暮らし

医師・村崎芙蓉子さん(87才)が実践する人生100年時代の健康法「男性ホルモン補充療法」

 日常生活が制限されることなく自立した生活が可能な「健康寿命」。その健康寿命が男女ともに最も長い国は、平均74.1才の日本であると世界保健機関(WHO)が発表した(2023年版世界保健統計)。人生100年が当たり前になりつつある現代において「最後の青春」を元気に過ごすための実践法を女性成人病クリニック院長の村崎芙蓉子さん(87)に聞いた。

高齢女性のための「男性ホルモン補充療法」

 87才になりましたが、いまも現役医師として働いています。この年になっても患者さんから学ぶことは多いのです。

 今年1月に高齢女性のための【1】男性ホルモン補充療法をスタートしました。きっかけは2020年夏、コロナ禍で10日間ステイホームした後の出勤時に、足の筋力が落ちて思うように歩けなくなっていたことです。エアロバイクやプロテインを試したけれど、全然筋力が戻らない。そこで気がついたのは、男性ホルモンの力を借りることでした。

 男性ホルモンは女性の体内でも分泌されていますが、その量は加齢とともに失われます。私は閉経後の50代に重度の更年期障害に悩まされ、女性ホルモン補充療法で救われたので、「今度は男性ホルモンが助けてくれるのでは」と思い立ちました。実際に男性ホルモンを補充すると歩けるようになり、筋肉がついてこの3年間で太ももが1cmほど太くなりました。この効果を患者さんにもお教えしたくて男性ホルモン補充療法を開始しました。

 いまは人生100年といわれる時代。しかし、女性の健康寿命は平均寿命より12年ほど短い。12年も人の力を借りながら寝たきりで生きるのは、あまりにもかっこ悪すぎる。とはいえ、6070代のように仕事をしながら家人の面倒をみる体力はもうない。

 それに、この年齢になったら自分の仕事や読書にもっと集中したい。その思いで23年前、ひとりで過ごすために中古のマンションを買い、夫とは【2】「4日同棲3日別食」にしました。雑事に邪魔されず、好きなことに集中できる「城」を持ったんです。その部屋で初めて過ごした日の解放感は本当に最高だった。獲得した自由です。

 以来、ひとりでいるときは【3】家事をしないと決めました。食事はデパ地下のお総菜が多いです。ご飯もレンジでチンしたり、手抜きを心がけています。ですが、【4】減塩と高たんぱく質は意識しています。 

【5】読書は大好き。ハードボイルドや国内外の小説から漫画までジャンルを問わず読みふけっています。明け方近くまで読み続けることもあるけど、徹夜は翌日に響くので午前4時には寝るようにしています。新聞も読むのが好きで、家を空けてたまってしまった古い新聞もちゃんと読みます。日付は古いけれど必ず何か新しい情報があるんですよね。

「推し活」は医療を超える

 医療以外のことをきちんと学んだことがないので70才以降に時間ができたら【6】勉強をしたいとずっと思っていました。いまは苦手だった数学や物理の、どこでつまずいたのかを放送大学のテレビ番組を眺めながら、ぼんやり検証しています。テストさえなければ、学問は最高のエンターテインメントですよ。

 もちろん勉強ばかりしているわけではありません。私は【7】嵐の大野智くんの大ファンでした。コンサートに行くためにファンクラブに入会したほど。もともとはマイケル・ジャクソンを敬愛し、彼の最後のコンサートの様子を描いた映画『THIS IS IT』は7回見ました。ある日テレビで嵐が歌っているのを見たとき、大野くんの踊りがマイケルに通じていると思い、その場で「大野推し」になったんです。

 実際に札幌や名古屋で行われた嵐のコンサートにはファン仲間と一緒に行き、ペンライトを振りました。ジャニーズはほかにも中島健人くんや山田涼介くん、ラウールくんなど顔がきれいで踊りもうまい人が多いけど、推しまではいきませんね(笑い)。

 読者に伝えたいのは「【8】ときめきは医療を超える」ということです。大野くんでも学問でも読書でも何でもいい。「推し活」をとことん突き詰めて学ぶことが、心と体の健康につながります。

 人生で後悔していることは運動の習慣をつけなかったこと。いまは無理やり遠回りしたりデパートの催事場に行ったりで【9】15000歩を目標にしているけれど、通勤しない日はゼロに近い。骨と筋肉の預貯金は100才人生には最重要事項。若いうちにもっと蓄えておくべきでした。

 私は長寿人生の健康寿命を意識しながら、好奇心旺盛に残りの人生を楽しみたい。「いまだかつて見たことのない100才」をめざし、無理しないように生きてみるつもりです。

教えてくれた人

女性成人病クリニック院長の村崎芙蓉子さん

村崎芙蓉子さん87)/女性成人病クリニック院長。東京女子医科大学卒業後、同大付属日本心臓血圧研究所・循環器内科などを経て、1992年に東京・銀座に「女性成人病クリニック」を開業。著書『カイワレ族の偏差値日記』はベストセラーになり、ドラマ化もされた。

文/池田道大 取材/平田淳、伏見友里 写真/共同通信社、朝日新聞社

女性セブン2023622日号
https://josei7.com/

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