介護費用を100%親のお金でまかなうには?親子の経済的負担を軽くする制度一覧
親の介護にかかるお金は、子供が負担するのではなく、親のお金でやりくりできることが理想だ。しかし、子供には親の扶養義務があるため、親が介護費用を払えなくなった場合は援助する義務がある。そうならないためにすべきこととは? いくらかかるのか、どうしたら安くなる? 介護費用を親の財布で賄(まかな)う方法について、専門家にアドバイスいただいた。
親の懐具合を知っておくこと!
親の介護費用は本来、親のお金で支払うもの。しかし、親の貯金や収入だけでは足りなくなったり、認知症などにより銀行の暗証番号がわからず、現金がおろせなくなったとき、親が急遽入院し、意思の疎通ができなくなったときなどは、子供が払わざるを得ない場合もある。
「子供が親の介護費用を負担して、経済的に立ち行かなくなるケースは少なくありません。そもそも現役世代は、家のローンや教育費などでお金がかかるため、親の介護費用まで払えない家庭も多い。そんな“介護破綻”を防ぐため、親の年金受給額や収入、資産といった、親の“財布”を、元気なうちに把握しておきましょう。その範囲で賄えるサービスを探して利用するのです」(太田さん・以下同)
生命保険文化センターの2021年調査によると、1か月にかかる介護費用の平均は8万3000円で、ここには、おむつや介護食などの介護用品費、デイサービス利用時の食費やレクリエーション代、ショートステイ利用時の食費、宿泊費などが含まれる。
知っておくべき「親の財布」チェックリスト
□預貯金額(金融機関名、キャッシュカードの有無、暗証番号)
□月の年金受給額
□ 株式や投資信託などの金融資産
□不動産
□ローンや負債の額
□ 民間の医療保険や生命保険(証書の保管場所)
「いくらかかるか」ではなく「いくらまでかけられるか」
ただし、これらはあくまでも平均値。参考にとどめつつ、「いくらかかるか」ではなく、親の懐具合に応じて、「いくらまでかけられるのか」を決めることが大事だという。
仮に親の年金が月10万円程度なら、そこから保険料や税金、生活費を引いたうえで、いくら介護費用にかけられるのかを計算する必要がある。介護費用の負担を軽減するサービスもあるので、それらも活用したい。
注意したいのは、こうしたサービスは自己申告制だということ。自分から情報を集めて申請しなければならない。こういった親の“財布”の管理も、家族にしかできない介護の1つだ。
冒頭に登場した吉田さんは、父親の年金収入が約23万円だったため、その範囲で賄えるよう、月約18万円の施設介護を決めた。事前に親の“財布”を把握していたからできた選択だ。
「ただし、親の同意なしに子供が親の預金を引き出すことは原則禁止されています。親に委任状を書いてもらったうえで引き出すことになります。あるいは、親が元気なうちに、『代理人カード』(下記で詳述)を作成しておいてもらえれば、親の預金を引き出せるようになります」
最近では使途が医療費や施設入居費などの場合、代理権のない親族でも預金を引き出せる銀行があるので、問い合わせてみるのも手だ。
子供が介護費用を払えなければ生活保護も
親も子供も、どうしても介護費用が払えない場合はどうしたらいいのか。
「民法によれば、扶養義務はあくまで、子供の生活に“支障が出ない範囲”とされています。これは、子供の収入や家計状況を見て決めることになりますが、“経済的に余裕があるならお金を出すべき”という考えですから、自分たちの生活を維持したうえで、親の面倒を見るゆとりがある場合に払えばいいのです」(前出・外岡さん)
つまり、自分たちの生活を犠牲にしてまで、親に経済的支援をする必要はないのだ。
「親も子供も払えなければ、親は生活保護を受け、そこから介護費用を出すことになります。ただし、親が認知症の場合、親の金銭管理を行う成年後見人をつける必要があります」(外岡さん)