自叙伝『アロハ 90歳の僕』に寄せられた各界著名人からの愛溢れるメッセージにブーさんの反応は?|連載 第96回
高木ブーさんの「流れに身を任せた生き方」が注目を集めている。ブーさんが登場した朝日新聞の「語る 人生の贈りもの」(全14回)も、大きな反響を呼んだ。前回に引き続き、大好評発売中の自叙伝『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』に登場してくれている「ゆかりの人たち」について、ブーさんが感謝を語る。(聞き手・石原壮一郎)
僕はまわりに支えられてきたとあらためて感謝している
このあいだスポーツ新聞で競馬の予想をした。「日本ダービー」が今回で第90回を迎えるんだって。「スポーツニッポン」の記者の人が「90」つながりで、90歳の僕の予想を載せようと考えた。競馬はぜんぜんわからないけど、予想するのは楽しかったな。もし当たったらすごかったけど、まあそううまくはいかないよね。
おかげさまで4月に出した自叙伝『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館)は、あちこちで紹介してもらっている。今の世の中はみんなが忙しい毎日を送っているから、僕のノンキな生き方に興味を持ってもらえるのかな。
今回も、本の中の「ブーさんと私」のページに出てくれた人たちについてお話しします。8人出てくれて、前回は加藤(茶)と俳優の赤井英和さん、音楽プロデューサーの安達正観君の3人について話した。
本に登場している順ってことで、次はエッセイストの海老名香葉子さん。故・林家三平師匠(先代)の「おかみさん」としても有名だよね。
おかみさんと僕は、同じ昭和8年生まれなの。同じ年代だから、やっぱり気持ちが通じ合う。「空襲のときは」と話したときに、頭の中に同じ光景が浮かぶんだよね。昔の映画の話をするのも楽しい。子どもの頃に片岡千恵蔵やアラカン(嵐寛寿郎)の映画を観に行ったなんて言って盛り上がれるのは、もうおかみさんしかいない。まさに貴重な戦友です。
しばらく会えてないけど、電話ではたまに話してる。「ドリフに大挑戦スペシャル」でブー子になったときも電話をくれて、「センセー、素晴らしかったわ!」とホメてくれた。おかみさんは僕のことを「センセー」って言うんだよね。恥ずかしいからやめてほしいんだけど、まあいいか。またゆっくり話がしたいな。お互い長く元気でいましょう。
次は大槻ケンヂ君。彼が『元祖高木ブー伝説』を作ったときに、会社はいい顔しなかったんだけど、僕が「いいよ」ってOKした。本のインタビューでは、そのことにどれだけ感謝しているかを語ってくれてた。こちらこそ、感謝してます。お互いのコンサートに出てステージで一緒に歌ったりとか、楽しいことがいっぱいあったからね。
令和版の「高木ブー伝説」をハワイアン調で作りたいとも言ってたけど、それも面白そうだよね。ただ、僕が「作ってほしい」と積極的にリクエストするのもヘンかな。また勝手に作ってくれて、それに対して「まあいいんじゃいの」と言うのがいいよね。ちょっと気恥ずかしいけど、どんな歌になるのか楽しみにしてます。
続いては荻野目洋子さん。2021年に「1933ウクレレオールスターズ」に入ってくれた。いっしょにステージに立っていると、やっぱりアイドルとして長く活躍している人は違うなって感心しちゃうんだよね。細かい所作のひとつひとつに華があるし、常にステージ全体を考えた動きをしてる。いつも勉強させてもらってます。
インタビューでは自分の体験を元に、ウクレレの魅力を熱く語ってくれている。頼もしいよね。彼女のおかげで「1933ウクレレオールスターズ」の活動の幅や可能性が広がったところは、間違いなくある。これからもステージでいっぱい一緒に演奏しましょう。
サザンオールスターズの関口和之君は、その「1933」のキャプテン。30年近く前に、僕が関口君と初めて会ったときに「ウクレレでバンドやりたいね」という話をしたのが、四半世紀後に「1933」の結成につながった。彼も話してるけど、1980年代は「ウクレレ冬の時代」で、ほとんどだれもウクレレに興味を持ってなかったんだよね。
彼のことは、そんな時代を乗り越えて、一緒にウクレレを広めてきた同志だと思ってる。本で初めて知ったけど、関口君はサザンオールスターズの桑田佳祐君から「お前はサザンの高木ブーだ」って言われているらしい。彼はそれが「嬉しい」と言ってくれてる。僕も嬉しい。彼が僕と娘の関係を歌にしてくれた『パパの手』は、心にしみる素敵な曲なんだよね。これからも長く歌っていきたいと思ってます。
8人のトリは、ももいろクローバーZの高城れにちゃん。インタビューではコントに対する僕のこだわりを見て感動したって話をしてくれてた。ももクロのマネージャーさんが昔からドリフのファンで、ドリフの姿勢を日頃からメンバーに教えてたっていう話も面白かったな。彼女たちを応援したくなるのは、そういうこともあるのかもしれない。
ついこのあいだも、ももクロ15周年のコンサートに加藤と行ってきた。3時間ぐらいたっぷり歌って踊って、客席も大盛り上がりで、こっちもパワーをいっぱいもらったな。加藤も言ってたけど、みんないい子なんだよね。アルフィーの坂崎幸之助君に何十年ぶりかに会えたのも嬉しかった。3時間は無理だけど、また一緒にステージに立ちたいな。
たくさんの人に僕について語ってもらって、「そう見てくれていたのか」っていう意外な発見も多かったし、あらためて自分はまわりに支えられてきたんだなと思った。本当に感謝してます。ずっと元気でいることが、少しでもお返しになるといいな。
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)、『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。同チャンネルでは期間限定で「ドリフ大爆笑」の名作コントのデジタルリマスター版を続々と配信している。卒寿を記念して出版された『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』(ワニ・プラス、2,700円+税)と『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館、2,200円+税)が好評発売中! イザワオフィス公式YouTube新企画「ドリフ麻雀」は、練習戦を公開中(本格スタートは6月から)。 サポーターも募集中。詳しい案内とサポーター募集はこちら。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。最新刊『失礼な一言』(新潮新書)が好評発売中。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。