鎌倉の秘境を散策 |“名越” “極楽寺”2つの「切通し」を歩き武士の気分を味わう
大河ドラマで再び注目を浴びている鎌倉。有名な観光地の他にも鎌倉幕府の安全を守り、ときに戦いの場になった7つの“切通(きりどお)し”という道がある。その中には、現在も当時の面影を残すものがある。いまも通ることができる2つのルートを歩けば、鎌倉の違う一面が見られる。
ルート1:「名越(なごえ)切通し」山道を歩き、中世を肌で感じる
山道を歩き、中世を肌で感じられる
「ハイキング好きにおすすめの、片道2~2.5時間のルート。鎌倉駅からバスで約15分の浄明寺バス停から出発し、逗子市の名越方面へ抜ける道のりは、迫力満点の断崖や、パノラマ台からの360度の景色など、見どころ満載です」(村田さん・以下「 」内同)
出発! 浄明寺バス停
住宅地のすぐ脇を流れる小川は、丘陵に降った雨が染み出して集まったもの。鎌倉にはこうしてできた湿地や池が多い。小川の支流が集まり、鎌倉で最も長い滑川(なめりがわ)に合流する。
住宅のすぐ横の木の上にもタイワンリスの姿が。「餌が少ない冬はよく樹皮を食べています」。太くて長いしっぽが特徴。もしかしたらタイワンリスにお目にかかれるかも?
「谷状の地形が多く湿りがちな鎌倉の地には、シダが豊富に自生しています。表裏で見た目が似たリョウメンシダという種類もある」
山道では様々な草木を観察できる。「赤い実が鮮やかなアオキは、鎌倉でおなじみの植物です。実がだるまの形に似ているので、だるまの木と呼ぶ人も」。
有名な山々が一望できるスポットあり
「鎌倉逗子ハイランド」の住宅地そばの富士見台からは、広々とした景色が見られる。右手には丹沢山、大山、塔ヶ岳の丹沢山塊を、左手には江の島や伊豆大島を望む。晴れていれば富士山まで見渡せる。
尾根道を進んでいくと、倒木もある。「2019年の台風で山は大きな被害を受け、土砂崩れもありました。鎌倉は表土が薄く、大きくなりすぎた木は倒れやすいんです」。ボランティアや寄付などによって鎌倉の森は保全されている。
休憩スポット 鎌倉市子ども自然ふれあいの森
山道を20分ほど歩くと視界が開け、広場に到着。右手に衣張山が見えることも。
★大切岸(おおきりぎし)
長さ800m、高さ3~10mの切り立った崖が見られる。
鎌倉幕府の防衛遺構とされていたが、近年の調査で「かまくら石」を切り出すための石切り場だったことが判明。「火山灰と砂が入り交じってできた石は加工しやすく、石段や石塔によく使われました」。
まんだら堂やぐら群
やぐらとは崖に横穴を掘ってつくられた、中世鎌倉特有の墓地。内部に五輪塔という石塔があることも多い。
武士や僧侶はここに葬られた。「山がちな鎌倉では平地が貴重だったため、3代目執権の北条泰時が平地にお墓をつくってはいけないというお触れを出し、このような形の墓地ができました」。
150基以上のやぐらの中に建てられた五輪塔の石は、上から空、風、火、水、土という意味がある。
※まんだら堂やぐら群は毎年初夏と秋の月・土・日・祝日のみ一般公開される。
切通し最大の難所 名越(なごえ)切通し
ついに名越切通しの一番の見どころに到着! 大人1人がやっと通れるくらいの狭さの「名越切通し」。
「名越切通しは、鎌倉の7つの切通しの中でもかなり昔の面影が残っているところ。こんな狭い場所で上から敵に矢で射られたら、ひとたまりもなかったでしょう」
山道の中央には「置き石」と呼ばれる大きな石が。敵の馬の走る勢いを削ぐためのものだったとされる。
到着! 緑ヶ丘入口バス停
ルート2:「極楽寺(ごくらくじ)切通し」街並みに溶けこむ切通しを歩く
江ノ電で一駅の区間の途中に、極楽寺切通しがある。道は舗装されているが両側に山肌が見られ、おいしいものも買える、散策にぴったりな15分程度のルート。
出発! 江ノ電・極楽寺駅
北条泰時が1219年に建立した成就院は、恋愛成就にご利益あり。
かえるの石像『なでかえる』は、なでると幸せが帰ってくるといわれる。
●成就院
住所:神奈川県鎌倉市極楽寺1-1-5
★木々が生い茂る「極楽寺切通し」
成就院の石段を下りた道の両側は岩肌があらわに。このカーブした坂道一帯が極楽寺切通し。鎌倉と京都方面を結ぶ玄関口だった。
日限(ひぎり)地蔵菩薩に願いごと
フェンスの中に6体のお地蔵様が祀られている。日にちを決めて願いごとをすると、その日までに願いを叶えてくれるとされる。
1日10本限定の超人気パン
食パン専門店。1.5斤の型に2斤分の生地が入っているため、ぎゅっと詰まったもっちり食感。
●Bread Code
住所:神奈川県鎌倉市坂ノ下22-23
元禄時代出店の老舗菓子店
江戸中期の1690年代から続く名店の代表和菓子は、お餅をたっぷりのあんこで包んだ力餅。
●力餅家
住所:神奈川県鎌倉市坂ノ下18-18
https://www.chikaramochiya.com/
教えてくれたのは
村田江里子さん/All About 鎌倉・江の島ガイド
鎌倉に生まれ育つ。鎌倉市広報課編集嘱託員等を経て、講座『花をたずねて鎌倉歩き』を主宰。鎌倉の自然や歴史に精通。
撮影/深澤慎平 イラスト/別府麻衣 協力/逗子市
※女性セブン2022年3月3日号
https://josei7.com/
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