遠くのものが二重に見えるのは”サギングアイ症候群”かも セルフチェック法と症状、治療法【医師解説】
セルフチェックで違和感を覚えたら眼科で治療を受けることになる。
「現状での治療法は手術を受けるか眼鏡を作るかの二択になります。新しい病名ではありますが、既存の斜視と同じ手法で、斜視の手術ができる医師にとっては難しいことではない。わずかに垂れ下がった眼球を元の位置に戻すため、外眼筋の調整を行います」(渡邉さん・以下同)
手術の方法は複数ある 所要時間は10~30分程度
その方法は複数あり、外眼筋を切り離して位置を変える方法、外眼筋を短くして付け直す方法、また、切り離さずに筋肉を縫い縮める方法から選択するという。
「所要時間は10~30分ほど。施設により全身麻酔か局所麻酔が選べて、保険診療で治療費は数万円になります」
特殊レンズ眼鏡・専用コンタクトレンズも
手術に抵抗がある場合は「プリズムレンズ」と呼ばれる特殊なガラスが入った眼鏡を作る方法もある。
「職業運転手でサギングアイを発症した人も、プリズムレンズの眼鏡を作って仕事復帰できたケースが多くあります。眼鏡かコンタクトレンズで行う『モノビジョン矯正』という方法もある。しかし残念ながら、目薬などの薬物を使った治療法はいまのところありません」(梶田さん)
ただし、眼鏡やコンタクトレンズの場合、外してしまえば視力は元に戻り、ものが二重に見える症状は残ったままなので、根本的な解決にはならない。加えてレンズが希少なため、金額面でもやや割高になってしまう。
「当店でプリズムレンズを作る場合の最低料金は、4万7300円。度があがったりずれた角度が大きくなったりすればするほど、その値段は高くなり、20万円を超すケースもあります」(佐野さん)
サギングアイの予防法 病院選びは慎重に
また、いざ治療となれば手術にしても眼鏡にしても、それなりの出費になってしまう。サギングアイにならないための予防法はあるのだろうか。
「残念ながら、食事や目のストレッチなど生活習慣の改善による予防法はありません。原因が加齢で、外眼筋を支えている軟部組織の衰えにはあらがえないためです。美容皮膚科で行われるアンチエイジング治療のようにコラーゲンやヒアルロン酸の注入で対処できないものかという声もありますが、現実的ではありません。
病院選びには慎重になってほしい。眼科にかかったとしても『視界がぼやける』『ものが二重に見える』という患者の言葉から、ほかの斜視疾患をすべて除外して初めてサギングアイと診断できる、判断が難しい病気であるうえ、眼科医の間でもまだ認知度が低い現実があります。そのため、斜視の専門医や神経眼科に特化しているような医療機関を選んで受診してほしい」(渡邉さん)
長寿番組は終わっても、自分の体とのつきあいは生きている限りずっと続く。病気を早期発見して健康寿命を延ばせるよう、目を配りたい。
教えてくれた人
梶田雅義さん/梶田眼科院長、渡邉亜希さん/北部眼科・小児眼科院長、佐野亮介さん/『Glass Factory』ヒルトン梅田店
※女性セブン2022年3月17日号
https://josei7.com/