父の世話で腰痛が悪化した母 年寄り扱いに不満ながらも、福祉用具に頼る【実家は老々介護中VOL.9】
アラフィフ美容ライターの私は、老々介護の実家を手伝っています。がん、認知症、統合失調症を患う80才の父を、79才の母が介護するのは体がキツくなってきました。そこで、介護用の福祉用具を使ったりヘルパーを契約したりすることに。心の余裕を保ち、身ぎれいにして笑顔を忘れずにいたいと思います。
このままでは母が参ってしまう
「わっ、すごいアザ!どうしたの?」
ケアマネさんと時間を合わせて実家に行くと、母の腕や脚に大きな青アザが。思わず大声を出してしまいました。
「お父さんをトイレに連れて行こうとして、私が転んじゃったんですよ」と母。「面白くないから、私も夜飲んじゃうし、それでふらついたのもあるんだけど。いかにも老々介護だなあって気が滅入るしねえ」。
父は尻もちをついただけで無事だったと言いますが、母の腰痛がひどくなり、気持ち的にも参っているようでした。
「お父さんの世話をすると中腰になるんでね。ソファやベッドで着替えさせるのも、立ち上がらせるのもですね。腰が痛くなりますねえ」と続ける。
ケアマネさんは、うんうんと聞いてくれる。母はすでにトイレで自分のお尻を拭けないくらい痛くて、くしゃみでバッと力が入るときもつらいという。
私がこの時期忙しくてあまり手伝えず、母に無理させてしまいました。ヘルパーさんを申し込むのを母が嫌がり、延び延びになっていましたが、言葉通りではなかったはず。
ケアマネさんは、高齢者向け大型施設の所属なので、「うちの施設、一時あずかりの空きがあるんですけどねえ」と言ってくれましたが、母は「イヤ、それは結構」という顔。
「じゃあ、ヘルパーを申し込みましょう」となり、なるはやで書類を持ってきてくれることに。それから、「腰の負担が減るように、介護用のお風呂の椅子と介護ベッドを入れましょう!」と光の速さで連絡を取ってくれました。
その後、素早く自転車に乗って、次の訪問先へ去っていくケアマネさん。こんなにハイスピードで仕事をこなすなんて、本当にすごいです。
便利な福祉用具が、あっという間に届く
それから1時間足らずで来てくれた福祉用具の業者さんも、「利用者さんは今すぐ必要で連絡をくれるので、いつも仕事は猛スピードですよ」と。
早速説明を聞くと、福祉用具に介護保険を使う場合、品目によって購入かリースか決まっているということ。お風呂の椅子は肌に直接触れるから購入品、介護ベッドはレンタル品。
「購入品に介護保険を使うには限度額があって、一年間で10万円です」と言うので、今後また買うものが出ることを考えて中レベル、1万円弱の椅子に。1割負担だからうちの支払いは1000円です。
やせて骨が出っぱっている父が痛くないよう、座面と背もたれにクッションがきいたものを選びました。介護用のお風呂の椅子は、室内で使う椅子のように高さがあり、こちらが大きくかがまなくてもお世話できるのが利点です。
「レンタル品に介護保険を使うには、介護度によって使える品目が決まっていて、お父様の要介護2だと、介護ベッドも適用となります。今後、状況に合わせて交換もできます」と言うので、中くらいのレベル、月額1万円くらいのベッドに。うちの支払いは月に1000円くらいです。リクライニングがついているだけでなく、ベッドの高さ自体も上下できます。あまり中腰にならずに済む高さにすれば、腰への負担が減りそう。
驚いたのは納期の速いこと。お風呂の椅子は2時間後に、ベッドも翌日には来ました。本当に助かります!
申し込みが済むと、母は腰を診てもらいに整形外科へ。私は「今日は実家に泊まるね」と夫に連絡。これ、会社員だと難しいですよね。私は自由業だから融通がきくけれど、無理な人も多いはずです。
さて、中腰になる用事を済ませようと、父のひげ剃りを手伝いました。電気ひげ剃りで父がウィーンと剃り、目が悪くて剃り残したところを私がお手伝い。うまく剃れず顎をゴシゴシ往復して赤くなってしまったのですが、父が、「こうやって剃るといい」と皮膚を動かして骨のないところで剃って見せるではありませんか。突然シャープになるときがあるんですよね。
この日、母には休んでいてもらい、私が父の夕飯など一連のお世話を。父を寝かせた後、呼ばれたら聞こえるよう居間で横になりました。夜中に父を見に行くと、口元がスッキリしてイケメンです。今後、ヘルパーさんもきてくれることだし、こうやってイケメンにしてあげられる余裕を作らなくてはと思った日でした。
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛