脇役のドラマも最高『緊急取調室』監物大二郎と渡辺鉄次(もつなべ)コンビ愛に打たれた6話
天海祐希主演の大人気シリーズ『緊急取調室』第4シーズン(テレビ朝日木曜夜9時〜)。第6話は、幼い子供を連れて逃走中の容疑者を真壁有希子(天海祐希)が説得する。その姿に、今季初回の桃井かおりを説得するシーンも重なって、再登場の予感も。いよいよ大詰めが近い? ドラマを愛するイラストレーター・オカヤイヅミが『キントリ』の魅力を絵とテキストで振り返ります(ネタバレを含みます)。
事件関係者のいない「緊急取調室」
今回のキントリは珍しく(たまにあるけど)進行中の事件の容疑者を説得する回だった。毎回変化球ぎみの取り調べを任されているキントリではあるが、犯人に自白を促すのとはまた趣が違う。なにしろ真壁(天海祐希)の相手は逃走中。目の前にいない本人と電話での交渉だし、もっと言えば半分は留守電に一方的にメッセージを吹き込んでいる状態である。これは取り調べの難易度が高そうだ。
逃げているのは諸星麻美(瀧内公美)。自宅から息子の翼(有山実俊)を誘拐された、と通報したのは、別居中の夫・諸星和彦(駿河太郎)だ。麻美は包丁を振り回して自分のもとで暮らす息子を連れ去り、制止しようとしたら手を刺されたという。麻美は交渉に当たった特殊犯捜査係の班長・鬼塚貞一(丸山智己)に電話口で、
「息子を返すくらいなら、一緒に死にます。本気です」
と言い放つ。
対して被害者であるはずの和彦は最初からどうにも不気味だ。麻美に刺されたという証言の再現シーンで発した「痛い!」がどうも空虚で怖い、怪しく見えた。
案の定、麻美の行方をつきとめる前に、和彦は同行した「もつなべコンビ」の目をくらまして早々にいなくなってしまう。つまり、事件関係者(疑わしい人物)はみんな「緊急取調室」からいなくなってしまう。
「ウェーイ」の輪に入れられて困惑
そして容疑者の代わり(?)にキントリにいるのは特殊班の鬼塚さんだ。名前も見た目も強面の鬼塚さんは、最初から縄張り意識満載で真壁を睨みつける。居心地もずっと悪そうで、真壁の熱のある交渉の仕方にもいちいち懐疑的だ。
真壁は麻美の携帯電話にとにかく留守電を残しまくり、少しずつ麻美の気持ちに寄り添っていく。説得が電話越しの今回、このドラマの肝であるところの「対話」の表情の変化がわかりづらいな、と思っていたら、麻美の心が開くにつれ、真壁の前に(ちょっと光った)麻美の幻影が現れる仕掛けには少し驚いた。
説得は少しずつ功を奏し、事件の詳細がだんだんあらわになっていく。和彦は息子の翼を虐待していた。麻美は、和彦の歪んだ執着から息子を守るために夫のもとから連れ出して逃げたのだ。その行方を追う手段として「麻美が翼を誘拐した」と和彦は通報したのだ。
しかし、事件はもうひと展開する。
諸星宅で和彦の恋人桐山小夜子(清瀬やえこ)の遺体が見つかったのだ。事件の性質が殺人へと変わったところで特殊犯捜査係もキントリも捜査から外されそうになる。だが、これに諾々と従うキントリではない。特殊犯捜査係と共に取調室に立てこもり、捜査を続行する側になる。
外れもののキントリ班はこういう時に懐が深い。一緒にいつもの気合入れ「ウェーイ」の輪に入れられて困惑する鬼塚さんもなんだか愛らしい。
「もつなべコンビ」のスピンオフが見たい
そして今回カッコ良かったのはなんといっても「もつなべコンビ」の「もつ」のほう、監物大二郎(鈴木浩介)だ。諸星和彦を逃すきっかけを作った「なべ」こと渡辺鉄次(速水もこみち)の失敗をかばい、管轄外の現場に駆けつけて麻美と翼を和彦から助ける。
しかし無許可で発砲したために異動の辞令が出てしまう。そこでキントリ班の面々に
「なべの事くれぐれもよろしくお願いします!」
と言う。コンビ愛がすごい。余談だけれど、脇役の日常が垣間見えるエピソードが好きなので「もつなべコンビ」のスピンオフがあったら是非観たい。
そして、今話の終盤では、すっかり私は「おもしろいおじさん」扱いしてしまっている北斗刑事部長(池田成志)と1話で登場した国土交通副大臣・宮越肇(大谷亮平)との関係が示唆されてきた。キントリ班の行方と北斗部長の思惑もそろそろ動きそうだ。収監中の大國塔子(桃井かおり)も最終話に向けてウォーミングアップを始めた頃だろうか。
イラストと文/オカヤイヅミ
漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。趣味は自炊。