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夫が突然死したショックから立ち直れない女性に毒蝮三太夫が語ったこと|「マムちゃんの毒入り相談室」第36回

 突然の別れは、ひときわショックが大きい。5年前に夫が突然死した52歳の女性。それから精神的に不安定になり、仕事にせよ人間関係にせよ、何をやってもうまくいかない状態が続いているという。「自分を変えたくて」と勇気を振り絞ってメールを送ってくれた相談者に、毒蝮さんが苦しみに寄り添いつつ具体的な解決策を授ける。(聞き手・石原壮一郎)

今回のお悩み:「夫を亡くしたショックから立ち直れない」

 ちょっと前の話だけど、新型コロナウイルスの「濃厚接触者」になったんだよ。身近な人が感染して、俺も検査を受けた。幸いその人は軽症だったし俺も陰性だったんだけど、コロナのヤツずいぶん身近なところまで迫ってきやがったなと感じたよ。

 どんなに気をつけてても、誰にだって感染の可能性はある。感染したことを責めるのは論外だけど、「どこでうつったんだ」と聞くのもナンセンスだね。本人だってわかんないし、間接的に責めてるみたいに聞こえちゃう。電話とかで「感染した」と聞いたら、「運が悪かったな。軽症で済むことを祈ってるよ。お大事に」でいいんじゃないかな。

 といったところで、今回の相談にいってみよう。52歳の女性からだ。

「5年前、夫が突然死しました。高校生、中学生の娘二人を抱えて途方に暮れましたが、夫が遺してくれた家と生命保険があったので、子どもたちはなんとか高校を卒業することはできました。一人は就職し、もう一人はフリーターとなって働いています。

 夫が亡くなった後、私は精神的に不安定になり、何をやってもうまくいかないのです。パートの仕事をいくつかやりましたが、まわりの人が楽しそうにご主人や家族の話をしているのを聞くたびに、『うちには、夫がもういないのだ』と悲しくなってしまい、耳をふさぎたくなります。もっと前向きに生きたいのですが、気持ちが切り替えられないのです。学生時代の友人とも会いたくなくなりました。夫の家族からは、夫が亡くなったのは、私が体調管理をちゃんとしていなかったせいだと恨まれている気がして、会えなくなりました。

 自分でもこんな暗い考えはダメだとわかっています。そんな自分を変えたくて、勇気を出して毒蝮さんに相談してみました。どうぞよろしくお願いします」

回答:「ボーフレンドを作ったらいい。そして、もう大人になった娘さんたちと心を開いて話そうよ」

 そりゃあ、生半可なショックじゃなかっただろう。高校生と中学生だった二人の娘さんをちゃんと育て上げたんだから、立派なもんだよ。だけど、自分でも言っているように、ずっと落ち込んでるのはよくないね。

 二人の娘も手がかからなくなったわけだし、ここはボーイフレンドを作るのがいいんじゃないか。映画でも美術展でもいいけど、話が合う相手といっしょにでかけたら生活に張り合いが出て気分も変わるはずだ。「旦那に申し訳ない」なんて思う必要はない。今みたいに暗い気持ちで毎日を送っているほうが、空の上の旦那は心配だし、それこそ申し訳ないよ。

 それと、娘たちとも仲良くする。旦那が亡くなった5年前は、二人の娘は「自分が守らなきゃいけない存在」だった。でも成長した今は、大人の女性同士の話ができるはずだ。もともと家族ではあるけど、友だちみたいな仲間みたいな関係になれるんじゃないかな。いっしょに服を買いに行ったり、同じ化粧品を使ってみたりね。

「推し」っていうんだっけ、同じアイドルを応援するのはどうだ。ジャニーズでも韓流アイドルでも大谷翔平でもいい。まずは娘に勧めてもらって、あなたも見てみる。遠慮なんかする必要ない。若いアイドルに胸ときめかせることで、気持ちが若返るし余計なことを考え過ぎなくなるよ。

 娘たちだって、ずっと落ち込んでるお母さんを見て心配してるはずだ。いろんな話をして笑い合えたら、きっと嬉しいよ。亡くなった旦那さんの思い出話も、たまにはいいんじゃないか。娘たちの心の中には、自分が知らない旦那さんがいるかもしれない。そういう話は世界広しと言えども、あなたと娘たちの3人しかできないんだから。

 夫の家族がどうのって書いてるけど、まったく気にしなくていい。そんなことは思ってないだろうし、もし思ってたとしても筋違いの逆恨みだ。あなたが背負いこむことじゃない。あなたの中で旦那はいつまでも大きい存在だけど、旦那の親やきょうだいは、あえて強い言い方をするともう他人なんだ。心の中で縁を切って頭の中から追っ払おう。

 ボーイフレンドができたら何か言ってくるかもしれないけど、それも聞き流せばいい。大事なのは、あなたと二人の娘さん、つまり生きている人間の幸せだ。3人が毎日を明るく前向きに生きることが、亡くなった旦那さんにとっての何よりの供養になる。ボーイフレンドを作るのも亭主孝行だよ。あっちはあっちで、うまいことやってるかもしれないしな。

 あなたは、自分を変えたいと思って、勇気を出して相談を送ってくれた。それができた時点で、きっと新しい自分に生まれ変わってるよ。もう大丈夫だ。たっぷり落ち込んだんだから、あとは元気になるだけだ。娘さんたちと力を合わせて、楽しくやってくれ。

毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。
※今後の記事中で、毒蝮さんがご相談にズバリ!アドバイスします。なお、ご相談内容、すべてにお答えすることはできませんことを、予めご了承ください。

毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。86歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。大沢悠里さんとの80代コンビによるポッドキャスト配信番組「大沢悠里と毒蝮三太夫のGG放談」も絶好調(毎週土曜日午後3時)。ストリーミングサービス「スポティファイ」で過去の回も含めて無料で楽しめる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

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