30年で患者が5倍に急増!【女性の痛風】に要注意 専門医が教える11の予防法「乳製品を摂る」「コーヒーを1日2杯以上飲む」
尿酸値を抑えるには、尿酸の原料「プリン体」が含まれる食品を摂らなければいい―というものでもない。生活習慣を見直し、流れのいい体にメンテナンスしよう。
【1】プリン体の多い食品を知る
尿酸値を下げるにはまず、食事から摂取するプリン体を減らすことが大切。そのためにはプリン体含有量の多い食品に何があるのか、知っておく必要がある。
「動物の内臓や魚の干物はプリン体含有量が多いので要注意です」(大山さん)
プリン体は、ほぼすべての食材に含まれているので、摂取量をゼロにするのは難しいが、1日のプリン体摂取量を400mgまでに抑え、バランスのよい食事を目指そう。
●極めて多い(300mg以上)
鶏レバー、真いわし干物、いさき白子、あんこう肝蒸し
●多い(200~300mg)
豚レバー、牛レバー、かつお、真いわし、大正えび、真あじ干物、さんま干物
●少ない(50~100mg)
うなぎ、わかさぎ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛タン、マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、つみれ、ほうれん草、カリフラワー
●極めて少ない(50mg未満)
コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼きちくわ、さつま揚げ、数の子、筋子、ウィンナソーセージ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、鶏卵、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、米、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、海藻類 (100gあたり)
【2】尿をアルカリ化する食品を取る
余分な尿酸の約7割は尿から排出される。しかし、尿酸は酸性の液体に溶けにくいため、尿が酸性に偏っていると尿酸は溶け込めず、排出量が減ってしまうという。これを防ぐため、尿をアルカリ化する食品を選んで摂り、酸性化させる食品を控えることも重要となる。
「尿のpHは6.0前後が平均で、もともとやや酸性ですが、pH値6.2~6.8程度の中性寄り(7.0が中性)に保つと腎障害や尿路結石の予防にも有効です」(大山さん)
★アルカリ化する食品(アルカリ度が高い順から表記)
ひじき、わかめ、昆布、干ししいたけ、大豆 ・ほうれん草 ・ごぼう、さつまいも ・にんじん ・バナナ、里いも ・キャベツ、メロン ・大根、かぶ、なす ・じゃがいも、グレープフルーツ
★酸性化する食品(酸性度が高い順から表記)
卵、豚肉、さば ・牛肉 ・かつお、帆立貝 ・精白米、ぶり ・まぐろ、さんま ・あじ、かます ・いわし、かれい ・あなご、えび
※上記食品表は、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン作成委員会:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第1版,49』(2002)4訂食品成分表を参考に編集部で作成。
【3】牛乳や乳製品を積極的に摂る
牛乳やヨーグルト、チーズといった乳製品を毎日摂るのも尿酸値を適正に保つのに効果的だという。
「乳製品にはカゼインというたんぱく質が含まれていますが、これが胃腸で分解されてアラニンという物質に変化すると、アラニンの働きで尿酸が排出されやすくなるからです」(大山さん)
アーモンドミルクやココナッツミルク、豆乳にはカゼインが含まれないので注意。
【4】コーヒーを1日2杯以上飲む
「痛風の発生率は、コーヒーを1日2~3杯飲むと78%、4杯以上飲むと43%に低下する」
といったコーヒーと痛風にかかわる新たな研究結果が近年、海外および国内の研究で明らかになっている。
「コーヒーが尿酸値を下げるわけではないのですが、痛風の発生率は減ることがわかっています」(大山さん)
原因はまだ定かではないが、コーヒーに含まれるポリフェノールの抗炎症作用のおかげだという説もある。低脂肪乳を加え、砂糖はなるべく加えないで飲むといい。
【5】1日2Lの水を飲む
水を1日2L程度飲むと、体内の巡りがよくなり、尿が出やすい体になるという。ただし、汗をたくさんかいたり飲酒をした場合は、それ以上摂る必要がある。
「水は一度にがぶ飲みせず、起床時・食事のとき・入浴時・就寝前に分け、コップ1杯ずつ程度飲むのが効果的です」(大山さん)
水分は水や麦茶などがおすすめ。清涼飲料水やスポーツドリンクは尿酸値を上げる果糖が大量に含まれているため、控えた方がいいという。
【6】食べすぎによる肥満に注意
尿酸値を上げる原因のひとつに肥満がある。
「プリン体の多い食事を控えるよりも、肥満の解消の方が重要になります。なぜなら、肥満とは体内のインスリン値が高い状態にあるからです。インスリンには、尿酸が尿に溶け込むのを抑制する働きがあるため、尿酸値を上げてしまうのです。持病に高血圧や糖尿病がある人は合併症として痛風を引き起こしやすくなるので、特に注意が必要です」(大山さん)
肥満を解消するには、1日の適正エネルギー量と肥満度を下記の計算式から算出し、食べすぎていないか、自分の肥満度はどのくらいかを常日頃からチェックすることが大切だ。
<肥満度>
BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
18.5未満→低体重/18.5以上25未満→普通体重/25以上→肥満
<1日の適正エネルギー量>
1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×30(kcal)
※標準体重は「身長(m)×身長(m)×22」
【7】過度な糖質制限や断食はしない
女性の痛風は閉経後の50代以上に多いが、過激なダイエットをする若い女性にも増えてきているという。
「厳しい糖質制限をすると、糖質から作られるエネルギーが足りず、それを補うため、脂肪が分解されてエネルギーとなります。このとき、ケトン体が発生。ケトン体は尿酸の排出を阻害する作用があるので、尿酸値が上昇しやすくなるのです」(大山さん)
【8】激しい運動、筋トレはNG
尿酸値を下げるには肥満の解消が重要だが、かといって激しい運動は痛風を悪化させる。
「激しい運動や筋トレをすると筋肉内に乳酸が蓄積されます。この乳酸には尿酸の排出を抑制する作用があるのです。運動をするなら、散歩などの適度な有酸素運動がおすすめです」(大山さん)
【9】揚げ物、炒め物、植物油脂を控える
「日頃から揚げ物、炒め物をよく食べ、植物油脂を多用していると、体内の細胞内に酸化した油分が多く含まれるようになります。すると、プリン体から尿酸を産生する過程で、活性酸素が多く発生するようになるのです。活性酸素は、ほかの物質を酸化させる力がとても強く、発生量が増えると、脳や血管、皮膚を酸化させ、細胞にダメージを与えて免疫力を低下させたり、生活習慣病を引き起こしやすくしたりします」(桑島さん)
油も体内には必要な構成要素だが、食べすぎには注意したい。
【10】ハチミツ水を活用する
糖分(果糖)は尿酸値を上げると前述したが、運動時には必要だという。
「運動に必要なエネルギーの源になるのが糖分。しかし糖分が不足した場合、脂肪を分解してエネルギーにします。このとき、脂肪にたまっていた“酸化した脂”が血中に流れ出し、体内が酸化してしまいます。これを防ぐため、抗酸化物質である尿酸が合成されるわけです。ですから尿酸の増加を防ぐためにも、運動するときは糖分を摂りましょう。特にハチミツは単糖類なので吸収が速く、すぐにエネルギーになるのでおすすめです」(桑島さん)
以下に、ハチミツが手軽に摂れる桑島さん考案レシピを紹介。
◆ハチミツりんご酢
適量の水か炭酸水に、ハチミツとりんご酢を同等量(1:1)入れる。
※りんご酢に含まれているカリウムには、塩分を排出する働きが。血圧が気になる人にもおすすめ。
◆ハチミツシナモン
適量の湯に、ハチミツ大さじ2~4、シナモン小さじ1/2を加えて混ぜる。
※シナモンには体を温める効果があるので、冷えの改善や代謝アップにも有効。しょうがでもOK。
◆ハチミツレモン
水300g、ハチミツ大さじ2、天然塩2つまみ、レモン果汁適量を混ぜる。
※レモンにはビタミンCやクエン酸が豊富。疲労回復や美肌効果、免疫力アップなども期待できる。
【11】酒はなるべく控える
一般的に酒に含まれるプリン体は蒸留酒に少なく、醸造酒に多い(右記一覧表参照)。しかし最近では、プリン体をカットした機能性発泡酒なども販売されている。そういったものや、蒸留酒を選べばいいのでは、と思う人もいるかもしれないが、そうもいかないようだ。
「そもそも酒を飲むこと自体が、痛風を悪化させる原因になります。アルコールを分解する際、尿酸が大量に作られるからです。さらにアルコールには、尿酸を排出する働きを抑える作用も。適量ならさほど影響はありませんが、飲みすぎると尿酸値を上昇させてしまいます」(大山さん)
どうしても飲みたいときは、尿酸の排出を促す成分・ポリフェノールが豊富な赤ワインがおすすめ。それも適量は1日2杯程度だ。ほかにも、ビールなら中瓶かロング缶(500ml)1本、日本酒1合、焼酎(35%)1/2合、ウイスキー・ブランデーダブル1が尿酸値を上げない目安量とされる。
◆アルコール別プリン体の含有量(mg/100ml)
★蒸留酒
ウイスキー:0.1~0.3
ブランデー:0.4
焼酎(25%):0
泡盛:0 梅酒:0.2
★醸造酒
日本酒:1.2~1.5
ワイン:0.4~1.6
紹興酒:7.7~11.6
ビール:3.3~8.4
地ビール:4.6~16.7
発泡酒:0.1~3.9
低アルコールビール:2.8~13.0
★その他
ビールテイスト飲料:1.3
覚えておこう! 痛風になったときの応急処置薬
痛風の痛みは突然起こる。病院へすぐに行けないときはどうすればいいのか?
「市販の痛み止め薬(頭痛薬)を使っても構いません。ただし、『アスピリン』が含まれる市販薬は尿酸値を上げる可能性があるので控えましょう。『ロキソニン』や『イブプロフェン』が含まれている薬を選んで」(大山さん)
『バファリン』シリーズは、商品によってアスピリンを含むものと含まないものがあるため、購入時は必ず薬剤師に相談し、後日病院へ。
<これは飲んでもOK> ※購入時は必ず薬剤師に相談を
□ 『ロキソニン』シリーズ(第一三共ヘルスケア)
□ 『イブ』シリーズ(エスエス製薬)
□ 『バファリンプレミアム』『バファリンプレミアムDX』(ライオン)
取材・文/北武司 イラスト/さややん。
※女性セブン2023年10月5日号
https://josei7.com/