猫が母になつきません 第258話「まつ」
シロは雨の日には餌を食べに来ません。猫の毛は乾きにくいので濡れるのを嫌がる猫が多いそう。シロも雨の日は出かけないことにしているのでしょう。多い日には三度も食べに来るシロの姿が見えないのは私もさみしいのですが、さびはずっと窓辺に張り付いて目を凝らしています。そのうち止めるのも聞かず外に出て、シロがいつも餌を食べる石の上でじーっとしています。軒下なので雨はかかりませんが、冷えるだろうと思い家に入るように声をかけますが、さびはまるで声が聞こえていないかのように振り向きもしません。抱っこして無理やり家の中にいれても、また庭に出たがって何度も同じことの繰り返し。私が来ないとわかっているのだから、たぶんさびも今日は来ないとわかっていると思うのです。「シロはおなかすいてるんじゃないかな」そう思うと心配でいてもたってもいられない…強く降り続く雨をにらむようにじーっと見ているさびの後ろ姿からは、たとえ来なくても待ち続けるという強い意思が感じられました。それなのに翌日、はらぺこのシロがいつもより早い時間にごはんを食べに来た時には、さびはあんなに心配していたそぶりは微塵も見せず、いつものそっけない挨拶をするとさっさとどこかへ行ってしまうのでした。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。