「80歳近い義母が50代の義兄の身の回りの世話を焼いてるのは変だと思う」憤る女性に毒蝮三太夫が解決策を提案
どの家族にもそれぞれ事情があり、考え方も価値観も違う。夫婦のあいだでも意見の食い違いは多いのに、義理の親やきょうだいとなると、ときに理解不能な存在だったりもする。義母と義兄の暮らし方を見ていて「怒りすらわいてくる」という49歳の女性。その怒りの正体は何か。どうすれば収まるのか。マムシさんが解決策を指南する。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「義母と義兄を見ているとイライラする」
この2日間はよく働いたなあ。昨日は講演をやって、今日はYouTubeの収録。それと、この記事も含めて取材がいくつかあった。この歳になってもやれることがあるのは、ありがたいことだ。俳優だけだったら、こんなに長くは続けてこられなかっただろうね。そうか「二刀流」は、大谷より俺のほうがだいぶ早かったわけだな。ハハハ。
今回は、49歳の女性からの相談だ。義母と義兄と、あと夫にも腹を立ててるみたいだな。
「夫の実家では、義母と義兄が2人で暮らしています。義兄は50代半ばですが、独身です。もうすぐ80歳になる義母が、今でも食事の支度、洗濯など、身の回りの世話をあれやこれやと焼いています。それを当たり前のこととして、夫も義兄も気にしていないですが、実家でその様子を見るにつけイライラします。
この先、もし義母の具合が悪くなったら義兄はどうするのだろう、そもそも高齢の母に甘えて恥ずかしくないのか……などと思い、怒りすらわいてきます。夫に何度も話しましたが、余計なことを言うなといつも怒られてしまいます。本当に余計なお世話でしょうか?」
回答:「腹を立てても、怒り損。まずはあなたと旦那の関係をよくする手を考えてみようよ」
そうだなあ、余計なお世話とは言わないけど、あなたがイライラする必要はないよ。何を言ったところで、義理のお兄さんが急に働き始めることはないだろうし、お義母さんが世話するのをやめることもないだろう。いくら腹を立てても、言ってみりゃ怒り損だ。
もしかしたら、高齢のお義母さんに何かあったときに、自分たちが手のかかる義理のお兄さんの面倒を見ることになりそうだっていう心配があるのかもしれないね。たしかに、そうなったらたまったもんじゃない。だけど、今は直接の関係はないし、旦那にしてみれば身内を悪く言われてるみたいに感じて、キツイ口調で怒りたくなるんだろう。
たしかに客観的な状況としては、こっちの生活とも大いに関係がありそうだ。お義母さんが介護を必要とする状況になる可能性だってあるしね。旦那も「余計なことを言うな」と言って現実から目をそらしてないで、先々のことを夫婦で相談しなきゃいけない。
最初にしたほうがいいのは、なんで自分はそんなに義母と義兄のことで怒っているのかを考えてみることだ。やっぱり先々のことが心配だから怒っているのか、もともとふたりが嫌いなのか。話を聞いてくれない旦那への不満が募っていて、その矛先を義母や義兄に向けているのか。もしかしたら、全部が重なっているのかもしれないな。
とりあえず自分でどうにか手を打てるのは、旦那との関係だ。もし今、旦那に「お義兄さんは、いい歳してあのままでいいの!」「お義母さんもお義母さんよ、いったい何を考えてるの!」なんて言い方をしてるとしたら、そりゃ「ウルサイ!」ってことになる。「こういうことを心配しているのよ」って話せば、旦那も「そうだな」と考えるだろう。
それでも「余計なこと言うな!」としか言わない旦那だったら、大ゲンカしたほうがいいよ。実家に帰るなり家出するなりして、反省させてやれ。妻を黙らせて「俺についてくればいいんだ」なんてやり方は、今の時代はもう通用しない。解決策は簡単には見つからないかもしれないけど、夫婦でいっしょに考えるってことが大事なんだ。
実際、ふたりの暮らし方を変えるのは無理だろうね。打つ手があるとしたら、今から旦那に「私はお義兄さんの面倒を見る気は、いっさいありませんから」と宣言しておくことかな。相談の文面からは義母と義兄の経済状況はわからないけど、多少は余裕があるならほっとけばいいし、ないならないなりの方法を探すしかない。
旦那としては、もし向こうが困った状況になっていたら無理をしてでも援助しようとするだろうけど、それも限度がある。あなたが情に流されない冷静な意見を言って話し合わないと、共倒れになりかねない。そこまでいかないにしても、今以上にイライラしたり怒ったりすることになるだろうね。先走っていろいろ言い過ぎちゃったかな。
今の状況でいちばん大事なのは、あなたが自分の中の怒りをしずめることだ。せっかくの人生なんだから、毎日を怒りながら過ごしてたらもったいない。「自分がどうにかできること」と「どうにもできないこと」を分ければ、悩みもイライラもずいぶん減るはずだ。あとは、いちばん大事な存在であるはずの旦那と、どうすれば仲良く暮らせるかを考えよう。そのためにも、自分が穏やかな気持ちでいないとね。
毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。85歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。去年の暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。映画『老後の資金がありません!』では、元警察官の頑固ジジイ役で名演技を見せている。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、11日、21日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。