70才以上女性の75%が「下肢静脈瘤」 アキレス腱の硬さが原因に【医師解説】
加齢や長引く自粛で運動量が不足し、足の筋肉が落ちると、骨に負担がかかって腱や靭帯が伸びて足の形が変わってしまうことも…。足の変形を抑えるには、アキレス腱の柔軟性が重要だという。足の専門医に、アキレス腱が硬くなるとなりやすい病気について解説いただいた。
アキレス腱が硬くなるとなりやすい病気4選
アキレス腱が硬いと歩きづらくなるだけでなく、意外な病気の原因にも。痛みがなくても変形していないかなど、自分の足を“見る”きっかけにしてほしい。起こり得る足の病気を見ていこう。
1.下肢静脈瘤
足の静脈が太くなってこぶ状に浮き出て見える症状を「下肢静脈瘤」という。“足の総合病院”下北沢病院副院長の長﨑和仁さんが解説する。
「足の静脈の血液を心臓に戻すには、重力に逆らって上昇させなければなりません。通常なら、歩くことでふくらはぎの筋肉が収縮して血液を押し上げ、逆流しないように静脈内の弁が支えています。ところが、筋力が衰えたり、弁の機能が悪くなると、静脈内に血液がたまるため、静脈の壁にかかる圧力が高くなります。そのせいで、静脈が伸びたり膨らんで、こぶになってしまうのです」
出産経験者の2人に1人がなるとされ、70才以上女性の75%にこの症状が見られるという。つまり女性の多くが悩まされる症状なのだ。
「静脈の血液を心臓へ押し上げるには、ふくらはぎの筋肉を伸縮させることが不可欠で、そのためには、アキレス腱の柔軟性が大切。座り仕事や立ち仕事をしている人は特に、アキレス腱伸ばしはもちろん、30分おきに立ったり、かかとの上げ下ろしをこまめに行いましょう」(長﨑さん・以下同)
■くもの巣状静脈瘤(軽症)
皮膚表面の毛細血管が拡張し、血管が見えるようになった状態で、自覚症状はない。指で押して血管が消えれば静脈瘤、消えなければ皮膚障害のことが多い。
■側枝型静脈瘤(軽症)
伏在静脈(体表近くの静脈)から枝分かれした細い静脈で起こる静脈瘤で、こぶが多少目立つものの、自覚症状はほとんどない。
■網目状静脈瘤(軽症)
皮下の血管が拡張して起こる。青く浮き上がった静脈が網の目のように見えるためこの名称がつけられた。このケースも自覚症状はない。
■伏在型静脈瘤(重症)
伏在静脈の弁が壊れて生じた静脈瘤で、ボコボコした静脈瘤が目立ってきて、だるさ、むくみ、うっ血性皮膚炎などが起こり、外科的手術が必要になることも。
→「下肢静脈瘤」とは?症状・原因・治療・予防法を専門医が解説!
2.外反母趾
・重症度…外反母趾角
・軽度…20~30度
・中等度…30~40度
・重度…40度以上
足裏のアーチがなくなり偏平足や開帳足になると親指のつけ根に負荷がかかり、MTP関節が内側に曲がってしまう。変形が軽度で痛みがなければ、アキレス腱伸ばしに加え、足指を広げる、足指でタオルをつかむなどのストレッチで進行を抑えられる。
3.足底腱膜炎
歩くときに足裏のアーチの弾力をサポートするのが足底腱膜。足裏にアーチがないと腱膜が引っ張られて炎症を起こす。痛みが軽い場合は、アキレス腱伸ばしや足裏のマッサージに加え、専門医の処方によるインソールの着用で改善できる。
4.巻き爪
足の爪が内側に丸まり、肉に食い込んだ状態。足指をしっかり使って蹴り出さずに歩いているとなりやすいため、アキレス腱の柔らかさが重要となる。潜在患者数は約1000万人とされ、痛みも感染もある場合は外科手術をすることも。
教えてくれた人
下北沢病院副院長・長﨑和仁さん/日本血管外科学会血管内治療認定医。日本で唯一の“足の総合病院”で、多くの足の治療に取り組む。主な著書に下北沢医師団共著による『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』(日経BP)がある。
取材・文/佐々木めぐみ イラスト/尾代ゆうこ
※女性セブン2021年6月3日号
https://josei7.com/