定期診察中、カリカリする主治医とのらりくらりの親 付きそう娘は戸惑うばかり【実家は老々介護中 VOL.6】
80才の父は、がん・認知症・統合失調症を患い、母が在宅で介護をしています。ふたり暮らしの実家をたまに手伝っているアラフィフ美容ライターが、できるだけ身ぎれいにして明るく過ごせるよう見守っています。しっかりしていると思い込んでいた母も、年相応に噛み合わないシーンが増えてきました。
医師も人間だから仕方ないけど、ちょっと困る
コロナの波が来るたびに、外来患者が増えたりして忙しくなるせいか、主治医がカリカリしっぱなしです。本当はとてもいい先生なのですが、年老いた父母が短い診察の中でうまくやりとりするのは難しくて。父の定期診察に付き添った日もそうでした。
医師:「変わりはないですか。便秘はどうですか」
父:「あまり出ないです」
医師:「便秘の薬はのんでどうでしたか?」
父:「ものすごく効いてしまって。お腹も痛くなるし、のむのやめています」
母:「水みたいになっておトイレ間に合わないくらいになるんですよ」
ここで医師が沸騰してしまい。
医師:「のまないと困るんです! 便の様子を記録してきてください!」
大腸がんなのでお通じが大切なのはわかります。
「つらくない、別のタイプの薬があったら試したいのですが?」と先生に聞くと、さらにムスッとされて、「この薬でまずやっていきますので」とパソコンに向かっておっしゃい、この日は試合終了。
「間に合わないならオムツすればいいじゃん、って思ってるんですかね?」と私が先生に食ってかかりそうになりましたがこらえて、「できる限り頑張ります〜」と診察室を出ました。
「お前が怒らせたんだ。ハイって言っておけばいいのに、余計なことして」
なぜか母にまで叱られる始末。この後、母が「便秘の薬はね、〇〇漢方薬を薬局で買ってのませてるからね」と言い出し、「それ、先に言ってよ。のみ合わせ大丈夫なの?」と、慌ててロビーを通りかかった看護師さんに事情を説明。すぐに医師から「その漢方でいいですよ!」とお墨つきをもらえてひと安心。
この日驚いたのは、認知症の父だけでなく母ものらりくらり対応していたことです。高齢になり、言われたことにすぐ反応できなくなったうえ、「これはマズイ状況だな」と思うセンサーが麻痺しているよう。
10年前、統合失調症の妄想から父が家出してしまい、一週間見つからなかったことがあります。父には違和感のある態度がいくつもあったようですが、どこからがマズイ状況かわからなかった。周りから「そんなになるまで、どうして気づかなかったの?」と不思議がられたり、責められたりしました。
「今日みたいに後から気づいたことがあったら、看護師さんに言ってね。訪問看護師さんの事務室に電話してもいいんだからね」と母に伝えて、この日は解散しました。
息子の体調の変化に気づかず…
これが毎回だと疲れるなあ、と家に帰ると。
「リップクリームあったらちょうだい」
息子が私の化粧品ストックを見に来ました。確かに唇がガサガサです。
私:「口呼吸で寝てるのかな。朝、喉乾いてる?」
息子:「うん、カラカラになってる」
リップクリームを渡し、次の日、学校帰りに耳鼻科へ連れて行くと鼻炎と言われてしまい。治療を検討することになり、私の本丸はこっちなのにガサガサに気づかなかったことを反省。
父にもリップクリームを送ろうと宛名を書きながら、両方の家を見守るのは無理だと観念しました。母の負担を減らせるよう実家に介護の仕組みを作り、今日のようなイレギュラーケースも人を頼って解決できるようにしなくては。私は電話をマメにして、みんなの連絡係になるのが現実的だと感じました。
ちょうど、先日の要介護度の見直し結果が出て、父は要支援2から要介護2になり、使える介護サービスが増えました。
ケアマネさんはどうやって選ぶのかな?と思っていたら、地域包括支援センターさんが実家に近い事業所を紹介してくれて、そこに所属する人にあっさり決まりました。
キャパオーバーになると、気づきの幅が狭くなる。大切なものを守るため、抱えすぎないようにしなくては!
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛