいいと思います。信頼のおける医師なら、術後の満足度も高まります」(金沢さん)
【2】診断・病名の確定
<診断結果>
A:眼瞼皮膚弛緩症
B:眼瞼下垂(1)軽度 (2)軽度 (3)重度
C:重症筋無力症など
【3】対処法などを選ぶ
<診断結果>
A:眼瞼皮膚弛緩症
B:眼瞼下垂(1)軽度
対処法:メイクなどでセルフ対処/アイテープなどによるまぶた持ち上げで、一時的に対処可能
対処法:保険適用外(自由診療)/目の開きを美しく整える目的の手術。
<診断結果>
B:眼瞼下垂(2)中等度
B:眼瞼下垂(3)重度
対処法:保険適用外(自由診療)/目の開きを美しく整える目的の手術。
対処法:保険適用/目の開きの機能改善が目的。
<診断結果>
C:重症筋無力症など
対処法:神経内科へ
想定される術式
■埋没法
皮膚を切らず、余分な皮膚を、上まぶたの裏と表を通して医療用糸で折り込んで留める方法。
■眼瞼皮膚切除法
たるんだ余分な皮膚を切り取って整える方法。二重のラインや眉のすぐ下を切ることが多い。
■挙筋前転法
上まぶたの皮膚を表、または裏側から切り、伸びた腱膜を縫い縮めて固定する方法。
「まぶたには2枚の層があり、表側の前葉に皮膚と眼輪筋と隔膜、裏側の後葉には瞼板、眼瞼挙筋、ミュラー筋、まぶた結膜がつながっています(上記 正常な状態・眼瞼下垂のイラスト参照)。前葉、後葉のどちらに原因があるのかを見極めて修復するのはとても繊細な手術ですので、専門医による執刀をおすすめします」(金沢さん)。
■前頭筋吊り上げ術
額の筋肉を利用して筋膜か人工のシートで眉とまぶたをつなぎ、上まぶたを持ち上げる方法。
※埋没法はいわゆる二重まぶた手術に見られる術式で、医師の判断によるが、保険適用されないことが多い。その他の3つの術式は原則的に保険適用される。
加齢による眼瞼下垂と診断されれば手術が保険適用に
眼瞼下垂によく似た症状の病気に「眼瞼皮膚弛緩(しかん)症」がある。これは加齢や紫外線などの影響で上まぶたの皮膚がたるむ病気だが、筋肉の働きは問題ないのが特徴。加齢による眼瞼下垂との合併症であることも多い。こちらも日常生活に支障があれば保険適用になる。
また、自己免疫疾患の1つである重症筋無力症でも眼瞼下垂が起きる場合があり、疑われる場合は神経内科を受診しよう。
とはいえ、眼瞼下垂の原因となる劣化した腱膜を元通りに回復させる方法はない。軽度のうちは、アイテープや二重にする接着剤などで一時的にまぶたの重さを解消する方法があるが、機能を取り戻すには残念ながら手術するしかない。
中等度以上の眼瞼下垂で生活にも支障がある場合は、おおむね保険が適用され、5万円程度(3割負担の場合)で両目の手術が可能。保険適用外の自費の目安は20万~50万円だ。