「お互いの悪口ばかり言う両親に困った…」毒蝮三太夫がお悩み解決!|新連載 マムちゃんの毒入り相談室【第2回】
さっそく大反響の「マムちゃんの毒入り相談室」。ジジイ&ババアの心の機微を誰よりも深く知る毒蝮三太夫さんが、親子の関係や高齢者とのコミュニケーションにまつわる悩みにズバリ答えます。今回のお悩みは「両親と会うと、それぞれが相手の悪口ばかり言う。どう返せばいいのか」。さて、マムシさんのアドバイスやいかに!?(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「両親がお互いに相手の悪口ばかり言う」
桜が満開だね。桜の花っていうのは、パッといっぺんに咲くのがいいよな。「ああ、春が来たんだ」と実感させてくれる。今年も大勢が集まってのお花見はできないけど、その分、じっくり桜を眺める人も多いんじゃないの。十分にコロナの感染防止対策をしながら、春の日々を楽しんでいこうじゃないか。
53歳、女性が、こういう相談を送ってくれた。
「父親は83歳、母親は80歳です。実家にはちょくちょく顔を出しているんですが、ふたりとも相手がいない場所では、待ち構えていたように相手の悪口を言い始めます。『まったく、あいつは気が利かない』とか『あんな勝手な人とは思わなかった』とか何とか。娘としては聞いていて気持ちのいいものではありません。どう返せばいいんでしょう?」
父親と母親のそれぞれが、相手の悪口を言いまくるわけか。会うたびにそんな調子じゃ、聞かされるほうはたまんないよな。かといって「そんな話、聞きたくない」って、はねつけるのも気の毒だ。両方が相手への不満を溜め込んだら、やがて爆発して大ゲンカになるかもしれない。いよいよ修復不可能な関係になっちゃったら、余計に面倒だしな。
ここは、クッションになってやるのがいいよ。父親には「そうよね、お父さんは気の毒よね。お母さんは昔からああいう人だけど、よく我慢してるわよね」って返して、母親には「お母さんは気の毒よね。よく我慢してるわよね」って返す。相手が言いたいことをいったん受け止めることで、相手は少し満足するはずだ。その上で、こんな言葉をかけてあげる。
「そんなに言いたいなら、面と向かって言い合ったら。それができないんなら、ホントは気になって愛してんじゃない」
「だけど、お母さん(お父さん)がいなかったら、私も生まれてないわけだし、夫婦でがんばったからこの家も建てられたわけよね。娘から見ると、お母さん(お父さん)にも、なかなかいいところがあると思うわよ」
そうやって、忘れている本心やお互いのいいところに気づかせてあげるのも大事だな。夫婦ゲンカは犬も食わないって言い方がある。本気になって受け止めたら、まったくバカげたものだ。あんな亭主殺してやりたい!って言ってたって、ホントに殺したって話は、俺のまわりでは聞いたことない。聞き流すのも親孝行なんだよ。
「自分が親よりも大人にならなきゃ」と思おう
親が歳を取ってきたら、こっちが親にならなきゃいけない。子どもにしてみたら、親はかつては自分を叱ったり諭したりしてくれた存在だから、自分より分別がつくと思ってる。親の前だと、いつまでも「子ども」のつもりで、頼ったり甘えたりしがちだしな。
だけど、そうじゃないんだ。こっちは歳を重ねて経験も積んで大人になったけど、高齢になった親はむしろ子どもに近づいてる。「そんな駄々っ子みたいなこと言って」とか「自分のことを棚に上げて、お母さん(お父さん)ばっかり責めるのはどうなの」なんて呆れることも増えてくるんだよな。
いつまでも「自分よりものがわかっている存在」っていうイメージのままだと、ガッカリするし腹も立ってくる。親の親になるって言うか、親よりも年上になったつもりで、こっちが大人の対応をしてやってくれ。ちょっと寂しいし、ずっと親を頼りにしたいのは山々だけど、自分が大人にならなきゃと思うほうが気が楽なんじゃないかな。
親がひとり暮らしの場合は、近所の人の悪口ばっかり言ってるなんて場合もある。ハタから見ると「どうして悪いところばかり見るかな。よく飽きないな」って不思議だけど、そういう人はそれがレクリエーションになってるんだろうな。「あの人に比べて、自分はちゃんとしている」ってことを言いたいのかもしれない。要は、寂しいわけだ。
聞かされて嫌気がさした子どもが「そんなこと言うもんじゃないわよ」なんて言ったら、親としてみたらなおさら寂しい気持ちになる。家の中で言っている分には誰にも迷惑はかからないから、言いたいだけ言わせて、受け止めてあげればいいよ。それより、何が満たされなくて悪口ばっかり言ってるのか、そこを探ってあげたいよね。
あんまり深刻に考えないで、「ウチの親は悪口が好きなんだな。元気で何よりだ」ぐらいに思っておくのが気が楽かもしれない。悪口が三度の飯より好きだって人は、いっぱいいるよ。いつも人をホメてばかりで悪口をいっさい言わないのも、なんか気持ち悪いじゃない。世の中にはいろんな人がいて、人間にもいろんな一面があるから面白いんじゃないかな。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。84歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
写真/政川慎治