天海祐希『緊急取調室』2話 大國(桃井)はもはや寂しいだけの人なのか…謎も持ち越し
天海祐希主演の大人気シリーズ『緊急取調室』第4シーズン(テレビ朝日木曜夜9時〜)。異例の前後編となった2話(後編)では、かつての革命戦士(桃井かおり)の悲しい潜伏生活が描かれた。政治に絡んだ事件の解決はいったん持ち越され、これはシリーズの最後に桃井再登場はありそう! ドラマを愛するイラストレーター・オカヤイヅミが期待を込めて『キントリ』の魅力を絵とテキストで振り返ります。
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爆弾は偽物だったはずなのに……
真壁有希子(天海祐希)の辞表と引き換えにキントリ班は1時間だけ大國塔子(桃井かおり)の取調べを許される。
事件には謎が多いが冒頭でキントリ班が打ち合わせをするので私たちの頭もきちんと整理される。
大國がハイジャックをした理由は本当に国土交通副大臣・宮越肇(大谷亮平)の汚職に憤ったからなのか?
大國が宮越の第一秘書・東修ニ(今井朋彦)に仕込んだという爆弾は現場にいた真壁が見てすぐ分かるほどにお粗末な偽物だったはずなのに警察は「処理中に爆発した」と発表したのはなぜなのか?
寂しさが煮詰まったアパートで
第2話で真壁が掘り下げたのは大國個人のほうだった。1話のハイジャックシーンで50年前の勇猛さを失っていないように見えた大國だが、潜伏生活の描写は悲しい。支援者の小暮しのぶ(円城寺あや)は「お友達が飼っているワンちゃん」にあげるためと言ってレストランから残飯を貰い受け、大國に渡していた。白髪混じりの長いおさげ姿で鳩に餌をやる大國は近所の住民からも不気味がられている。
50年前は危険人物としてマークしていた公安も、半世紀もたってしまえばもはや重要視はしていない。20代で世間から身を隠してしまった大國のアパートには寂しさが煮詰まっている。たった7分の演説で機動隊との衝突を鎮めたという達成感だけを抱えた大國は、かつての自分の「かっこよさ」を追い求め自家中毒になっているようにも見える。
名前を借りていた「小暮しのぶ」が自分の名前を使いたいと言いはじめたことでとうとう「大國塔子」は剥き出しになり、現実が眼前に迫る。小暮を殺し、東のハイジャックへの誘いに乗ったのは大國が今の自分に耐えきれなかったからかもしれない。どんなに足掻いても大國の時間は止まっている。
ドーナツを食べる春さんと菱やん
「かっこよく死にたい」という大國に真壁は返す。
「私は笑ったりしゃべったりドーナツを食べて美味しいと思うことが一番だと思う」
真壁は生きている側の人間だ。
そしてキントリ班だって余命3か月なわけだが余裕で差し入れのドーナツを食べる春さんと菱やん(小日向文世とでんでん)の可愛さよ。
しかし大國は黙秘を続ける。
ええ!疑惑、まだ解明されないのか。宮越は今のところまったくダメージを負ったように見えない。しかも予告ではどうやら次回は違う事件の話だ。これはおそらく最終回に引っ張るパターンのやつだ。会見で全部美談にしてみせたしれっとした宮越の顔を覚えておきつつ、次の事件を楽しみたい。
イラストと文/オカヤイヅミ
漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。趣味は自炊。