ヒステリックな母とどう付き合うべきか…葛藤する女性にマムシさんが説く親孝行の形
身近な存在だけに、嫌な部分が激しく気になるのが「親の性格」である。我が強くてヒステリックな母親の態度を見て、心を痛める53歳の女性。黙っていられず注意するたびに、言い合いになってしまう。そんな母親とどう接すればいいのか。自分の葛藤とどう折り合いをつければいいのか。マムシさんが「ぶつからない心得」を説く。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「我が強い母親と言い合いになってしまう」
今年の夏も、コロナに振り回されているうちに終わっちゃったな。8月末なんて、いつもだったら「子どもたち、夏休みの宿題はちゃんとやったか」なんてノンキな話をしてるところなのに、二学期がちゃんと始まるのかどうかを心配しなきゃいけない。当たり前の日常がいかにありがたいか、いろんな場面で思い知る羽目になっちゃってるよね。
今回は、親との関係に悩んでいる53歳の会社員の女性からの相談。相手を大事に思うからこそ、こじれちゃうんだよな。
「我が強いヒステリックな母(76)が、母の連れ合い(73)にとても高圧的な態度をとります。それを見ていると、母のいちばん嫌な部分を見せつけられ、すごく情け無い嫌な気持ちになります。私の子ども(大学生と高校生)も母の態度に嫌な思いをしているようで、血の繋がった母よりも、母の連れ合いになついています。
母の態度や性格はもう変わらないでしょうが、これまでのことを含め、これ以上母を嫌いになるのも自分がしんどいと感じています。自分の気持ちを切り替えたいのですが、そういった母の言動を看過できない私は、思ったことを口に出してしまい、そのたびに言い合いになります。諦めてはいますが、ひとりっ子の私以外母に物申す者がおりません。母にはおかしいと思うことはおかしいと、私から言い続けようと思っています。あるいは、それはやめたほうがいいのでしょうか」
回答:「お母さんは貴重な反面教師だね。身をもって教えてくれてるよ」
言わずにいられないけど、言うとケンカになる。ケンカになれば、ムカムカして親を憎たらしく思うし、そんな自分も嫌になってしまう。悪循環だよね。どこでどう悪循環になっているのか、どうすれば流れを変えられるのか、順を追って考えたほうがよさそうだ。
自分でも言っているように、お母さんの態度や性格はもう変わらないよ。それなのに言わずにいられないのは、お母さんのためじゃなくて、もしかしたら自分のためなんじゃないかな。「自分が注意してあげないと」っていう理由をつけて、お母さんの悪いところを指摘することで、ある種の仕返しをしているとかね。
もちろん、お母さんと連れ合いを心配する気持ちはあるんだと思う。わざわざ「連れ合い」って書いてあるし血が繋がってないみたいだから、お父さんとは違うんだね。ふたりが仲良く暮らしてほしいと願っているあなたは、とってもやさしい人だよ。お母さんとも、もっと仲良くしたいと願っている。だけど、今はそういう気持ちがうまく出せていない。
何か言うたびにケンカになるのは、お母さんの性格だけじゃなくて、あなたの言い方にもトゲがあるんじゃないか。親子だから似たところがあるだろうし、親子だと相手に遠慮なくキツイ言葉をぶつけてしまうってこともある。相手が硬くて壊れやすい瀬戸物でこっちも瀬戸物だったら、そりゃ、ぶつかったらお互いに痛いし、パリンと割れちゃうよな。
相手が瀬戸物だったら、こっちはふかふかの布団にならないとね。ふわっと包み込んであげたら、衝突しないしパリンと割れることもない。「これは言ってあげたほうがいい」と思うことがあれば、布団になった上でやさしく諭してあげる。どんなふうに言ってあげると相手が聞く耳を持つか、それを考えるのも勉強だよ。
お母さんを見て腹が立つのは、自分の中にも共通する部分があると自覚しているからかもしれないな。だとしたら、お母さんは貴重な反面教師ですよ。自分が70代になって同じようなババアにならないために、大いに参考にさせてもらえばいい。どんな言い方をすれば怒らないかを考えるのも含めて、絶好の教材だよ。親はありがたいよね。身をもっていろんなことを子どもに教えてくれる。
あなたに限らず、親に腹を立てている人もいるだろう。でも、腹が立つことも勉強なんですよ。どうして自分は親のそういうところが嫌なのか、いいところもたくさんあるのに嫌なところばっかり見てしまうのはなぜなのか、親の過去の発言が許せないのはどうしてなのか。とことん考えることで人間性を豊かにしていく。それもまた親孝行だよ。
腹を立てたりケンカしたりできるのは、親が元気でいてくれるからだ。反面教師や教材にするばっかりじゃなくて、やさしい言葉や嬉しい言葉もたくさん言ってやってくれ。それは自分にとっても楽しいことのはずだからね。親はずっといるわけじゃないんだから、どうでもいいことで憎んだりケンカしたりしてる場合じゃないよ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。85歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!
YouTubeでスタートした「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、たちまち絶好調! 毎月1日、11日、21日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
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