猫が母になつきません 第364話「じゅけんする」
家にいるときから教員採用試験を受けるという話はしていました。もう何ヶ月も続いています。いつも急に受験票を探しはじめ、明日が試験だ、とか、今日が試験なのに、とか切羽詰まった状況なのです。母は施設内で朝5時に夜勤のスタッフの方のところへ受験票を取りに行きます。スタッフの方が受験番号をくれたり、国語の練習問題などを採用試験のかわりにやってくれたりしているのですが、母の試験はなかなか終わりません。施設長さんのことを「教育長さん」と呼んだり、時にはドイツ語の先生だと言ったりもします。朝5時に起きだしてくるのも困りものですが、「試験を受けに行かないと」と外に出ようとしたりもしているらしい。一度施設の近くの認知症外来にかかることになり、母には「試験に行くよ」と言って出かける準備をして車に乗りました。母は何度も「受験票はどこにやったかしら」とかばんをごそごそ。施設の方に「260番」という受験番号をもらっていました。「面接もあるの?」ときくのであると答えるとちょっと不安げな顔。 緊張しているのかな?と思い「大丈夫、大丈夫、面接には一緒に行くから」と言うと「英語で?」。ひーっ、そんな面接、私もごめんです。「日本語じゃない?でも英会話やってたから英語でも大丈夫でしょ?」「どうかしらー、最近使ってないからー」。一転自信ありげな表情になる母です(苦笑)。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。