朝すっきり起きられない人へ ”二度寝”の誘惑を断ち切る4つのポイント【医師監修】
朝、まどろみながら時計をチェックし、後5分だけ! と、再び眠りに落ちるときの幸福感はこたえられない。しかし、その二度寝が、脳疲労を起こし、肥満やうつ病、認知症などを引き起こすリスクがあると専門家は警鐘を鳴らす。そんな二度寝の誘惑を断ち切るためには、事前の準備が大事だという。4つのポイントを教えてもらった。
二度寝には大きなリスクが潜む
一瞬の快楽に、大きなリスクが潜む二度寝。しかし、知ったからといってすぐに一度で起床できるほど睡魔の威力は弱くない。
雨晴クリニック副院長の坪田聡(さとる)さんは「1回、20分以内」ならしてもいいとアドバイスする。
「起床時に分泌される『コルチゾール』は、幸福感をもたらす抗ストレス効果がある。加えて、二度寝をしているときの脳は『エンドルフィン』と呼ばれる高いリラックス作用のある脳内物質も分泌されます。しかしこれらの分泌は長くは続かない。最大限、効果を実感できるのが20分なのです」(坪田さん・以下同)
たとえどんなに夢見心地でも、20分を過ぎたら潔く布団から飛び出そう。もし、睡眠時間がいつもより短くても、20分以上の二度寝をするより、起きて活動を始めた方が体にいい。
「確かに、一般的に7時間前後の睡眠が最も健康的だといわれていますが、無理矢理眠ったところで質は上がらず、疲労回復効果もありません。睡眠は頑張って取れるものではないですし、寝ようとすればするほど、興奮して眠れなくなってしまう。
早めに目が覚めたときは、15分ほど布団の中でリラックスして過ごしてみるといい。自然と眠くなれば20分以内の二度寝をすればいいし、眠れないなら起きて活動を始めましょう。もし、それでも日中眠くなった場合は、20分以内の昼寝を推奨します」
眠くても一度はベッドから起き上がろう
肥満外来の医師で、睡眠指導も行う佐藤桂子さんも「一度は起きる」ことを強く推奨する。
「たとえ眠くても、一度起きて太陽の光をしっかり浴びて体内時計をリセットしましょう。また、朝寝坊したとしても、昼前には必ず起きること。人間の体のサイクルは起床後14時間で眠気を感じるようにできています。
つまり、翌日に備えて夜の0時に寝たいなら、質の高い睡眠を取るためには朝の10時には起きていた方がいい。疲れがたまって普段より多めに寝るときは、就寝の14時間前に起きることを意識してほしい」(佐藤さん)
二度寝を防ぐための4つのポイント
二度寝を防止するには、朝までぐっすり眠れる睡眠環境を整えることも大切だ。坪田さんは、寝室の温度や湿度を快適な状態に設定する重要性を指摘する。
「室温は28℃以下、湿度は50~60%が理想です。エアコンは26~28℃に設定して、蒸し暑ければ除湿機能を使うといいでしょう」(坪田さん・以下同)
「照明はつけずにできるだけ暗くして寝るようにしましょう。真っ暗だと不安で眠れないという人は、豆電球くらいの明るさで。テレビや蛍光灯をつけたままで寝るのはもってのほかです。睡眠に最適な音は40dB(デシベル)以下といわれており、目安は静かな図書館くらいです。古いエアコンであれば超えてしまうものもあるため、家電はできれば音が静かなものを選ぶといいでしょう」
坪田さんによれば、快眠できる枕の高さは6~10cmだという。寝起きをよくするためには、軽くストレッチするのもおすすめだ。血流が滞ると疲労感を感じやすくなり、起き抜けにだるさを感じて二度寝しやすくなる。
「就寝前に血流が滞りやすい膝の裏を刺激するといい。膝の屈伸を10~20秒程度するだけで充分です」(堀さん)
布団から動けずに眠りに落ちてしまうという人は、二度寝をしたくてもできない環境をつくるのも手だ。
「目覚まし時計やスマホを布団から少し離れた場所に置いて、起きるために動かなければいけない状況をつくり出すのも効果的です。スマホのアプリには、計算問題を解かないとアラームを解除できない目覚まし時計も。自分に合ったものを探してみて」(堀さん)
上記で説明したポイントをもう一度、おさらいしてみよう。
【1】エアコンは28℃以下
室温は26~28℃に保つことが望ましい。蒸し暑ければ除湿モードにして快適さを保つべし。湿度は50~60%が理想。
【2】照明は最高でも豆電球
真っ暗にして眠る、または電気をつけたい場合は豆電球を1つだけ。蛍光灯は眠りを妨げるため必ずオフに。音は静かな図書館くらいが目安の40dB以下を意識して。
【3】スマホと目覚まし時計は離れた場所に
二度寝を防ぐため、なるべく寝床から離れた場所に置くべし。また、スマホの光は自律神経を刺激し、安眠を妨げるため、眠る前は見ないこと。
【4】枕は高さで選ぶ
枕の高さは6~10cm。身長に合わせて、自分にフィットするものを選びたい。
湯船につかることも有効
「ぬるめのお湯に10分ほどつかって体を温めれば、深部体温がぐっと下がって深く眠ることができる。余裕がないときは洗面器にお湯を張り、足をつけるだけでもいい。この場合、お湯の温度は少し熱めにしてください」(佐藤さん)
二度寝をやめたことで、時間を有効活用できるようになったという人も多い。これまでは出社時間ギリギリに起きて電車に駆け込んでいた人が、朝に資格の勉強をするほどに時間と心の余裕ができたという声も。
二度寝の誘惑を断ち切れば、得られるものが多いと心得たい。
教えてくれた人
堀大輔さん/日本ショートスリーパー育成協会、坪田聡さん/雨晴クリニック副院長、佐藤桂子さん/肥満外来の医師。睡眠指導も行う。
イラスト/おしろゆうこ
※女性セブン2021年9月16日
https://josei7.com/
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