頭痛や生理痛を悪化させないために知っておくべき”痛み”のメカニズムを専門医が解説
痛みを感じても我慢してしまうことはないだろうか?麻酔科専門医の柏木邦友さんによると「実は日本人は痛みに弱い人種」だという。人が痛みを感じるとき、体の中ではどのようなことが起きているのか。痛みを悪化させないためにも、まずは、痛みが生じるメカニズムについて知っておこう。
「痛み」を感じるメカニズムを解説
下の図は、体に刺激を受けてから、痛みを感じるまでの間に、私たちの体内で起きていることを表している。
「痛みにも種類がありますが、体をどこかにぶつけたり、けがややけどをしたときなど、刺激を受けた場合の痛みは、図の【1】~【4】の順序で脳に伝わり、痛みを感じます。さらに、ぶつけたことによって傷ができて出血した場合は、傷とともに『発痛物質(はっつうぶっしつ)』が痛みの信号を出し、それが感覚神経を通して脳に伝わり、痛みを感じます」(麻酔科専門医の柏木邦友さん・以下同)
頭痛や腹痛の痛みの原因や症状「卑弥呼は片頭痛?」
では、多くの人が日常的に悩まされる頭痛や腹痛などの痛みはどうだろうか?
「この場合は、プロスタグランジンという発痛増強物質が原因です。体の組織が何らかのダメージを受けると体内でプロスタグランジンが作られ、痛みの信号が脳へと伝わることで痛みを感じ、さらに熱や腫れなどの症状も現れます」
頭痛にも種類がある。
「頭痛で多いのが、ズーンと締めつけられるような痛みですが、これは『緊張性頭痛』の特徴です。なぜ起きるかは、はっきりとわかっていませんが、おそらく筋肉が緊張して発痛物質が発生し、痛覚が過敏になるからではないかと考えられています」
片頭痛はどのようにして起こるのか。
「ストレスや月経周期などが原因で血管が収縮した後、今度は過剰に広がることによって、こめかみと並行して走る三叉(さんさ)神経が刺激され、頭で痛みを感じるのではないかとされています。
最近では天気が崩れる前の低気圧に頭痛を覚えるという人も増えていますが、これも片頭痛に分類されます。邪馬台国の卑弥呼も低気圧による片頭痛もちで、それによって雨の予測をしていたといわれているんですよ」
次に、腹痛は何が原因で起こるのだろうか。
「主なものとしては便秘や下痢です。便秘は便やガスがたまって腸が膨らみ、引っ張られることで痛みが生じます。一方、下痢は体に入った有害な細菌を急いで排出させるために、水のような便を出し、そのことで腸が収縮するため、その圧力で痛みが生じます」
生理で腰まわりが痛くなるのは「関連痛」
ちなみに生理のとき、腰まわりが痛くなるのには次のような理由があるという。
「違うところで起きた痛みなのに、別のところが痛くなるのは神経が勘違いをして脳に信号を伝えるからです。これを『関連痛』と言います」
痛みの原因はさまざまだが、痛みを取り除く方法は至ってシンプルなのだそう。
「痛みを長引かせないように、鎮痛剤や注射、湿布などを使って、痛みの信号が脳に伝わる回路を途中でブロックしてしまえば痛みは止まります。痛みにも種類があるので、適切な処置を行うことが大切です」
痛みに悩まされないためにも、早めの対処が大切だ。
教えてくれた人
柏木邦友さん/麻酔科専門医。東京マザーズクリニック麻酔科医、アネストメディカル代表。著書に『とれない「痛み」はない』(幻冬舎新書)がある。
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/沼田健 資料提供/柏木邦友さん
※女性セブン2023年2月23日号
https://josei7.com/
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