風邪にも!【ツボ押し】不調を感じた時に効く「ツボ」はここ!
「ツボ押し」は、肩や腰がこった時だけではなく、冷えのほか、鼻やのどの不調を整える効果もある。
風邪のひき始めなど、不調を感じた時に知っておきたいツボ押し法をお教えします。
ツボは、WHO(世界保健機関)により361か所がそれと認定され、医学的な有効性が認められている。神経や血管が集まる場所がツボにあたり、鍼を刺して刺激を与えると、血管拡張物質が増加し、血流が改善することがわかっている。また、ツボを押すと神経を通じて脳に作用し、痛みを軽減したり、自律神経を調整する効果もある。
鍼灸師の安野富美子さんによると、鍼治療だけでなく、ツボ押しによっても、同様の効果が期待できるという。
「東洋医学上、最も秋の気候に影響を受けやすいとされる肺は、のどや鼻とつながっています。ツボ押しによってのどの痛みや鼻づまりを解消すれば、ひいては肺の機能も改善されるのです」(安野さん・以下同)
秋になると、自律神経の副交感神経より交感神経が優位になるが、この変化がスムーズに行われないと、ホルモンのバランスが崩れて免疫機能が低下する。その結果、体が冷えて風邪をひきやすくなるのだ。
「気温が低下し、朝夕の温度差が広がると、特に女性は冷えの症状が強まり、体がこり固まって肩こりの症状も。ひどくならないうちに、ツボを押して血行を促し、改善させて」
食欲の秋から、忘年会・新年会シーズンを控え、胃腸に負担がかかる時期でもある。いざという時のセルフケア術として、各症状に効果的なツボの場所を覚えておいて。
ツボ押しの基本 効くツボの見つけ方
ツボの大きさは直径8㎜くらい。位置は人によって多少のズレがある。 「指先で軽く押して、痛みや小さなこり、筋肉が硬くなっている場所を探して。押してただ痛いだけの場合、炎症が起きている可能性があるので、ツボ押しは避けて。気持ちよければ、左図通りでなくても押してOK」(安野さん・以下同)
【1】骨や腱を指でさぐる
【2】押して痛みや小さなこりを探す
【3】反応があった場所を指圧する
●正しい指圧の仕方
ツボ押しをする際に注意したいのは、指の腹を使ってジワーッとゆっくり押すこと。爪を立てるように指先で押すと、力が入りすぎて皮膚を傷つけ、指も痛めてしまうので気をつけたい。
【1】ツボに指の腹を置き、息を吐きながら体重を指に乗せ、3秒かけてゆっくり押す
【2】そのまま3秒キープ
【3】3秒かけて息を吸いながら、力をゆるめる
これを5~6回続ける。ツボ1か所を押すのは、1回1分以内にとどめて。「指圧棒を使う場合も、力を入れすぎないよう、痛気持ちいい強さを心がけましょう」
●他人に行う時は「弱め」から
強めのツボ押しが好きな人は、他人に行う場合も強めに押してしまいがち。
「他人に行う場合、まずは弱めに押すのが基本。力加減を確認しながら、少しずつ強めていって。力が強すぎると翌日もみ返しの痛みが出たり、内出血を起こしてしまうことも。特に子供に行う場合、手のひらでツボのある周辺をなでる、さする程度の刺激から始めてみて」
冷えに効くツボ
「万病のもと」といわれる「冷え」は、女性の7割が抱えている症状。衣類や食べ物とともに、血や気の巡りをよくするツボを刺激して、体を温めるといい。ドライヤーの温風をあてたり、温灸を行うのも◎。
関元(かんげん)
へその中心から指4本分下の位置にあるツボで、丹田ともいう。下腹部の冷えや下痢などに効果がある。人さし指、中指、薬指の3本や手のひらを使って押す。
腎兪(じんゆ)
腰のくびれ辺りで、背骨から左右に指2本分外側にある。仰向けに寝る、または椅子の背もたれを利用し、指先に体重をかけて押すといい。
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの上から指4本分上で、骨の際にある窪み。冷えて足がだるい時や、のぼせを伴う冷えに効果あり。月経痛や更年期障害など、婦人科の症状にも有効。
肩こりに効くツボ
首から肩、肩甲骨(背中)にかけての張りや痛みは、スマホやパソコンなどを頻繁に利用する現代人に日常的にみられる症状。ツボ押しによる即効性が期待できるが、姿勢などを改善しないと再発しやすい。
風池(ふうち)
髪の生え際、僧帽筋と胸鎖乳突筋の間にある窪み。頭を支えるようにして親指をツボにあてて押し上げるといい。首の筋肉がほぐれて、痛みが和らぐ。
天柱(てんちゅう)
首の後ろを上下につなぐ筋の両側、頭蓋骨の下の窪みにある部分で、痛みやシコリがあるところがツボ。頭痛を和らげて緊張をほぐし、血の巡りを改善する。
肩井(けんせい)
首の付け根にある突起と肩先を結んだ中央部分にあるツボ。肩こり全般に効き、ツボ押しで効果が出やすい。自分で押す場合、中指を使うと押しやすい。
肩外兪(けんがいいゆ)
肩甲骨のすぐ内側にあるツボ。肩から背中にかけてのこりに効く。ここを押せば肩甲骨が動きやすくなり、上がりにくい腕にも効果がある。
膏肓(こうこう)
図のように、肩甲骨の内側のふちにあるツボ。肩から背中が痛み、疲労感が強い時に押すといい。菱形筋をゆるめる効果がある。
ストレスの緩和のツボ
肩こりの症状は、姿勢などによる筋肉のこりに加え、ストレスによるものもある。その場合は、手や足にあるツボを刺激することで緊張がゆるんでリラックスでき、肩こりも解消する。
合谷(ごうこく)
手の甲を上に向け、人さし指と親指の骨の合流点から、やや人さし指側にあるツボで、痛みの万能ツボ。頭痛にも効く。
太衝(たいしょう)
足の親指と人さし指の骨が接するV字の窪みにあるツボ。頭痛や疲れ目、めまいにも効果あり。
風邪による呼吸器症状
乾燥が進むこの季節は、せきやたんなどの呼吸器系症状が表れることがある。つらい呼吸を楽にする効果があるので、せき込んだ時などに押してみよう。
中府(ちゅうふ)孔最(こうさい)尺沢(しゃくたく)
中府/鎖骨より親指1本分下で、体の中央から指6本分外にある大きな窪みにあるツボで、息苦しさを和らげる。孔最/ひじと手首の真ん中より指1本ひじ側。尺沢/ひじを曲げた時にできるしわと垂直に交わる腱の親指側にあるツボ。いずれもせきを鎮める効果が。
ドライアイ、眼精疲労に効くツボ
空気の乾燥や、スマホの使いすぎなどによるドライアイ、眼精疲労によって視界がぼやけるなどの症状に効果的。押しすぎると鈍痛が起きることも。目の周囲はデリケートなので、やさしく押すこと。
睛明(せいめい)攅竹(さんちく)太陽(たいよう)
睛明/目頭より鼻側の少し上にあり、目のトラブル全般に。攅竹/眉頭の下にあり、目の筋肉疲労に効いて頭をスッキリさせる。太陽/こめかみの下の少し窪んだ部分にあり、頭痛にも効果がある。
風邪による鼻の症状に効くツボ
鼻風邪はもちろん、くしゃみ、鼻水などのアレルギー症状にも効果があるツボ。鼻の粘膜に働きかけて症状を抑える。ただし、効果は一時的なので注意を。
上星(じょうせい)迎香(げいこう)天柱(てんちゅう)
上星/額の生え際から親指1本分上にあるツボ。くしゃみ、鼻水などのアレルギー症状に効果がある。迎香/小鼻の脇にあり、鼻づまりに効く。鼻の症状に幅広く効き、水分の代謝も促進する。
乾燥による肌荒れに効くツボ
体の表面を流れ、皮膚にハリとツヤを与える気の巡りをよくするツボを押すことで、乾燥による肌荒れやかゆみなどの症状が和らぐ。
足三里(あしさんり)太衝(たいしょう)
足三里/すねの外側で、ひざの皿の下の窪みから指4本分下にある、体力増強や胃の不調、血流改善に効く万能ツボ。このほか、太衝、合谷、中脘も皮膚トラブルに効果あり。
忘年会&新年会シーズンを控えて、覚えておきたい胃腸のツボ
食欲の秋である今は、ついつい食べすぎたり、日頃のストレスや疲れが出やすい時期でもあるため、胃腸の不調を感じる人が増えてくる。さらに、年末にかけて宴会などで胃腸の負担に拍車がかかる。胃腸をケアするには、左図の背中にあるツボと、腹部にあるツボが有効。どちら側を押す場合も上から順に押していくとよいが、症状がひどいと痛みが強いのでやさしく刺激して。
【胃】膈兪(かくゆ)肝兪(かんゆ)脾兪(ひゆ)
【腸】大腸兪(だいちょうゆ)
背骨を挟んで指2分外にツボが並び、上から、胃に効く膈兪、肝兪、脾兪のツボがあり、いちばん下の大腸兪は腸に効くツボ。膈兪はしゃっくり、肝兪はめまい、脾兪は下痢、嘔吐にも効果あり。
【腸】天枢(てんすう)関元(かんげん)
【胃】中脘(ちゅうかん)
へその中心から真横、指3本の位置にあるのが天枢で、へそ下の関元とともに腸に効く。へそと胸骨の下端を結ぶ線の中間点にある中脘は、胃の痛みを鎮め、肌荒れ予防にも◎。
教えてくれたのは
伊藤隆さん/医師。東京女子医科大学教授で東洋医学研究所所長。
イラスト/いばさえみ
※女性セブン2018年11月29日・12月6日号
●冬こそ「東洋医学」!風邪、冷え、インフルエンザは【漢方】で対策