夫の定年後に妻が備えるべきこと「親の介護費用、退職翌年の住民税」ほか実例に学ぶ
【1】持ち物の処分に意外とお金がかかる
住まいの整理には意外と費用がかかる。「定年後は夫婦で4LDKの戸建てから2LDKのマンションに引っ越し。ひな人形や大型家具などが売れず、業者に処分してもらったら、総額で20万円以上かかりました」(東京都・68才)。
【2】定年を迎えて1年後の住民税に要注意
「定年を迎えて1年後は、主な収入が年金になり激減するのに、前年度の所得から算出された住民税(非消費支出)がかかります。それを想定して貯金をしておかないと、かなり痛い支出になります」(井戸さん・以下同)
【3】詐欺に狙われやすくなる
2022年の特殊詐欺の認知件数は1万7570件。うち、65才以上の被害者は約87%だ。「家にいることが多いせいか、訪問販売がよく来るようになりました」(千葉県・66才)。一度対応すると目をつけられやすいので、家に人が来てもすぐ出ない、固定電話は取らないこと。
【4】知らないうちに退職金を使いこまれる
「定年退職後、勤続40年のごほうびだと私に無断で高級外車を買った夫。おかげで予定していたリフォームができなくなりました」(神奈川県・62才)。退職金は定年後の家計を支える大切な資金。夫婦で使い道の共有を。
【5】冠婚葬祭費が増える
60才を過ぎると、子供や孫の慶事、親戚や友人の弔事が増え、香典や祝い金の支出が増える。「事前に『香典は一律1万円』『花輪は1つ。お供えはなし』などと親戚間でルールを決めておくと予算取りをしやすく、金額で悩む必要もありません」。
【6】子供が独立しない
「42才の未婚の娘が実家暮らし。働いていますが、家にお金は入れず、生活費がばかになりません」(静岡県・68才)。総務省の調査によると、35~44才で未婚の子が親と同居している人は、2016年で288万人。家にお金を入れなければひとり暮らしをさせるなど話し合いを。
【7】医療費・介護費がかかる
「母親が鹿児島でひとり暮らしなので、入院した際、お見舞いに行くための交通費や宿泊費で足が出ました」(東京都・62才)。行政の補助制度がある介護費用よりも交通費の方が意外とかかる。全日空や日本航空などでは介護割引などの制度もあるので活用を。
【8】夫の死で年金収入が激減
「夫の死後、夫がもらっていた老齢厚生年金と老齢基礎年金がなくなり、代わりに遺族厚生年金と、私の年金だけで生活することになり、月の収入が22万円から11万円に」(埼玉県・70才)。
定年後、夫なしでの収入でもやっていけるよう試算をしておくことが大切。
【9】老後の住み替えに大きな出費
「私の場合、介護が必要になってもできるだけ自宅で過ごしたいため、医療機関への移動などを考え、夫の定年後、利便性のいい場所へ引っ越しました。住み替えには初期費用がかなりかかりますから、退職金を残す、積み立てておくなど、定年後すぐに計画を」
【10】金融機関からの勧誘が増える
「私の相談者から、定年後、銀行や証券会社などから、“退職金や年金を運用しないか”といった営業が増えたとよく聞きます。少額投資非課税制度の『つみたてNISA』は、60代から始めて20年運用するとしても、途中で認知機能が衰えて引き出せない可能性も」。すすめられても、決断は慎重に。
【11】再ローンを組む人が増える
「自宅で最期まで過ごしたいので60才のとき、築35年の家を15年ローンでリフォーム。この年齢でローンを組むのは精神的負担が大きいと実感」(千葉県・65才)。定年後“再ローン”を組み、80代までローンが残っている人は少なくないと井戸さん。退職金を充てるか事前に貯金しておくことが望ましい。
【12】親の遺産が負の遺産で…
親の死後、実家を相続したことで大きな負担を抱えるケースが少なくないと井戸さん。
「交通の便が悪くて築年数も古いなど、資産価値の低い戸建て住宅は売れず、固定資産税や火災保険、家の手入れのために通う手間や費用もかかり、大きな損失に。親が生きている間に、実家の処分について話し合いを」。
教えてくれた人
井戸美枝さん/ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士
生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を専門とし、「難しいことでもわかりやすく」をモットーにメディアなどで解説。近著に『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新聞出版)。
取材・文/桜田容子 イラスト/なとみみわ、尾代ゆうこ
※女性セブン2023年7月13日号
https://josei7.com/
●定年後におすすめの小さな仕事20選・給与目安「老後の働き方は多様な選択肢がある」
●65才以上の女性が“後悔”している【お金のこと】調査|3位「個人年金加入」、2位「暮らしの設計」、1位は?
●「定年後うつ」にならない“充実したセカンドライフ”は準備で決まる!知っておきたい「60才〜75才に起こる出来事チェックリスト」