「海藻を分解できるのは日本人だけ」など 最新研究でわかった日本人の驚くべき体質
日本人は医療や健康の知識については、おそらく世界で最先端にいる。海外の最新医療情報やブームの健康食品には、どの国民よりも早く飛びつく。
しかし、大切なことを忘れていた。「日本人には、日本人に特有の体質があり、それは他のどの国民とも違う」という視点だ。先祖代々、日本列島で暮らし、育み、受け継いできた体質を知ることこそ、外国の「受け売りの知識」ではない、日本人の健康のための「本当の知恵」だろう―。
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「海藻を分解、吸収できる」のは日本人だけ
日に日に気温が下がり、布団から出るのがつらい。そんな朝も、私たちは台所に立つ。 鍋を火にかけ、豆腐とわかめのたっぷり入ったみそ汁を作って家族に取り分けると、食卓にほわんと湯気が立ち上る。ご飯や納豆、焼き魚を並べたら、そろそろみんなを起こさなきゃ――。
こんな朝の光景も、持って生まれた「日本人の体質」に、非常に理に適った健康法であることが最新の研究でわかってきている。
’16年に発表された最新データによれば、海藻の健康成分を体内に摂り込んで有効利用できるのは、世界の中でも日本人だけだと考えられている。『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社)の著書がある医師の奥田昌子先生が解説する。
「アサクサノリ(浅草海苔)に関する研究データから、日本人の腸には海藻に含まれる食物繊維を分解できる特殊な腸内細菌がいることが明らかになりました。この腸内細菌を持つのは、世界でもおそらく日本人だけだと考えられています。海藻を分解した際にできる『短鎖脂肪酸』は脂肪をつきにくくする健康成分で、日本人の長寿に大きく貢献しているものと考えられます」
まったく意識していないが、はるか太古の時代から日本列島で暮らしてきた日本人が先祖代々で獲得してきた生体システムを、私たちも受け継いでいるのだ。
日本人の約半数がアルコールに弱い遺伝子をもつ
一方で、世界的にブームになっている健康法でも、実は“日本人には合わない”という例も存在する。11月にボジョレーヌーヴォーの解禁を迎えたワインもその1つ。
フランス人はバターや肉など、動脈硬化を促進する動物性脂肪を大量に摂取する食習慣を持っているにもかかわらず、狭心症や心筋梗塞といった心臓疾患での死亡率がヨーロッパで最も低い。俗に「フレンチパラドックス」と呼ばれるその現象は、抗酸化物質を含む「赤ワイン」の多飲がその理由ではないかとされ、健康志向とともに赤ワインが世界的ブームとなって広がっていった。
日本においても、またしかり。しかし、“赤ワイン健康法”がそのまま日本人に当てはまると考えるのは早計だ。奥田先生が指摘する。
「一時期、『赤ワインのポリフェノールが動脈硬化を防ぐ』と話題になりました。ですが、もともと日本は心臓病の発症率が世界で最も低い国の1つで、フランスより心臓疾患が少ない。それなのに日本人が真似をすると、むしろアルコールによる『発がんリスク』の方が大きくなります。というのも、日本人はそもそも、アルコールに弱いという体質を持っているからです。約半数の人が肝臓でアルコールを分解する酵素の力が弱いのです」
テレビの健康番組の例を挙げるまでもないが、昨今、小手先の知識でお手軽に健康を得たいという風潮がある。
なかには、欧米を中心とした海外での研究を基にした「エビデンス(科学的根拠)」に基づいて論じたものもある。たしかに医学研究の分野において、欧米諸国には一日の長があるが、そこには日本人に特有の体質という観点が抜け落ちている。
奥田先生が言葉を継ぐ。 「テレビや雑誌で取り上げられる最新の健康法のなかには、日本人の体質に合わないものも見受けられます。欧米のデータを基に検証された健康法が、日本人にそのまま当てはまると考えてしまうと、かえって健康を損ねてしまうことにもつながりかねない」