リースバックって?リバースモーゲージとの違いは?メリット・デメリットを解説 老後資金に持ち家を活用する方法
介護が必要になったとき、貯金や年金では足りない…。そんなとき、介護費用を捻出するために”持ち家”を活用する方法も。今注目の「リースバック」について、ファイナンシャルプランナーの河村修一さんに解説いただいた。「リバースモーゲージ」との違いやメリット・デメリットも確認しておこう。
介護にかかるお金、公的保険で足りるのか?
もし、高齢の親に介護が必要になったら、公的介護保険だけで十分でしょうか?
介護保険制度(65才以上)では、病気などで所定の状態になり介護が必要と認定された場合、原則として介護サービス費用の1割(一定以上所得者は2割又は3割)が自己負担となります。
ただし、要介護状態区分に応じて限度額が決められており、この上限を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担になります。
この他にも、介護保険対象外のものには次のようなものがあります。
・利用者以外の者の洗濯、調理、買物
・利用者が使用する居室以外の掃除
・自家用車の洗車や掃除
・庭の草取り、犬の散歩、ペットの世話、大掃除、床のワックスがけ
・デイサービスやデイケアの食費・おやつ代・おむつ代
・ショートステイの食費・おやつ代・滞在費・日常生活費 などがあります。
また、有料老人ホームへの入居一時金や施設サービスを利用した場合の食費及び居住費も自己負担になります。このように、介護保険の上限を超えた分の負担や、介護保険対象外のサービスの利用料、有料老人ホームへ入居一時金など、お金の心配は尽きません。
詳しくは厚生労働省の「公表されている介護サービスについて」をご参照ください。
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/
持ち家を活用して介護資金を捻出する方法
公的介護保険だけでは不安な方も多いのではないでしょうか。
親の介護が始まっても、年金収入や預貯金では足りない場合、介護費用の捻出はどうすればよいのでしょうか。お子さんがいる場合は、子供からの支援が考えられます。
ただし、親が要介護になるころには、子供の年齢は50代、60代で、まだまだ自分の家族にもお金がかかることもあるでしょう。
子供たちに迷惑をかけないためには、持ち家(自宅)を活用する方法もあります。
自宅を活用する方法としては、「自宅の売却」、「自宅の賃貸活用」、「リースバック」、「リバースモーゲージ」等があります。中でも、自宅に住み続けながら資金を捻出できる方法として、「リースバック」と「リバースモーゲージ」が考えられます。とくに「リースバック」は、利用条件の制約が少なく、今すぐにまとまった介護費用が必要な場合に向いています。
それぞれの仕組みやメリット、デメリットについて、実例を交えながら解説していきます。
リースバックとは
・仕組み
リースバックは、自宅を不動産業者等に売却した後、そのまま賃借できるシステムです。
具体的には、Aさん(自宅の所有者)が自宅をリースバック事業者B社に売却し、一括で売却代金を受け取ります。この売却した自宅について、AさんはB社との間で定期建物賃貸借契約を結ぶことで、その後は家賃を支払うことによりそのまま住み続けることができるサービスです。
・メリット
リバースバックの主なメリットは、利用条件の制約が少なく、一般的な売却よりも比較的短期間でまとまったお金を手にすることができます。
例えば、夫が介護状態となり、有料老人ホームへ入居する際の入居一時金を捻出するためにリースバックを利用する場合です。
夫が有料老人ホームへ入居後でも妻はそのまま自宅に住み続けることができます。しかも、将来的に買い戻すこともできる場合があります。また、資金用途に制限はないので介護費用の捻出のためだけではなく、老後の資金の捻出にも対応できます。
・デメリット
主なデメリットは、売却価格が通常売却するよりも安くなり、毎月の家賃は、通常の家賃より割高になる場合が多く、敷金・礼金などもかかる場合もあります。このようにランニングコストには注意が必要です。
また、賃貸借契約期間も再契約できない場合もあります。自宅を売却するので、当然、所有権は移転します。なお、リースバック事業者によってサービス内容が異なりますので、利用する前には、しっかりと確認しましょう。
リバースモーゲージとは
・仕組み
リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から生活資金の融資を受け、そのまま住み続け、死亡時に自宅を売却して、借入金を返済するシステムです。
・メリット
リバースモーゲージの主なメリットは、毎月の支払いが不要、または利息のみの支払いのため、ランニングコストが抑えられ、元本返済も死亡後まで延ばせることです。
・デメリット
主なデメリットは、原則として、毎月収入があることや相続人の同意が必要になる等利用条件が厳しいことです。また、長生きしたことにより、借入額が融資限度額を上回った場合、存命中であっても自宅を売却せざるを得ない場合もあります。
その他にも、金利上昇リスクや担保価値の下落リスク等があります。なお、金融機関によって要件などが異なりますので、詳しくは各金融機関で確認しましょう。
リースバックとリバースモーゲージの違いは?
リースバックとリバースモーゲージの仕組みや違いをまとめると、以下のようになります。
項目:リースバック|リバースモーゲージ
仕組み:不動産を売却後、そのまま住み続ける|不動産を担保にしてお金を借りる
所有権:移転する|移転しない
担保の設定:不要|必要
借入:なし|あり
介護資金を捻出する「リースバック」【まとめ】
まとまった資金を捻出する方法には、「リースバック」と「リバースモーゲージ」があります。利用条件の制約が少なく、今すぐにでも、まとまった介護費用などの資金が必要な方は「リースバック」も選択肢のひとつになるでしょう。
ただし、売却代金が通常の売却に比べて一般的に安く、毎月家賃も発生するなどデメリットもあります。リースバックを利用する際には、メリットだけではなく、デメリットもしっかり押さえたうえで検討することが重要です。
執筆
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、複数の保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/