「人の悪口ばかり言う友人ともう付き合いたくない」と悩む女性に毒蝮三太夫が提案した具体策|「マムちゃんの毒入り相談室」第37回
「友達」との付き合いは難しい。口を開くと文句や悪口ばかりの友達。その友達の話を聞くのが苦痛で、できれば会いたくない。しかし相手は、しょっちゅう食事に誘ってくる。楽しい話題に切り替えようとしても、なかなかうまくいかない。どうすればいいか悩んでいる相談者に、マムシさんが励ましの言葉と具体的な解決策を授ける。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「文句や悪口ばかり言う友達の誘いを断りたい」
「暑さ寒さも彼岸まで」って言うけど、今年の秋は見事にそうだったな。お彼岸に入ったら一気に涼しくなった。昔の人はたいしたもんだ。「言わぬが花」って言葉も昔から言われてるけど、こっちは必ずしも当てはまらないかもしれない。今回はそんな話だ。
53歳の会社員の女性が、友達との付き合い方で悩んでいる。
「なにかというと文句や悪口ばかり言う友達がいます。その彼女からしょっちゅう食事に誘われるのですが、会うのが憂鬱になってしまっています。もう長い付き合いなのですが、最近ますます愚痴っぽくなってきています。楽しい話題に切り替えようと思うのですが、私は話が下手で、だいたい聞き役になってしまいます。
その友達の話を聞くのがもう苦痛なのですが、誘いを断るのも気が引けます。どういう対応をしたらいいでしょうか?」
回答:「『そういう悪口ばかり聞きたくない』とはっきり言ったほうがいい。親しい間柄で『言わぬが花』は当てはまらないんだよ」
会ってるあいだじゅう文句や悪口を聞かされるわけか。そりゃ、たまんないな。でも、あなたはやさしい人なんだね。嫌だと思いながらも「うんうん」って聞いてあげてる。俺だったら「うるせえ、いいかげんにしろ!」って怒鳴りつけちゃいそうだ。
怒鳴りつけるのはよくないけど、はっきり言ったほうがいいよ。「そういう話ばっかり聞きたくない」って。相手は自分があなたに嫌な思いをさせていることに気づいてないんだから。もしかしたら、いつも聞いてくれるから、あなたもそういうネガティブな話題が好きだと思われてるかもしれない。
適当な口実をつけて誘いを断る方法もあるけど、それはあんまりお勧めしないな。相手は「どうして最近、付き合いが悪くなったのかしら」と不思議に思うし、あなただって後ろめたさを抱えることになる。それに長い付き合いってことは、その彼女は悪いところばっかりじゃなくて、いいところもいっぱいあるわけだよね。
あなたにとって大事な友達のひとりなんだから、お互いがモヤモヤしたまま疎遠になるのはよくない。ウジウジしたまま付き合い続けるのもよくない。「これからもあなたとは長く付き合っていきたいから言わせてもらうけど」って前置きして、「もっと楽しい話がしたい。悪口や愚痴ばっかり聞くのはつらいの」と話してみよう。
「そんなこと言ったら、相手が怒るかもしれない」と、あなたは思うかもしれない。怒ったっていいんだよ。怒って「じゃあ、もう会わない」と言われたら、相手はあなたのことを「何を言ってもいい便利な聞き役」としか思ってなかったってことだから。
「言いたいけど言えない」っていうのは昔から悩みの定番ではあるけど、まったく生産性がない。自分の中で悩みをぐるぐるさせているだけで、解決には一歩も近づかないからね。大げさに言えば人生の無駄遣いだ。だいたい「言ったら怒るに違いない」って決めつけるのは相手に失礼だよ。言えなくてストレスをため込むのは、自分に失礼だ。
友達にせよ夫婦にせよ、親しい間柄で「言わぬが花」は当てはまらない。何を考えているのか、何が不満なのかは、言わなきゃわからないよ。「態度で察してほしい」と期待しても、相手は「なんか感じ悪いな」と思うだけだ。自分の勇気のなさを棚に上げて、「どうして察してくれないの」と相手を責めるのは、あまりにも虫がいい。
「こう思ってるの」とちゃんと話したら、案外「そうだったのね。早く言ってくれればよかったのに」ってことになるんじゃないか。俺はそう思う。もしかしたら、相手も「じつは、私も前から言おうと思ってたことがあるの」と、あなたに直してほしいところを言ってくれるかもしれない。それはそれでありがたいよね。
夫婦でも会社の上司でも、おかしいと思うことや不満に思ってることは、口に出して伝えたほうがいい。そういうときは、落ち着いて話すことが大事だ。ため込み過ぎて爆発しちゃったら、言いたいことが伝わらだけじゃなくて悪い印象しか残らない。早めに伝えて相手の考えを聞けば、たとえ自分の意見とは違ってたとしても納得することができる。
何にせよ、人生は納得ずくで歩いたほうがいいよ。腹で思ってないで、言葉にして相手に伝える。自分の思い通りにいくとは限らないけど、相手の考えを聞けば、じゃあしょうがないなって納得はできるじゃない。あなたもその彼女に思い切って話してみよう。納得づくの新しい関係がスタートして、きっとこれからも長く付き合っていけるよ。
人生に大事なのは納得だ。そして朝めしで大事なのは納豆食うことだ!
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。86歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。大沢悠里さんとの80代コンビによるポッドキャスト配信番組「大沢悠里と毒蝮三太夫のGG放談」も絶好調(毎週土曜日午後3時)。ストリーミングサービス「スポティファイ」で過去の回も含めて無料で楽しめる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。