連載

要介護5の老々介護に、アラフィフの息子・娘が参戦・・・。家族で仲良くするって難しい【実家は 老々介護中 Vol.28】

 81才になる父は、がん・認知症・統合失調症と診断され、母が在宅介護をしています。美容ライターの私は、実家を手伝いながらどうにか仕事をこなしています。父が退院、母・兄・私の3人で介護を始めるも、なかなかに体がキツいです。3人で口げんかになったり、余裕のない毎日。本人がデイサービスには行きたくないと言うし、家オンリーで過ごす計画は無茶なの?どうなることやらです。

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ケンカせず、うまく介護を進めるにはどうしたらいい?

「なんでこんなことになっちゃったんだろう? お父さんはさ、ずっとこの家でおいしいものを食べて、幸せに暮らしていたのに」と言う母。

 病院から家に戻ってきた父は、介護用の高カロリー食と、胡麻豆腐やかなり柔らかいおかゆなどを食べています。脱水状態にならないよう、とろみのついた飲み物をチョビチョビ摂り、テレビを見たり眠ったり。必要になったら点滴を始めよう、と話しています。

 食が進まない父の食事は1時間半くらいかかります。おむつ替えも大変ですが、それよりも、大腸がんの痛みを訴えることが増え、関節が痛いとか肌がかゆいとか、寒い、暑いなど、何かと人を呼ぶのにいちいち応えるのがきつい。夜中に父がなぜか「うー、うー」とうなっていることが数日続き、母が睡眠不足でダウンしてしまいました。

 そこで、助っ人に兄を呼ぶとありがたいことに協力的で、母が回復するまでは私と兄がメインで父を看ることに。

 ところがです。介護のプロがじゃんじゃん来てくれるとはいえ、仕事しながら、しかもヘルパーさんの来ない夜間はあまり寝られないとなると、アラフィフの兄と私もすぐにバテ気味に…。

 兄は未婚で時間の自由がきくほうですが、夜勤のある仕事なので、夜に父を見守る当番は私の出番が多め。私も自由業とはいえ、抜けられない仕事の日とか、夫と子どもたちをずっと放っておくわけにもいかないとき、自分の家に戻らねばならず、夜勤明けの兄が日中看てくれる日もあります。

 そこへ来て母の心のケアもしなくてはと思うと、完全にキャパオーバーです。私と兄は、母に向かって「今それ言うの?」「お父さんは81歳なんだよ、年齢的にしょうがないでしょ」と、よくない言い方をしてしまい、ちょっと揉めました。本当にそう思っているわけではないのですが…。

 兄に言わせると、「やれるところまで介護して、最期まで家で過ごせたらそれでいいし、やっぱり 無理になったら施設に行くってみんなで決めたでしょ。お母さんが暇すぎると余計なこと考えて気分が落ち込むんだったら、体力に合わせて、もう少し当番に入ったらいいじゃない」。

 その言い方もどうかと思うし、これまでほぼ手伝わなかった兄が威張っているのもムカついてしまいます。余計なことを言わないよう、グッとこらえているので、お腹に黒いモヤモヤが溜まりそう。

 まあ、父ができるだけ快適に過ごせるよう、いろいろ目をつぶって取り組むしかない。目下気をつけたいのは、褥瘡予防です。ヘルパーさんによると、「褥瘡ってすぐできるし、すごく痛いようですよ。体重が集中する尾てい骨とか、肩の骨なんかが要注意で、1日でボコッと穴が開いちゃう人もいるし、骨が見えるところまで悪化しちゃう人もいるんですよ」とのこと。

 褥瘡予防のために父が体の向きを変えるのを手伝うのですが、重たいんですよね。夜中にしょっちゅう向きを変えるのもきつい。それならと、寝返りを補助する電動マットレスをリースしました。

 ところが、父本人が「モーターがうるさい」と言って1日でスイッチを切ってしまいました。介護を楽にする装置なのに。介護保険1割負担で1か月のリース代が1500円強。決して安くはないのに残念。

「お父さんが『お腹が痛い』って言うとき、何て答えてる?」と兄に聞かれました。私が「腸が細くなってるからね、っていう言い方で統一してるんだよ。最初のころ教えたじゃん」と答えると、兄は「えー、そうだっけ。まあ、そう言うしかないよなあ」と、なんだか癪に触る言い方です。

 ムカつくけど、堪えろ、私。人手は多いほうがいいんだから。兄が来なくなったら困ります。

 母は母で、「あのさ、明日は医者が来るんだっけか、看護師だったかな? もう、毎日だからわかんなくなっちゃったよ」と、こっちが忙しいときに限ってあれこれ聞いてきます。「もう!」と思うけれど、怒らないようにしなくては。

「覚えなくていいよ。お父さんは、お母さんじゃないとダメなときがあるんだから、お父さんを癒やす役目でいいんじゃないの」と伝えると、母は安心したようです。50年一緒にいた絆はさすがで、母がいると父は安心した表情を見せます。

 実は、父も含めて家族で話し合い、施設も検討することになっています。見学の予約を入れてありもうすぐなのですが、今はできるところまでどうにか、やってみます。

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文/タレイカ

都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。

イラスト/富圭愛

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