毒蝮三太夫が伝授「これが愛される年寄りになる極意だ!」|人の家に行くときは面白い話を手土産にする他
健康、お金、配偶者や子どもとの関係……。今日も高齢者は悩んでいる。我らが毒蝮三太夫が立ち上がった。大好評の「マムちゃんの毒入り相談室」をベースにした本『70歳からの人生相談』(文春新書)を上梓! さっそく大きな反響を呼んでいる。ここでは本書から「マムシ流 愛される年寄りになる12の極意」の一部をご紹介しよう。(構成・石原壮一郎)
「愛される年寄り」になるのは、楽しい老後を過ごす必須条件だ
いやいやいや、人生相談の本を出しちゃったよ。しかも、日本で初めての「高齢者」をテーマにした人生相談の本だ。人間、歳を重ねたら悩みが減るなんてことは、まったくない。むしろ増えるいっぽうだ。だけど、相談する相手がいないんだよな。
だから、俺が答えたわけだ。今度の本は、連載の記事をベースにした相談もあるし、新しく答えた相談も入ってる。いつもの調子で遠慮はまったくしてない。俺に相談してくれているほうだって、率直な意見を求めているはずだ。まあ、それなりに役に立つ本になったんじゃないかな。
本で新しく答えている相談には、たとえばこんなのがある。
「『もし認知症になったら』という不安がどんどんふくらんでしまう」(84歳、男性)
「45歳の長男と43歳の長女が結婚していなくて、とても心配です」(73歳、女性)
「妻が先立って独りになった。自分が生きている意味が見つからない」(72歳、男性)
当事者のジジイやババアだけじゃなくて、高齢の親に悩まされている息子や娘の世代にもぜひ読んで欲しい。帰省の手土産にして、一緒に読んでくれてもいいぞ。
愛される年寄りになる極意
今日は本の中から、人生相談以外のページを紹介しよう。「マムシ流 愛される年寄りになる12の極意」だ。
若い世代に媚びようって話じゃない。まわりの人や日々の出来事を愛して、毎日を穏やかに機嫌よく過ごせる年寄りになろうっていう話だ。スペースの関係で12の極意を全部取り上げるのは無理だから、とくに大事そうな半分で勘弁してくれ。
まずは、極意その1「愛嬌とユーモアを忘れない」。
まわりに人が集まってくる年寄りになるには、これが大切だな。べつに面白いことを言う必要はない。「人に笑われたくない」とヨロイを身にまとうんじゃなくて、失敗してもいい、間違えてもいい、笑われてもいいと思いながら肩の力を抜いて自然に振る舞えば、愛嬌もユーモアも醸し出されてくるよ。
ひとつ飛んで、極意その3「人の家に行くときは面白い話を手土産にする」。
これは、昔芸者をやっていたタカさんっていう人に教わった。タカさんは「人の家に行くときは、面白い話とか手土産のひとつも持っていくもんだ。それもなしに愚痴こぼしてたら、相手が嫌がるよ」って言ってたな。特別な話じゃなくていい。あそこの家の朝顔が見事だったでも来る途中にヘンな顔の猫がいたでも、お互いがニッコリできる話なら何でもいいんだよ。
またひとつ飛んで、極意その5「誰に対しても『公平』に接する」。
当たり前のことなんだけど、これがけっこう難しい。こっちは公平に接しているつもりでも、相手が軽く扱われたと感じたら、腹が立つし根に持つだろう。それより怖いのは周囲の目だ。相手によって態度を変えていたら、「そういう人なんだな」と思って誰もまともに付き合ってくれなくなる。相手が若いからってデカい態度を取るのも、公平じゃない接し方だ。
次は、極意その6「自分の気持ちは口に出して相手に伝える」。
今は「言わぬが花」の時代じゃない。「夫婦だからわかるだろ」「親子だからわかるだろ」は、言ってみれば甘えだよ。言えない自分の気の弱さや怠慢を正当化しているだけだ。とくに口に出したい言葉が3つある。それは「ありがとう」と「すまないね」と、そして「愛してるよ」だ。心で思っていたって口に出さなかったら、その気持ちはないのと同じだからね。
またいくつか飛んで、極意その9「年寄りが目指したいのは『民芸品』」。
どっかの国から輸入してきた家具や食器みたいに、「ほら、俺はすごいだろ」と威張ったところで、誰も感心してはくれない。日常的に使われている「民芸品」みたいに、置いといても目立たない、邪魔にもならない、使いようによっては役に立つ。そのぐらいがちょうどいいんだよ。ちょうどいい謙虚さと、ちょうどいいプライドを持った年寄りになろうじゃないか。
最後のひとつは、極意その12「独りでいることを楽しめる年寄りになる」。
逆説的に聞こえるかもしれないけど、「愛される年寄り」になるには、独りでいることを楽しめなきゃいけない。独りを楽しめるからこそ、誰かとの時間だって楽しめるし、人との適度な距離を保てる。好奇心が旺盛だったり何か趣味を持っていたりもするから、そういう人はいくつになっても魅力的だよ。自分の機嫌は自分で取るもんだ。誰かに取ってもらうもんじゃない。
とまあ、そんな調子だ。この本で、悩みごとと上手に折り合いを付ける方法を見つけたり、毎日を前向きに楽しく過ごすコツを会得したりしてくれ。一度しかない人生を悔いなく生きようじゃないか。ジジイもババアも、今日がいちばん若いんだ。人生はこれからだ!
毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。
※今後の記事中で、毒蝮さんがご相談にズバリ!アドバイスします。なお、ご相談内容、すべてにお答えすることはできませんことを、予めご了承ください。
ご相談はコチラをまで!下の写真をクリックしても相談フォームに移動します。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。87歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、発売たちまち大きな反響を呼んでいる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中
いしはら・そういちろう
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は5月17日に発売された『失礼な一言』(新潮新書)。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
●たまに来て親に贅沢をさせる長男夫婦にモヤモヤした気持ちを抱える女性を毒蝮三太夫が励ます|「マムちゃんの毒入り相談室」第46回
●「たくさんの野菜を娘夫婦に送ったら迷惑なのか?」文句を言う父親を毒蝮三太夫が諭す|「マムちゃんの毒入り相談室」第41回