ひとりで最期まで自宅で過ごすための3つの準備「知り合いを増やし孤立を避ける」
子供の独立、仕事のリタイア、夫の死去など、年齢を重ねると「手放すもの」が一気に増える。憧れの「おひとりさま」として持ち家で自由気ままに過ごせる半面、孤独を感じて認知症などを患えば、施設生活を余儀なくされてしまう。死ぬまで自宅で暮らしたい。その願いを叶えるためにやっておくべきことを専門家に伺った。
【1】「井戸端会議」で知り合いを増やす
子供の独立や夫の他界などでひとりになった際、避けたいのは家に閉じこもって社会から切り離されることだ。
高齢者の生活支援や居住環境に詳しい森ノ宮医療大学研究員の山田隆人さんが話す。
「ひとりになって外出することが億劫になると、それまでの人間関係が希薄になり、認知機能の低下やけがをするリスクが増します。さらに小さなことが気になるようになって、他人に不満ばかり言う『いじわるばあさん』になってしまう恐れもある」
だからといって、無理に新たな人間関係を築こうとしても、それ自体ストレスになってうまくいかないことが多い。山田さんは「老後こそ、つかず離れずの関係が大事」と指摘する。
「毎日の散歩や買い物で顔を合わせる人たちに挨拶したり、井戸端会議をするだけでいいんです。ゆるくつながれる相手が近所にいれば心が穏やかになるし、何か困ったことがあったときに助けてくれるかもしれません」
【2】「孫、子供家族」とは同居しない
夫に先立たれてひとりになると、「あの子たちがいてくれたら…」と子供家族との同居が頭をよぎることがある。しかし、いざ同居してみると悩みのタネとなりやすい。
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが言う。
「夫の死後、子供家族との同居を考える人は少なくない。ですが、多くの場合は子供や孫との生活スタイルが合わず、ストレスを抱えることになります。しかも、ひとたび実家で同居を始めてしまうと、『やっぱりひとり暮らしがしたい』となったとき、子供家族を追い出すか、自分が出ていくしか方法がない。同居を検討する場合は、いきなり一緒に住み始めず、『お試し期間』を設けて相性を確認しましょう」
【3】「遺族の負担になる」ことを覚悟しておく
8割以上が自宅以外で死亡し、病院で亡くなることが当たり前となった時代に、「自宅での最期」を選択するということは、残された家族に想像以上の負担がかかることも理解しておきたい。
たとえば、病院で亡くなった場合、遺体は霊安室に運ばれて病院が提携する葬儀社を手配するが、在宅死の場合は自分たちで葬儀社を手配しなければならない。
実務以上に深刻なのが、遺族のメンタルケアだ。正看護師で看取り士としても活動する大軒愛美さんが言う。
「最期の瞬間を、家族の思い出が残る自宅で看取った遺族を襲う悲しみは、想像以上に深いものです。終末期に入ったら、納棺までのプロデュースや支援、臨終の立ち会い、家族の相談相手などをする“看取り士”に依頼することもひとつの手段。大切な人を失った悲しみを乗り越える手助けになるはずです」
自宅で最期まで暮らすことは可能だ。ただし、それはひとりで達成できることではない。それを理解していれば、やるべきことは見えてくるはずだ。
教えてくれた人
山田隆人さん/森ノ宮医療大学研究員、太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト、大軒愛美さん/正看護師・看取り士
※女性セブン2022年5月12・19日号
https://josei7.com/
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