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理系の祭典『高専ロボコン』久々のリアル対決開催!「技術力を凌ぐアイデアでルールぎりぎり勝負が見どころ」

『高専ロボコン』とは、アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテストのことで、1988年にNHKで放送が始まった「理系の祭典」です。新型コロナの影響で長らく行われていなかったリアル大会が今年はついに開催、しのぎを削る“対戦”を心待ちにしながら、漫画家でテレビウォッチャーの北村ヂンさんが番組の楽しみ方を解説します。

毎年変わる競技内容&ルール

 今年も「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」の地区大会が行われ、全国大会に出場するチームが出そろった。全国大会の開催は11月27日。NHKでの放送は12月24日の予定となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、2020、2021年の大会は、各チームが個別でパフォーマンスを披露する形式だったが(2020年はオンライン開催)、今回は3大会ぶりとなる対戦型トーナメント形式での開催だ。

 各校のアイデア・技術力を披露するパフォーマンスもいいのだが、やはりロボコンの醍醐味は相手校としのぎを削る“対戦”。全国大会の放送が待ち遠しい。

「高専ロボコン」の特徴は、毎年恒例で行われている大会なのに、毎回競技の内容やルールが変わること。いろいろな事情があるのだろうが、大きいのは「ルールの抜け穴を突いた必勝パターンを見つけられちゃうと、大会にならないから」じゃないかと思う。

 例えば「ロボットで段ボールをたくさん積み上げた方が勝ち」という競技。さすがに相手が積み上げた箱をぶっ倒しちゃうような行為は禁止されているが、積み上げる前の箱が置かれている場所に網をかけちゃって、相手チームのロボットが箱を持ち上げられないようにしちゃったり。

「フィールドに空いている穴に、たくさんボールを落とした方が勝ち」という競技では、より多くのボールを落とせるロボットを作るのではなく、とにかく最速で1~2個ボールを落として、あとは穴をふさいで相手が得点できないようにする。

 この手の「ルールの抜け穴」で圧倒的に勝利するチームが出てきてしてまうと、翌年、みんなそれをマネしてしまう可能性がある。……ということで毎年、競技内容やルールを変える必要があるのだろう。

今年の競技のゲームバランス

 とはいえ毎年毎年、ちょうどいいバランスの競技やルールを考えるのは至難の業だ。難しすぎず、簡単すぎず、ほどよく得点差がついて勝敗が決まる。そこそこ「ルールの抜け穴」を突く余地もあり、たとえ技術力で劣っていても「アイデア勝ち」できる可能性がある。

 そんなゲームバランスが求められるものの、なかなか難しいようで、大会によって競技の盛り上がりっぷりは大きく変わってしまう。

 それでは今年の競技はどうかというと……毎年見ているウォッチャー的にはイマイチ。おそらく、現在放送中の朝ドラ『舞いあがれ』モチーフなのだろう。「ミラクル☆フライ~空へ舞いあがれ~」と名付けられた今回の競技。試合は、テイクオフゾーン、ランディングゾーンに分かれた競技フィールドで行われる。

 ロボットが移動できるのはテイクオフゾーンの中だけ。そこから紙飛行機を飛ばして、ランディングゾーンに設置された長机や丸机といった得点スポットに紙飛行機を着陸させれば得点。要は得点スポットにいっぱい乗せた方が勝ちってこと。もっとも理想的な競技イメージとしては、人間型のロボットが紙飛行機を超絶コントロールで飛ばして得点スポットに見事着陸させるというもの。

 しかし、人間のように手と腕を使って紙飛行機を飛ばすロボットを作るなんて、技術と労力の無駄だ。「回転ローラーでも輪ゴムでも、バネでも、何でも飛行機を飛ばせればいいんでしょ?」ということになる。人間みたいに飛ばすよりも、滑走路みたいなところから発射させた方が、紙飛行機も安定するはずだ。

 で、多くの高専はこの方向性でロボットを作っていく。

 さらにいやらしいアイデアの持ち主は、「紙飛行機を飛ばすというけど、紙をクシャクシャに丸めてボールみたいにしちゃった方が距離や方向のコントロールがしやすいのでは?」とか、「とにかく得点スポットの上に乗っければいいんでしょ? 紙飛行機を飛ばすよりも、長~いアームで紙飛行機(という名の紙)を直接置いた方がいいんじゃない!?」と、裏技的なロボットを作る。

 さらには、壁などを作って相手チームの紙飛行機を妨害することに命をかけるチームもいるかもしれない。

 こうなってくると、主催者側が当初想定していた「技術力を駆使して紙飛行機を飛ばし、得点スポットに着陸させる」みたいな競技からはかけ離れていくわけだが、見ている方としては、そっちの方が面白い。

 この「高専ロボコン」は、「技術対決」ではなく「アイデア対決」と銘打たれている。オキテ破りギリギリのアイデアで正統派ロボットを打ち負かし、バンバン勝ち進んでいくような試合こそ盛り上がるのだ。

「ルールの抜け穴」を突いてこそロボコン!?

 しかし今回、結構細かくルールが定められているため、「ルールの抜け穴」が小さすぎるのだ。

「紙飛行機とは、飛行時に揚力を発生させる翼をもつものとする」という規定があるため、紙飛行機とは名ばかりの、紙のボールとかはNG。

「ランディングゾーンには、ロボットは上空を含めて侵入できない」とのことで、アームなどを伸ばして直接置くのもダメ。

「故意による相手ロボットへの接触・破壊」「風力を用いて相手チームの妨害を行った場合」も違反となるようだ。

 これでは妨害系の作戦も難しそうだ。接触・破壊はともかく、バカデカい扇風機を使って、とにかく相手の紙飛行機を妨害するだけのロボットとか、サイコーなのに!(風で自分チームの紙飛行機も吹っ飛ばしちゃって自爆してくれるとさらにサイコー!)

 ということで今回の大会は、わりとスタンダードに紙飛行機を飛ばすロボットが大多数だ。さらに、紙飛行機の動きがあまりにも予測不能なこともイマイチなポイント。

 以前の大会で行われた輪投げ競技の場合、技術力やアイデアによって、輪の軌道をそれなりにコントロールすることが可能だったが、紙飛行機を自在にコントロールするのはほぼ無理! そのため、コントロールはあまり気にせず、とにかく大量の紙飛行機を素早く打ち出すタイプのロボットが勝ち進んでいる印象だ。得点スポットに乗るも乗らないも運頼み。ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たる状態の試合ばかりで、イマイチ盛り上がれないのだ。

 もう少しアイデア次第で、得点確率を上げられるようなルール設定にしてほしかったところだが……。

 しかし難しいルールでも、予想外の方向から抜け穴を突いてくるチームが出てくるのがロボコン。全国大会には、わけのわからない方法で優勝を決めるチームが登場することを期待したい!

文とイラスト/北村ヂン

北村ヂン

1975年群馬県生まれ。各種おもしろ記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。……といいつつ最近は漫画ばかり描いています。

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