悪気はなくともしばしば子を傷つける親の「失礼な一言」をサラッと受け流す5つの対処法 最終手段は「縁を切る」
親だからといって、子に何を言ってもいいわけではない―、はずなのですが、親から浴びせられる言葉にイラッとしたことは誰にでもあるはず。新著「失礼な一言」(新潮社)が話題のコラムニスト石原壮一郎さんは、深刻な怒りや憎しみの芽は早めに摘み取った方がいいと語ります。親の「失礼な一言」をサラッと受け流す方法を教えてもらいました。
反省しない「親」という生き物とうまく付き合うために
「お前、いつまでそんな仕事してるんだ」
「どこで育て方を間違えちゃったのかしら」
「お隣の〇子ちゃんは、こうなのに……」
親の言葉は、しばしば子どもの心を深く傷つけます。先日の「親を深く傷つけてしまう子どもの『失礼な一言』」とも合わせ鏡ですが、気心が知れているが故の遠慮のなさや、自分は「親」だという油断が、無神経で凶暴な「失礼な一言」を口にさせるのでしょうか。親に悪気はなくても、言われた子どもはたまったもんじゃありません。
→親を深く傷つけてしまう子どもの「失礼な一言」 近い関係だからこそ飛び出す“凶暴”なフレーズ7選
多くの場合、こちらがいかに傷ついたかを訴えてたところで、親は反省しないどころか、何がいけないのかすら理解できないでしょう。それが「親」という生き物の特徴です。
至らないところがあるのはお互い様だし、ないものねだりをしても仕方ありません。「どうしてそうなの!」と思い始めると、怒りや憎しみが必要以上にふくらみがち。激しい衝突を生んだり自分が精神的に疲弊したりといった厄介な展開になることもあります。
「そういうもんだ」という前提で、親の「失礼な一言」をサラッと受け流す方法を考えてみましょう。
対処法その1:その不愉快な言葉が口から出てきた原因や背景を想像してみる
親だってひとりの人間で、けっして完璧ではありません。コンプレックスや嫉妬心も抱えているだろうし、機嫌が悪い日もあります。「また大伯母さんに意地悪なこと言われたのかな」「子どもの頃のトラウマがあるのかも」など、不愉快な言葉を口にしないではいられなかった原因や背景を想像してあげましょう。想像がアタリかどうかは関係ありません。
対処法その2:ニコやかに相槌を打てる親孝行っぷりを自分でホメてあげる
配偶者の愚痴をこぼしたら、鬼の首を取ったように「だから、あんな人と結婚するのはやめなさいって言ったのに」なんてことを言ってきたとします。かなり失礼で不愉快な発言ですが、言い争っても仕方ありません。「フフフ、言ってたわね」と相槌を打って、ニコやかにそう返せる親孝行な自分をホメることで、ふくらみそうな怒りをごまかしましょう。
対処法その3:穏やかに「うわー、さすがに傷ついたな」と意思表示しておく
子どもの頃から何かというと「おねえちゃんはこうなのに、どうしてあなたは」などと、きょうだいと比較されて育ったとします。親の側はこっちが大人になってからもその癖が抜けず、しばしば比較してきたとしましょう。たまには、抗議の意思表示をすることで、親にその残酷さを自覚させるのも一興。残念ながら、心からの自覚はしないでしょうけど。
対処法その4:「ウチで言う分にはいいけど、外では言わないでね」と注意する
近所の人に対する誤解と偏見にまみれた悪口や、親戚のお嫁さんやお婿さんへの罵詈雑言など、失礼な噂話が大好きな親は少なくありません。まともに聞いていると、親に幻滅したり嫌悪感がふくらんできたりします。こう言ってたしなめれば、どこか保護者的な気持ちになって、「まあ、言いたいなら言えばいいか」と大らかな気持ちになれるでしょう。
対処法その5:「もうトシだから仕方ない」という便利な言葉で片づけてしまう
人は誰しもトシを取って、できないことが増えたり、いろいろ衰えたりします。「もうトシだから仕方ない」は、けっして後ろ向きな言葉ではありません。可能な範囲でできるだけ頑張ればいいと現状を肯定する言葉です。老いていく親に対しては、もどかしさを覚えてしまいがち。自分にこう言い聞かせて、今の状態の親を大らかに受け入れましょう。
世の中には、こうした方法では対処しきれない「本当に困った親」もいます。子どもの頃に「許せない言葉」を言われたことが、深い心の傷になっているケースもあるでしょう。自分の人生にとって、親が「関わらないほうがいい相手」と判断できるなら、精神的な意味も含めて「縁を切る」という方法もあります。
ただ、ちょっとした一言がムカつくとか、たまにうっとうしいといった話なら、深刻な対立に発展させる必要はありません。あの手この手で折り合いを付けながら平和を保つのが大人の知恵であり底力。そもそも親は親で、こっちが生まれて今の年齢になるまで、長年のあいだ何かと我慢したり言葉を飲み込んだりしてきたはずです。
親と穏やかな関係を続けていくことは、配偶者や自分の子ども、あるいは周囲の人たちと穏やかな関係を続けることにもつながります。いずれも基本となるのは、「失礼」と上手に付き合うこと。うっかり「失礼」な言動をしでかさず、そして不意の「失礼」に打ちのめされずに、豊かで平和で楽しい人間関係を築きましょう。
文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。最新刊『失礼な一言』(新潮新書)が好評発売中。
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