片付け嫌いの心理カウンセラーが、自宅を片付けてわかったこと「部屋と心理状態には関連がある」|心地よい部屋の法則
忙しくなるとついつい部屋の掃除は後回しになってしまいがち。しかし、いざピッカピカに家の中を綺麗にしてもなぜか落ち着かないこともある。ものが多いことは悪いことなのか、どこまでやれば“心地よく” なるのか。片付けで人生が変わった“片付け嫌い”の心理カウンセラーに、部屋と人の心理との関連性を聞いた。
教えてくれた人
伊藤勇司さん/空間心理カウンセラー。片付け心理研究家、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。8000人以上の人々の空間作りをサポートした実績をもとに、Amazon Kindle電子書籍に著作を発表し続ける。近著に『片づけることが本当に正解なのか 汚部屋で散らかるあなたへ贈る最後の言葉』(電子書籍)。
部屋を大切にしないと人間関係も崩れる
かつて引っ越しの仕事で多くの部屋を見るなか、「部屋と心理状態には関連性があると気づいた」という空間心理カウンセラーの伊藤勇司さん。
「1日に3件の離婚家庭の引っ越しに携わったとき、各部屋に共通するものを感じたのです。それは『荒れている』『ものがあふれている』『寂しさを感じる』でした。3軒目のお宅では、ベッド下から元奥様との写真が出てきました。ご主人はそれを見つめながら『もっと早くいろいろなことに気づけていれば…』と泣き始めたんです。部屋を大切にしないと人間関係も崩れてしまうのかなと強く印象に残りました」(伊藤さん・以下同)
疲れた体で自宅アパートに戻った伊藤さんは、玄関を開けてさらに衝撃を受けた。
「離婚家庭の部屋より、私の部屋の方がずっと荒れていました(苦笑)。心理学を学んでいた当時の私は、知識を得るとともに自分も成長した気になっていました。『片付けなんてやらなくても死にはしない。もっと実利になることをやった方が自分のためだ』と思っていたんです」
“自室の荒れよう”に驚きつつ、「片付けをしたら何か変わるのだろうか?」と、実験的な好奇心が芽生えたという。
「手始めに、いちばん大切にしているものを捨ててみることにしました。お金と時間をかけて入手したものの“積ん読”状態だった心理学関連の書籍やCDです。これを全部手放したら、自分の運勢は最悪になるのか、ならないのか」
結果は後者だった。
「むしろ心が身軽になり、取捨選択ができるようになったのです。不要な人づきあいや情報に振り回されることも減り、自分が突き進む道が明確に見えてきました。“積ん読”傾向の人は、挫折感で自己肯定力が低くなることも。リセットする意味で整理するのもありだと思います」
明らかに変化があったことで、次は“磨き”にハマった。
「ものが減ったことで広くなった床を、ぞうきんを使って自らの手で水拭きすると、空間が清浄になるのをじかに感じ、すごい爽快感がありました。いまでも片付けは苦手ですが、磨く作業は大好きです。ムシャクシャしたときにキッチンや水まわりを磨いてみてください。夢中で磨くことで怒りが転化でき、きれいにもなっておすすめです」
→“不幸を呼ぶ家”の特徴【チェックリスト】実例ビフォア・アフターで見る“病は家から”…「建築医学」手法で幸せの家にする方法
部屋には「素の自分」が表れている
ところで、あなたが長く過ごすことの多い部屋やリビングは快適だろうか?自信がない人は部屋の状態を客観視してみるといい。
「どんなに社交的な人でも、自宅に帰れば素の自分が出ます。部屋は、よくも悪くもその人の習慣が表れる場所。そのうえで自分の部屋を見てみると、『捨てられないものが多い』『温もりがない』『寂しそう』というように、部屋の傾向が見えてきます。
そしてそれは、いまの自分自身を投影していることが多いのです。ものを整理するのか、観葉植物を足すのか、自分なりに改善することで、自身も整う人が多いんです。片付けというと『収納テク』『断捨離』などが人気ですが、ものがなくなること=いい部屋だとは、私は思いません。自分にとって『居心地がいいかどうか』が大事。誰かの意見ではなく、自分を主体に考えてください」
くつろげる空間に変えたら素敵な出会いが
伊藤さんがかつて相談を受けたAさん(30代後半女性)は、「憧れの部屋」として何度も雑誌に取り上げられるおしゃれな部屋に暮らしていたが、最大の悩みは結婚できないことだった。
「そこで私が、『人もうらやむ部屋に住む自分が好きか、パートナーと過ごす自分が好きか、どちらを選びますか』と聞いたところ、『もちろんパートナー』との答えでした。そこから、誰かとくつろげる空間を思い描いて部屋を変えていくと、1年後に素敵な出会いがあったのです。もう雑誌に載るような隙のない部屋ではないけれど、Aさんは、自分がもっとも幸せに過ごせる空間を手に入れたのです」
自分や家族の居心地がいい部屋は何か?を考えると、手放してもいいもの、必要なものが見えてくるかもしれない。
ただ、散らかった部屋は脳疲労を促進すると伊藤さんは懸念する。
「散らかった部屋=負の感情につながります。『週末に片付けるぞ』と決意しても、散らかった場所を見るたびに負の感情が蘇(よみがえ)り、やる気をそがれてしまうのです。反対に、自分がきれいだと思う箇所を見ると、脳に快適な感情が生まれます」
「ソファまわりだけ」「テーブルまわりだけ」など、部分的でもいいので毎日決めたところをきれいに保ち、そこを見るようにすると、快適感情が呼び覚まされるという。
「1日のうちの5分など無理のない時間を決め、片付けを2週間続けてみてください。次第にきれいなことが当たり前になり、脳のご機嫌が保てます。1日かけて家ごとがんばるより、毎日維持する持久力が、精神的にもいいのです。それが習慣化されると日常のパフォーマンスも上がり、脳の活動も活発化して生体機能が上がります。アンチエイジングや肌がきれいになったというケースもありますよ」
部屋の目に付くところに好きなアイテムを飾るのもいい。
「家族の写真や推しの写真など、見て心が安らぐものは脳の働きをよくしますので、大いに飾ってください」
→「床に物を置かないだけ」で家は片づく!床置きしがちな物のスマート収納テク
クローゼットの整理で運気が上がる
女性の場合、クローゼットを整えることが運気アップのきっかけとなるそうだ。
「クローゼットは自己表現を司る場所。『私という人間をこう見せたい』という観点でクローゼットを見ていくと、いるもの、いらないものが見えてきます。『いまの自分に合うから』『流行だから』ではなく、あくまで『なりたい自分』を軸にするのです」
着てみたかったけれど躊躇(ちゅうちょ)していた色を選ぶのもいい。「自分を変えたい」と望む人には、クローゼットの見直しが効果てきめんだという。
「自分が変わらなくても服を変えると相手の反応が変わるので、対人を通して運気を開く扉になることでしょう。正反対に、『輝いていた頃の服が捨てられない』など、過去に引きずられている人の心理状態もまた、クローゼットによく表れます。なかには、『いまなりたい自分がわからない』という人もいます。大切なものを無理に捨てろとは言いませんが、未来の可能性を優先しないのはもったいないと思います」
最後に、金運が上がる片付け術なんて、あるのだろうか。
「まずは“家の顔”である玄関を整えること。神社をイメージしてください。ご利益が明確で空間もシンプルですよね?ごちゃごちゃしていて統一感がないと、ご利益もあいまいになってしまいます。たたきをきれいに拭き、靴を置きすぎないこと。きれいな気が出入りすると、循環もよくなります。収納スペースが少ない場合は、とにかく脱いだ靴をそろえましょう。1秒でできますし、整った形が気持ちいいというイメージが定着します」
不幸を吹き飛ばし、ご機嫌な人生を過ごすために、今日から早速始めましょうよ。
→”幸せを招く”家の間取り・環境とは?実例に学ぶ「心によい影響を与える家」5つの要素
あなたの片づけ方はどのタイプ?性格診断をやってみよう!