50代の50%が白内障!? 若者にも増えている4つのタイプと手術法|専門医が解説
「最近、目がかすむ」「ぼやけて見えにくい」。そんな人は、白内障かもしれない。白内障50代の約50%の人が発症するといわれる。目の仕組みや白内障のタイプなど、20万件超えの白内障手術を行ってきた眼科医が解説する。
白内障の症状と目の仕組みを理解
白内障になると色の判別が苦手になる。本来は無色透明だった水晶体が濁ることで、黄色から茶褐色に変わり、サングラスをかけているような状態になり、黄色の文字や、黒と紺が組み合わさった色の区別がしにくくなります。また、コントラストがくっきりしない文字の判読も難しくなる。
まずは、目の仕組みと働きについて見ていこう。
●チン小帯:水晶体を吊っている糸のような組織
●視神経:網膜がとらえた映像情報を脳へ伝える神経
●網膜(もうまく):映像を焼きつけるフィルムにあたる
●硝子体(しょうしたい):眼球の形と内圧を保持するゼリー状の物質
●虹彩(こうさい):光の量を調節するカメラの絞りに相当。明るい所では小さく、暗い所では大きくなる
●水晶体:目の中のレンズとして働き、厚みを自由自在に変えることで光を屈折させて、ピントを合わせる
●角膜:目の表面にある透明な膜。光の取り入れ口。光はここで一度屈折する
●瞳孔:光の通り道
●毛様体(もうようたい):ゆるんだり、引っ張ったりすることでレンズの厚みを調節する筋肉
白内障とは…水晶体が濁って光が通りにくくなる
直径約9mm、厚さ4.5mm。ほとんどが水とたんぱく質でできている。透明な膜(嚢)で包まれ、中央の硬い部分を核、周囲のやわらかい部分を皮質という。
水晶体は、チン小帯という細かいクモの巣のような組織によって360度吊られ、毛様体で固定されている。毛様体の筋肉を使ってレンズの厚みを変化させることでピントを合わせる。
「白内障とは水晶体が濁って光が通りにくくなることで目が曇ってくる病気です。50代で50%、60代では80%、80代以上ではほぼ100%の人に起こる症状ですが、数年単位でゆっくりと進行していくため、老眼と勘違いして気づきにくいのが特徴です」
と言うのは、これまで20万件超の白内障手術を執刀した眼科医の赤星隆幸さん(「」内以下同)。
若い世代の白内障が増加傾向に
髪が白髪になるのと同じように、年を取れば誰もがなる老化現象だが、最近は若年性白内障が増加傾向にある、と赤星さんは注意を促す。
「白内障には4つのタイプがあり(下イラスト参照)、それぞれ水晶体の濁る部分と見え方が異なります。
若年性白内障はパソコンをよく使う30~40代の人に多く、水晶体を包む透明な嚢(のう)の前の部分の中央に強い濁りが生じます(前嚢下白内障)。明るい所で視界がまっ白になり、前から歩いてくる人の顔が判別できないというような症状があれば疑わしいでしょう」
また、花粉症やアトピー性皮膚炎などに伴って起こるのが後嚢下白内障。10代から20代に多くみられる。
「これらの白内障は進行も速いので、早期発見、早期治療が重要です」
皮質白内障と核白内障の原因は加齢によるものが大きい。
白内障の4つのタイプ
右側の□内は水晶体を正面から見た図で、濁り方の違いを示す。
■皮質白内障
周辺からくさび形に濁る。濁りが瞳孔に到達するまで、自覚症状がない。
■後嚢下(こうのうか)白内障
後嚢の膜の直下が磨りガラス上に濁る。初期からまぶしさを感じやすい。
■核白内障
核部分が硬くなり、茶色く濁る。黒と紺、灰色と黒の区別がつきにくい。
■前嚢下(ぜんのうか)白内障
前嚢の膜の直下にヒトデ形の濁りができる。明るい所では視界がまっ白に。
基本的な白内障手術の流れ
一般的に、白内障手術は点眼麻酔を使って行われる。
「手術の痛みはほとんどありませんが、手術中は医師の指示に従い、眼球を動かさないよう、注意が必要です。器具によってまぶたを開くので、まばたきをしても構いません。
手術では、眼球を切開し、濁っている水晶体(レンズ)を超音波で砕いて吸引し、レンズを包んでいる袋の中に人工の眼内レンズを移植します。こうした流れはどこの病院でも同じですが、眼球切開の際、どこにメスを入れるかという点は病院によって異なります」
角膜(黒目)を切る場合、出血はないが、強膜(白目)を切る場合は出血が生じる。
「血栓予防のために血液をサラサラにする薬を服用している人は血が止まりにくいので、強膜を切開する手術ではなく、角膜切開の方が安全です」
ちなみに、赤星さんが考案した「フェイコ・プレチョップ法」による手術だと、特殊な手術器具を使い、あらかじめ水晶体の核を4分割することで、超音波をかける時間を10分の1に短縮。片目につき約3~4分で手術を終わらせることができ、両目を同時に手術することも可能だ。
「白内障手術はその後の人生において視力を決める大切な手術です。手術法やどんな眼内レンズを入れるのか、医師と充分に話し合った上で、納得のいく最良の選択をしてください」
【1】点眼麻酔の後、眼球をメスで切る。
【2】水晶体の核を超音波で乳化(砕いて液状にすること)させて吸引する。
【3】空になった嚢の中に、特殊な器具を使って眼内レンズを移植する。
教えてくれた人
赤星隆幸さん/日本国内では「秋葉原白内障クリニック」をはじめ、海外でも年間1万件近くを執刀する白内障手術の専門医。著書に『白内障手術のすべて』(KADOKAWA)ほか。
取材・文/加藤みのり イラスト/ドナ
※女性セブン2021年3月25日号
https://josei7.com/