更年期をセルフチェック 更年期障害にならない人もいる?予防法は?Q&A【医師監修】
40代後半からの女性のライフステージには、さまざまな変化が訪れます。ちょうどそんな時期に重なるのが「更年期」。体調の変化も相まって、女性にとっては暗くつらい時期なのでは…と考えがちです。でも、人生100年時代、「閉経したら女は終わり」なんて考えはもはやナンセンス! そのメカニズムを正しく理解して、最新治療やセルフケアを取り入れることで、更年期はぐっとラクに過ごせるのです! 意外と知らない更年期の基本について、専門医・宋美玄さん、関口由紀さんに教えてもらいました。
そもそも更年期とは…
閉経を挟んだ前後10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな症状の中で、ほかの病気に伴わないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く、日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」と言います(公益社団法人 日本産科婦人科学会HPより)。
更年期チェックリスト|こんな症状ありませんか?
<簡略更年期指数(SMI)女性用チェックシート>
各項目の症状の程度による点数の合計に基づいて自分の状態を簡易的に判断することができます。
1.顔がほてる
2.汗をかきやすい
3.腰や手足が冷えやすい
4.息切れ、動悸がする
5.寝つきが悪い、または眠りが浅い
6.怒りやすく、すぐイライラする
7.くよくよしたり、憂鬱になることがある
8.頭痛、めまい、吐き気がよくある
9.疲れやすい
10.肩こり、腰痛、手足の痛みがある
●0~25点
上手に更年期を過ごしています。これまでの生活習慣を続けて。
●26~50点
食事、運動、生活様式などに注意を払い、無理をしないように。
●51~65点
医師の診断を受け、生活改善、カウンセリング、薬物療法を受診した方がよい。
●66~80点
長期間(半年以上)の計画的な治療が必要。
●81~100点
各科の精密検査を受け、更年期障害のみである場合は専門医での長期的な対応が必要。
※参考:SMI簡略更年期指数
更年期の基本を知ろうQ&A
更年期世代もプレ世代も、よく理解しないまま、やみくもに更年期を恐れる人のなんと多いこと! そこでいまさら聞けない基礎知識を2人の専門医に教えてもらいました。
「閉経を迎えると、妊娠・出産の役割を終えた卵巣は女性ホルモン(エストロゲン)を出さなくなります。急激な女性ホルモンの減少で起こるさまざまな体調の変化、これが更年期の症状です」(丸の内の森 レディースクリニック 院長 宋美玄[そんみひょん]さん)
この体調変化に振り回され、やみくもに不安になるのは、更年期に関する知識不足も一因。
「正しい知識を得て対処すれば、そこまで恐れるものではないんですよ」(女性医療クリニック LUNAグループ 理事長 関口由紀さん)
【Q1】更年期かどうかはどうやって見極めるの?
【A】血液検査で「女性ホルモン値」がわかります。
「婦人科で血液検査を行い女性ホルモン値を調べ、問診と合わせて診断されます。E2(エストラジオール)の数値が下がり、FSH(卵胞刺激ホルモン)をたくさん出している状態が更年期です」(宋さん)
【Q2】更年期は誰にでも症状は出る?
【A】症状は女性全体の約50% 「更年期に不調が出る人は全体の約半分ですが、目立った症状がなくても女性ホルモンの減少は女性なら誰もが迎える問題。
それまであらゆる意味で女性の体を守ってくれていた女性ホルモンの減少で、肌や血管など、徐々に体に老化が訪れます」(宋さん)
【Q3】なぜ女性だけが更年期の症状に悩まされるの?
【A】女性ホルモンが急激に減少するためです。
「男性でも50才前後に更年期の不調を感じる人がいますが、環境などによる影響が大きく、女性の不調とは比べものになりません。
男性ホルモンが緩やかに減っていくのに比べて、女性ホルモンは急激に減っていき、最後にはなくなります。その急激なホルモンの減少に脳がついていけず、さまざまな不調へとつながっていくのです」(宋さん)
【Q4】更年期はどれくらい続くの?
【A】閉経をはさんだ前後約10年間。
「閉経をはさんだ前後の約10年を更年期といい、その時期に起こる何らかの心身トラブルを更年期症状(重い場合は更年期障害)といいます。
更年期の影響を体に受けるのは、長くても10年といわれています。この10年間を快適に過ごすためにも、不調があれば、気軽にクリニックなどに相談してみるとよいでしょう」(関口さん)
【Q5】更年期の症状は、何科を受診すればいいの?
【A】婦人科や、症状によっては女性泌尿器科へ。
「何か気になる症状があればまずは婦人科を受診し、ホルモン補充療法などで症状が治れば、『更年期の症状』となります。
もし治らなければ、ほかの病気を疑い専門医へ。更年期だからといって見過ごすと、病気を見逃すことになるので自己判断は禁物です。頻尿や尿もれが気になる場合は、女性泌尿器科を受診するのも◎」(宋さん)
【Q6】更年期障害になる人ならない人…症状の差の違いに理由があるの?
【A】女性ホルモンの減少のほか複合的な要因があります。
「卵巣機能が低下して女性ホルモンが激減するのは全員に共通する要因ですが、そこに仕事や家庭のストレス、親の介護や死別、子供が巣立つなどの環境要因と、生まれつきの体質や気質などが複合的に合わさって、症状に個人差が出ます」(宋さん)
【Q7】尿もれや頻尿が起きるのはなぜ?
【A】骨盤底筋が弱るのが原因。
「尿もれや頻尿のいちばんの原因は、妊娠・出産による骨盤周りの筋肉の損傷です。さらに女性ホルモンの低下による尿道粘膜の萎縮や、柔軟性の消失、加齢による筋肉量の減少によって起こります」(関口さん)
【Q8】20~30代でも更年期になるの?
【A】基本、なりません
「基本的に20~30代の更年期は考えられません。まれに生理不順から早期閉経という可能性もありますが、20~30代の不調はホルモンバランスの乱れによるものが多いので、婦人科で原因を見極めることが大切です」(宋さん)
【Q9】更年期が過ぎれば、症状はラクになる?
【A】なります!
「更年期を過ぎると女性ホルモンのアップダウンがなくなるので、体調がよくなる人がたくさんいます。その後もホルモン補充療法で最低限度の女性ホルモンを維持していれば、人生の後半も若々しく過ごせますよ」(関口さん)
【Q10】この頃、デリケートゾーンがかゆいんです…
【A】腟の乾燥によるものです。
「女性ホルモンが減少することで、腟萎縮が起き、腟内外のうるおいがなくなっていきます。そうなると腟は乾燥して傷つきやすくなり、かゆみ、におい、性交痛へとつながります。顔や髪の毛同様、毎日のセルフケアや専門医による治療が必要です」(関口さん)
【Q11】更年期障害にはどんな症状があるの?
【A】代表的なものはホットフラッシュ。
「代表的な症状は急に大量の汗をかくホットフラッシュ。それ以外でも、骨や脳細胞を守り、皮下脂肪を保ち、心臓や血管の病気にかかりにくくする、また感情の安定などを保ってくれていた女性ホルモンが一気に減ることで、あらゆる症状が出る可能性があります」(宋さん)
【Q12】更年期障害の予防法はあるの?
【A】基本的にはありませんが、なってから対処すれば大丈夫!
「更年期の症状が出てから対処するのが基本です。ただ、喫煙習慣は避ける、糖尿病にかからないようにすることや過度なダイエット、睡眠不足など、卵巣機能の低下につながるような生活習慣はなくすよう心がけることは大切です」(宋さん)
教えてくれた人
丸の内の森 レディースクリニック 院長・宋美玄(そんみひょん)さん
産婦人科専門医、医学博士、FMF認定超音波医。大阪大学医学部医学科卒業。周産期医療、女性医療に従事するかたわら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。
女性医療クリニック LUNAグループ 理事長 関口由紀さん
日本泌尿器科学会専門医・指導医ほか。山形大学医学部卒業。横浜市立大学医学部附属病院で女性泌尿器科外来を担当。尿もれなどの悩みを根本から治療する最新プログラムの提案を行う。
イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2021年6月3日号
https://josei7.com/