夫が“おひとりさま”暮らしになる前に「まずゴミ出しを頼む」のが大切な理由
女性のほうが長生きするのは事実だが、実は女性と男性の平均寿命の差は年々縮まっており、20年前の2001年は6.86才だったのが、2019年には6.04才に(厚生労働省「簡易生命表(令和元年))。今後も、平均寿命の差は小さくなることが予想され、「妻に先立たれる夫」が増えていくことも。もしも、妻に万が一のことがあったら――。夫が「おひとりさま」として生きていくために、今からやっておいたほうがいいこととは。
ご近所づきあいは何より大事
完璧でなくても、ある程度の身の回りのことができれば高齢になっても男性がひとりで生きていくことは不自由ない。しかし、ひとりでは解決できないこともある。それが「ご近所づきあい」だ。
シニア世代のサポート事業を手掛けるアリア代表・松本すみ子さんは話す。
「会社員だった男性の多くは、職場には仲のいい同僚がいて、みんなでゴルフへ行ったりしますが、地域社会に友達がいないケースが多い。そのため、地域に関心がなく、家から出ようとしない人が目立ちます」
お隣さんの顔を把握しておらず、あいさつが苦手な夫もいる。会社から離れ、「話し相手が妻だけ」という状態になると、妻に万一のことがあったとき相談する相手がいない。
「ご近所に『こんにちは』と言い合える人がいないと、途端に孤立します。
例えば、『隣に空き巣が入った』といったご近所ニュースや病院の評判などの情報は、ご近所づきあいがあれば自然と入ってくるものですが、なければ知り得ません。地域に知り合いをつくっておくことは、家事のスキル以前の大事なことなんです」(家事研究家・佐光紀子さん)
今から地域のサービスを活用する
夫が孤独死するのを避けるためにも、妻は、今から夫の存在を地域に浸透させておきたい。そのためには、地域のサービスをうまく活用しよう。
「自治体も、高齢者が自宅に引きこもることを懸念して、講座や習い事などを開催しているところが多い。妻が率先して、『あなた得意そうじゃない』と声をかけ、夫に情報提供してあげましょう。現代の“良妻”とは、夫の世話をなんでもやるのではなく、お尻を叩いてでも夫を外に出してくれる妻です」(松本さん)
ゴミ出しを頼む
生活していれば、必ず発生するのがゴミだ。所定の位置にゴミを出す行動には、いくつもの要素が含まれる。
「買い物が家事の『入り口』ならば、ゴミ出しは『出口』です。どこで何を買って、どこにしまい、いつどうやって捨てるかという家事の一連の流れを把握してもらいましょう。
さらに、ゴミ出しは、ご近所の人と顔を合わせる機会にもなって一石二鳥です。明日からでも、ゴミ出しは夫に頼みましょう。ついでに、ゴミの分別にも慣れてもらうと安心です」(佐光さん)
ゴミの出し方で揉めて、地域の中で孤立することは頻繁に起こり得る。妻が元気で、余裕のあるうちに覚えてもらいたい。できれば、予行演習もしておきたいところだ。
「コロナ禍が落ち着いたら、夫をほったらかして、1週間くらい友達と旅行へ行ってしまえばいい。否応なく意識してもらうには効果的な方法です」(松本さん)
妻は、自分が介護されるという可能性も忘れてはならない。みそ汁も作れない、ゴミ出しもできない夫に介護されるのは考えものだ。今日からかわいい夫には家事をさせよ。
教えてくれた人
シニア世代のサポート事業を手掛けるアリア代表・松本すみ子さん、家事研究家・佐光紀子さん、
※女性セブン2021年4月22日号