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介護の困りごとを相談できる場所一覧|「地域包括支援センター」「社会福祉協議会」「ヤクルトやALSOK」などその役割を紹介

 厚生労働省の介護保険事業状況報告(令和3年度)によると、2022年3月末時点での要介護(要支援)認定者数は690万人となり年々増加傾向にある。元気に見えても親の介護は突然始まることもあるため、もしもの時の「頼り先」を早めに知っておいたほうがいい。専門家おすすめの「誰でも利用できる介護に困った時の相談先」を紹介する。

教えてくれた人

川内潤さん/NPO法人「となりのかいご」代表理事、安藤なつさん/お笑いコンビ・メイプル超合金、太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト、小山朝子さん/介護ジャーナリスト・オールアバウトガイド、野原広子さん/女性セブンライター

介護に困ったらまずは「地域包括支援センター」に相談しよう!

 いざ介護が始まったとき、まず最初に頼るべき場所はどこなのか。多くの専門家たちが“初めの一歩”として挙げたのが「地域包括支援センター」だ。

「簡単にいえば“地域の高齢者なんでも相談所”。人口3万人に1つ、だいたい公立中学校の学区ごとに置かれている、介護の専門職が常駐する無料の公的機関です。現状や悩み事を話すと、それに合ったサービスや制度を紹介してくれるうえ、電話での相談も受け付けている。第一選択として、これ以上にふさわしい頼り先はありません」(NPO法人「となりのかいご」代表理事・川内潤さん)

 お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさん(42才)も口を揃える。

「まだ要介護になっていない段階でも、心配事や悩み相談を受け付けてくれます。また認知症なのか単に物忘れなのか迷ったときに、専門知識を持った第三者の目線で受診すべきかどうかのアドバイスをもらうこともできる。

 “地域包括支援センター”という名称が何をしてくれる場所なのかわかりづらいと感じ、足が遠のいている人も多いようですが、高齢者の生活不安について何でも気軽に相談できる場所として認識してほしい」

 介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、地域包括支援センターと並行して「社会福祉協議会」の存在も覚えておくべしと話す。

「半官半民のような形で運営されており、介護に関する相談に乗り、必要に応じて有償ボランティアによる介護サービスを紹介してくれます。たとえば東京都中央区の社会福祉協議会のように、登録制で高齢者向けに入退院時のサポートを提供するところもある。また、介護にかかるお金などを無利子または低利子で貸し付けする『生活福祉資金貸付制度』などの窓口でもあるのです」

 住んでいる地域の「民生委員」も味方になると話すのは、介護ジャーナリストでオールアバウトガイドの小山朝子さんだ。

「民生委員は厚生労働省から委嘱された非常勤の地方公務員であり、住民の身近な相談相手です。支援を求める人と行政をつなぐパイプ役であり、“介護に疲弊している” “生活が困窮している”などあらゆる悩みに応じてくれる。まだ何か問題が起きていなかったとしても『いまのところ訪問していただく必要はないですが、万が一のときにはお世話になるかもしれません』などと民生委員に一声かけておくことで気にかけてもらえるようになり、いざというときの助けになるはずです」(小山さん)

 太田さんは「医療ソーシャルワーカーも頼りになる」と話し、いざというときの相談相手として覚えておくことを推奨する。 

 ある程度の規模の病院では「地域連携室」などの名称の相談対応窓口を設けており、医療ソーシャルワーカーはそこに配置されている。治療のことや退院後のこと、転院先のことなど入院中の幅広い悩みに対応するほか、医療費などの金銭的な悩みもサポートする。

「親と子で世帯分離すると医療費負担が下げられるなど“裏技”を教えてもらったという人も多いです」(太田さん)

ヤクルトや生協なども見守りサービスを提供

 最近は民間の信頼ある企業も介護や見守りサービスに続々と参入している。

「たとえば生活協同組合のなかでも、会員限定でボランティアサービスをやっているところがあります。そのほか一部新聞販売店が自治体と提携した見守りサービスを提供するほか、『ゴミ出し支援』として収集日にゴミを出していないと呼び鈴を鳴らしてくれる自治体もある」(太田さん)

 ヤクルトでは「愛の訪問活動」として、全国に張り巡らされたヤクルトレディの販売網を利用したサービスを一部地域で提供している。

「自治体から要請を受けたひとり暮らしの高齢者宅に決まった頻度で訪問し、商品をお届けしつつ、何か変わったことはないか見守り活動をさせていただいています。倒れている高齢者をヤクルトレディが発見して一命をとりとめたケースのほか、振り込め詐欺被害を防いだり、徘徊している高齢者の保護など、多くの事例があります」(ヤクルト広報担当)

 在宅介護の末、93才の母を看取ったオバ記者こと野原広子さん(66才)も、民間サービスに頼った経験があると振り返る。

「ダスキンが実施する食事介助や買い物、掃除などの自費介護サービスを一時的にお願いしたことがあるけれど、年寄りばかりの辛気くさい家に若いヘルパーさんが来るというだけで、ガラリと雰囲気が変わったのがありがたかった。母もものすごい笑顔で迎えていたし、改めて家に第三者が来ることの大切さがわかった経験でした」

 AIが発達した現代において、最新のIT機器も人間と同格の「頼り先」としてSOSに応えてくれる。

「アマゾンで取り扱われている『エコーショー』という端末は、介護される側の操作は一切不要で、いつでもつながるテレビ電話機能がある。遠隔で見守るにはうってつけの商品です。ただし、“監視”につながらないよう、本人が本当に必要としているかどうかを見極め、置き場所もリビングなどプライバシーが保てるところにするなど、ある程度の配慮が必要となります」(川内さん)

介護の困り事別「安心できる頼り先」一覧

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