「疲れやすい、イライラする」もしかして疲労肝? 肝臓の疲労度チェック【医師解説】
手足が冷たい。運動をしても、体がだるくて続かない。肝臓に原因があるかも? 全身の臓器と血管を元気にするために肝心な”肝臓”の働きを、専門医に解説いただいた。あなたの肝臓の疲労度チェックをしてみよう!
肝臓を守り鍛えることが健康長寿の秘訣
「人体の化学工場」「血液のコントロールセンター」、そして「沈黙の臓器」。これらはすべて、肝臓の二つ名だ。
肝臓は、臓器の中で最も大きく、重さは1~1.2kgほどにもなるとされ、その役割は細かいものまで含めれば500以上にもなる。健康を維持するのに欠かせない働きをいくつも担っているからこそ、肝臓を守り、鍛えることが、健康長寿の秘訣だ。
鍼灸師でアスリートゴリラ鍼灸接骨院の高林孝光さんによれば、肝臓の働きの中でも特に重要なものの1つが代謝。食べたものや体の中の古いものを分解して、エネルギーなど人体に必要なものにつくり替える作用だ。
「肝臓は、体の中で基礎代謝(活動していなくても消費されるカロリー)が最も高い臓器。心臓が基礎代謝全体の8%、腎臓が10%、筋肉が18%、脳が19%なのに対し、肝臓が占める基礎代謝は27%で、3割近くにもなります」(高林さん)
肝臓の機能を高めることは、筋肉を鍛えるよりも高いダイエット効果が期待できるということ。実際に、高林さん考案の肝臓マッサージを続けたことで、1か月で3㎏もの減量に成功した例もある。
エネルギーの貯蔵と栄養の運搬もこなす
肝臓の代謝によってつくられる物質の1つに「ヘパリン」がある。肝臓クリニック札幌院長の川西輝明さんが言う。
「ヘパリンは、血液が固まるのを防ぐ物質で、血中のたんぱく質と結合することで力を発揮します。ヘパリンが充分に分泌されていると血液の流れがよくなり、動脈硬化や血栓が起こりにくくなります」
川西さんは、肝臓でつくられる物質で、さらに重要なのが「アルブミン」だと話す。卵にも含まれているたんぱく質で、酸素や栄養が血液に乗って全身に供給されるのをサポートする役割を果たす。
「アルブミンが減少すると、体に必要なミネラルや栄養を届けられなくなり、体のだるさを感じたり、疲れやすくなったりします」(川西さん)
肝臓は全身の血液の10~15%をため込んでいる“血液のコントロールセンター”でもある。肝臓の機能が上がれば、サラサラのきれいな血液が全身にめぐるようになり、そのほかの臓器の機能も上がり、肌の乾燥やくすみが軽減したり、白髪の改善も期待できるという。
肝臓がたくわえているのは、血液だけではない。生きるために必要なエネルギーは、脂肪という形で肝臓にため込まれている。
「乱れた食生活などで摂取エネルギーが増えすぎると、余ったエネルギーはすべて脂肪として肝臓にたまり、それが長期間続くと脂肪肝や肝硬変に発展します。だからといって、長期にわたる極端なダイエットなどで摂取エネルギーが減りすぎると、飢餓状態だと判断した体が全身の脂肪細胞からエネルギーを出すように働きかけ、脂肪細胞が増えます。同時に筋肉量が減って代謝が落ち、太りやすく、やせにくい体になる。一定のリズムで、過不足なくエネルギーを肝臓に取り込むことが重要です」(高林さん)
善玉菌が出す毒まで分解
アルコールの有害物質「アセトアルデヒド」などを解毒するのも、肝臓の主要な役割の1つだ。
「肝臓が解毒するのはアセトアルデヒドだけではありません。食品添加物や薬剤など、自然ではないものの多くが、肝臓で解毒、排泄されます。その際は胆汁(たんじゅう)も使われ、主に腸から排泄されます。便が黄色や茶色なのは、胆汁の色なのです。便にならないものは腎臓でろ過されて尿として排泄される。肝臓が極端に悪い人は、尿の色が異様に濃い状態が続くこともあります。ですが、これは多くの場合、水分調節がうまくいっていないのが原因です。
肝臓が極限まで疲弊しているケースでは、胆汁の流れが悪くなったり、肝硬変や肝臓の炎症を起こしていることも。さらに悪化すると、白目の黄疸(おうだん)や、鼻や皮膚などの毛細血管が拡張するくも状血管腫のほか、腹水でお腹が張ったり、へそまわりに静脈瘤が出ることもあります」(川西さん・以下同)
川西さんによれば、肝臓は全体の3分の1ほどの大きさがあれば、充分に生きていくことができる。それは裏を返せば、肝臓が悪くなっても、ほかの臓器の3倍は頑張れてしまうということだとも。
「肝臓は少しくらい悪くなっても、自覚症状はありません。黄疸やくも状血管腫など、目に見える症状が出た時点で、その人の肝臓の状態は非常に悪い可能性があります」
疲れや倦怠感が抜けないのは、“疲労肝”の表れ。たかが疲れと甘く見ず、早めに血液検査を受けた方がいい。肝臓の働きが落ちると、免疫力も低下する。というのも、肝臓には、ほかの臓器にはない免疫細胞がある。菌やウイルスなどの異物や老廃物、体の中でつくられる毒素まで処理する「クッパー細胞」だ。
「クッパー細胞は、消化管から送られてくる有害なものを食べて処理します。よく、腸内環境を整えることで免疫力が上がるといわれます。ところが、実は腸内の善玉菌も、活動するときには副産物として『リポポリサッカライド』という毒素をつくり出します。クッパー細胞は、これを処理することができるのです」(高林さん・以下同)
肝機能が向上すれば、やせやすい体になり、全身の血流がよくなってそのほかの臓器の働きが向上し、体温も上がる。一説では、体温が1℃上がるだけでも免疫力は数倍になるとも。さらに免疫細胞も活性化するとなれば、肝臓を整えることこそ、健康への近道だといえる。
■疲労肝 簡単チェック
1つでも当てはまるものがあれば、疲労肝になっている可能性あり。今すぐチェックしてみて!
□ 疲れやすくなった。または疲れが取れなくなった。
□ ずっと体がだるい。
□ イライラすることが増えた。
□ 前よりお酒がおいしくない。または、お酒に弱くなった。
□ 食欲が減った。特に油っこいものが食べられない。
□ 白目が黄色っぽくなっている。
□ 右の肋骨の下に鈍い痛みがある。
□ 寝つきが悪くなった。または、眠りが浅くなった。
□ 冷えがひどい。
□ 抜け毛が増えた。
□ 目の下のくまが消えない。
□ 肌荒れが治らない。
□ ずっと微熱がある。
□ 手の親指のつけ根や指先が赤い。
□ むくみがひどい。
□ 胸や首、へそまわりなどに赤い糸くずのような発疹が出る。
※高林孝光『病気を治したいなら肝臓をもみなさい』(マキノ出版)より
イラスト/飛鳥幸子
※女性セブン2022年4月7・14日号
https://josei7.com/
●「疲れが抜けない」「小さなことでイライラする」疲労肝かも?”肝臓をもんで元気に!