訪問理美容サービスの利用者数が増加 カットやシャンプー後「笑顔になる人」が5割超
介護が必要な人や外出するのが難しい人は、理・美容院にひとりで行くことが難しい。そこで便利なのが理・美容師が自宅や施設に出向いてヘアカットを行ってくれる「訪問理美容サービス」が便利だ。「訪問理美容サービス」に関する調査によると、利用者が増加している結果が判明した。調査結果をもとに利用状況などをレポートする。
訪問理美容サービスの利用者が増えている
美容に関する調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」(リクルート)が行った要支援者・要介護者の「訪問理美容サービスの利用実態調査2022」※によると、通所介護施設でのサービス利用者が昨年よりも伸びたことがわかった。
※「ホットペッパービューティーアカデミー」インターネット調査(マクロミル アンケートモニター)「訪問理美容サービスに関する利用実態調査2022」より。調査時期:2022年10月11日(火)~10月19日(水)。対象者:全国20歳以上の男女のうち、要支援者・要介護者と同居の家族(本調査1906人)、ケアマネジャー(本調査153人)。
訪問理美容とは?
訪問理美容とは、 自宅や介護・福祉施設に理美容師が訪問し、ヘアカットなどの理美容メニューを実施するサービスのこと。要支援者・要介護者の認定を受けた人や外出が困難な人が対象となる。介護保険の対象にはならないが、住んでいる自治体によっては補助制度※があり、2000円前後で利用できるケースもある。
※条件の詳細は、住んでいる地域の高齢者福祉の窓口などで確認してください。
訪問理美容サービス利用者の変化
「直近1年以内に訪問理美容サービスを利用した方」の割合が上昇し、2022年には27.1%になった。
また、コロナ禍における訪問理美容サービスの利用変化については、「特に変化はない」と答えた人の割合が年々増えており、コロナ前の状況が戻ってきているといえる。
訪問理美容サービス利用者(直近1年位内)の割合推移
2020年…24.9%
2021年…24.9%
2022年…27.1%
調査を実施した「ホットペッパービューティーアカデミー」研究員・服部美奈子さんによると、
「2021年はコロナ禍による影響で在宅での利用が増えましたが、2022年には施設で利用する割合が戻りつつあります。
また、利用料金も昨年よりアップするなど、全体を通して訪問理美容サービスの利用が伸びてきていることがわかりました」(服部美奈子さん、以下同)
訪問理美容サービスの効果8割が実感「笑顔になる」
訪問理美容サービスを利用したことで「何らかの良い効果があった」と感じている家族が84.7%に上る。
また、具体的な変化に関しては、「笑顔になる」が50.3%と最も多く、「活力があふれた様子になる(27.3%)」「会話が活発になる(21.9%)」「鏡を何度も見返す(21.9%)」が続く。
サービスを受けた後の変化
笑顔になる…50.3%
活力あふれた様子になる…27.3%
会話が活発になる…21.9%
鏡を何度も見直す…21.9%
「ヘアカット」が9割以上、「シャンプー」が約5割
利用者のうち「ヘアカット」を依頼する人が96.4%。次に「シャンプー」が48.8%、「ひげそり・産毛そり」は30.4%の人と続く。カラーやパーマ、ネイルなどを利用している人もいる。
利用したことのあるメニュー
ヘアカット…96.4%
シャンプー…48.8%
ひげそり・産毛そり…30.4%
カラー…11.0%
ハンドマッサージ…10.7%
パーマ…7.1%
フェイシャルエステ…4.9%
ネイル…3.3%
認知度は高いが利用経験率は3割にとどまる
なお、同調査では訪問理美容サービスの「認知度」は8割超えているものの「利用経験率」3割程度にとどまっていることもわかった。利用した人の約9割が満足しているという結果となった。
一方で理美容サービスを利用してほしいと思っていない人も5割以上いる。その理由は「迎える準備が必要そう・大変そう」が40.9%、「お金がかかる・かかりそう」が37.6%と、不安を感じている人も。
訪問理美容サービスを利用してほしくないと答えたのはなぜですか?
迎える準備が必要そう・大変そう…40.9%
お金がかかる・かかりそう…37.6%
受ける本人が嫌がりそう・喜ばなさそう…26.8%
何となく大変そう…15.2%
時間がかかる・かかりそう…10.4%
理美容以外のサービスも「買い物代行」
また、訪問理美容サービス利用経験のあるケアマネジャーのうち、「コロナが落ち着いた後、利用者に訪問理美容サービスを利用してほしい」と答えたのは8割に上り、理美容以外にも「買い物代行」や「施術後の写真撮影」をやってほしいと思っている人も多いことがわかった。
前述の服部さんによると、
「訪問理美容サービスは認知率と利用経験率とに大きなかい離があります。一方で、利用者はサービスに満足し、何らかの良い効果を覚えている方がほとんどです。
利用されていない人の中にもサービス利用意向があり、理美容以外のサービスのニーズも高いことがわかりました」
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記者は高齢者施設を訪問した際に、何度か利用者が訪問理美容サービスを受けている姿を見かけたことがあるが、利用者の方がシャンプーやカットをしてもらった後は、晴れやかな笑顔だったことが印象に残っている。高齢者の笑顔が増える訪問理美容サービスがさらに広がることに期待したい。
【データ】
ホットペッパービューティーアカデミー
https://hba.beauty.hotpepper.jp/
取材・文/本上夕貴