75才の壁を元気に超えるメソッド 健康寿命を伸ばす7つの習慣を医師が提案!
女性の平均寿命は87.74才。一方、介護を受けずに健康な体で生活できる期間「健康寿命」は女性で75.38才。不自由な12年をいかに短くするかは、今日からの健康法にかかっている。「75才の壁」を元気に超えるためには、体を動かせるいまのうちから、長生き習慣を身につけるべし! そこで、今日からできる「健康寿命を延ばす」生活術を専門家に伺った。
生活に変化があると脳の老化を防げる
健康寿命を延ばすためにまず意識したいのが、意欲の低下を防ぐことだという。
「そのためには、前頭葉を鍛えることが大事。前頭葉は40代から萎縮が目立ち始め、60代・70代になると本格的に老化が進みます。前頭葉は、想定外のことに対処するときに活性化するので、いつもと違う道を通る、新しいレシピに挑戦するなど、変化のある生活を心がけましょう」(和田さん・以下同)
おいしいものを食べたときも前頭葉は活性化する。
「節制ばかりしていると、前頭葉が刺激されず、脳の老化が早まります。さらに、やせている人よりも、ぽっちゃり体形の人の方が長生きとのデータもあるので、病気のため食事制限をせざるを得ない場合を除き、50才を過ぎたらダイエットはしない方がいいでしょう」
“幸せホルモン”「セロトニン」を増やす
適度な日光浴も、意欲の低下を防ぐには効果的だという。
「太陽の光を浴びることで、精神を安定させてやる気や意欲を増進させる脳内物質・セロトニンが生成されます」
幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」は、精神状態の安定に欠かせない脳内物質。不足すると脳の機能が低下し、やる気が出ず、うつや不眠、認知症の発症リスクが高くなるので意識して分泌を促そう。
セロトニンについては下にある6つの方法を参考にしてみてほしい。
★「セロトニン」を増やす方法【6】
【1】1日1回は日光を浴びる
セロトニンは太陽の光を浴びることで分泌量が増す。
「太陽の光を目から入れることでセロトニンが分泌されます。1日1回20~30分、屋外で太陽の光を浴びましょう」(和田さん・以下同)
【2】リズム運動をする
ウオーキングやジョギング、踏み台昇降など、単調なリズムで繰り返す運動は、セロトニンの分泌を促す効果が高い。
「おすすめは散歩。自分のペースで行えるので続けやすいからです。1日30分を目安に歩きましょう」
【3】トリプトファンを摂取する
トリプトファンはアミノ酸の一種で、体内でセロトニンを合成する材料となる。
「大豆、牛乳、バナナ、チーズなどに多く含まれています。セロトニンを増やすためにも、これらの食品を積極的に摂るようにしましょう」
【4】鳥の声や波の音など自然音を聞く
脳科学の研究で、動物の鳴き声や波の音などの自然音には、セロトニンの分泌を促し、ストレスを軽減させる効果があると実証されている。自然音が収録されたCDでも効果が得られるので試してみて。
【5】ドキドキする体験をする
ドキドキする体験をすると、その興奮や緊張を抑えるために、セロトニンが分泌される。あえて知らない道を通ってみたり、お化け屋敷に入る、ジェットコースターに乗るなど、ドキドキする体験を意識的に行うのもおすすめ。
【6】腸内環境を整える
実は、セロトニンの約9割は腸で作られている。日頃から発酵食品や食物繊維を積極的に摂るなど、腸内環境を整えておくことも大切。腸内環境を整えることで、自然とセロトニンを増やせ、精神状態も安定しやすくなる。
いつでも現役時代の気持ちを持つ
仕事をしている人は、退職後に老けやすい。
「仕事に限らず、健康なうちは無理に運転免許を返納しなくてもよいでしょう。筑波大学などの研究チームが行った調査では、運転をやめた人は運転を続けた人に比べて、6年後に要介護となるリスクが2.16倍でした。心身が健康なうちは、何事にも引退など考えず、現役であろうとする気持ちを持ち続けてください」
健康診断より心臓ドックか脳ドックを
日本人は健康診断に対する信仰が強いが、健康診断の結果で一喜一憂しないことも大切だ。健康診断で示される判定は統計的な数値のため、異常値でも健康な人はいるし、正常値でも病気の人はいる。あくまで参考程度に考え、心筋梗塞や脳梗塞を予防したいのなら、心臓ドックや脳ドックを受けるのがおすすめだという。
家族以外の人間関係も大切に
年を重ねると、親や配偶者など身近な人との死別を経験する人も増える。
「身近な人の死をきっかけにうつになってしまう人も多い。つらい思いを話せる知人がいるかどうかが重要なので、家族以外との人間関係を持っておくこと。完璧主義の傾向が強い人も、うつになりやすいので、きちんと家事をこなそうといった考え方はやめた方がいいでしょう」
若いときと違い、肩の力を抜いて生きていくのが健康寿命を延ばす秘訣のようだ。
健康寿命を延ばすための7つの習慣【まとめ】
【1】前頭葉を鍛える
【2】何事にも「引退」を考えない
【3】ダイエットはしない
【4】太陽の光を浴びる
【5】健康診断を信用しすぎない
【6】家族以外との接点を持つ
【7】完璧主義をやめる
教えてくれた人
和田秀樹さん/精神科医
和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療に従事。新著『老いが怖くなくなる本』(小学館新書)など著書多数。取材・文/鳥居優美 イラスト/なとみみわ
※女性セブン2022年7月7・14日号
https://josei7.com/
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