緑内障ほか失明につながる怖い眼の病気|早期発見チェックテスト
コロナ禍で在宅勤務をしている人の22%が「デジタル接触時間が1日当たり5時間以上増えた」という調査結果がある(ロート製薬が行った「コロナ禍における暮らしの変化」調査。10~50代の男女526人が回答。2020年6月12日公表)。会社に行かずとも仕事ができるのはデジタル化の恩恵だが、そこには新たな弊害も。
「長時間のスマホ使用で、目にさまざまな不調を抱える人が増えています」と、二本松眼科病院副院長の平松類さんは語る。ただでさえ目は加齢とともに衰え、病気にかかるリクスも高くなる。スマホなどで酷使し続けていると、ゆくゆくは失明…という可能性も否定できないからこそ――。
セルフ眼病診断で失明の可能性をチェック
コロナ禍で病院への通院を控えているあなたへ。自宅で簡単にできる眼病チェックを試しませんか?まずは【1】をチェック。1個でも当てはまるものがあったら、眼病の可能性が…。
【1】まずはチェック!
□夕方になると目が疲れる
□1日4時間以上、スマホやパソコンを見る
□歩行中につまずいたり、物にぶつかることが増えた
□新聞や本を読まなくなった
【2】図を目から30cm離し、片目ずつ眺めてください
次に以下の「マス目」を見てみよう。片目をつぶってマス目を目から30cm離し、目線を中央の白丸に固定したまま、その周りのマス目模様がどんなふうに見えるか覚えておきましょう。左右の目でそれぞれ行ってください。
失明につながる病気が発見できる
眼病になったら、見えづらくなるから気づくだろう――これは大きな勘違いだ。失明原因の第1位とされる緑内障は視力がよくてもなる。明確な異変を感じてからでは遅すぎ、スマホで目を酷使している人は気をつけて。早期発見の重要性を医師が語る。
先ほどの2つのテストからは、さまざまな眼病の可能性がわかる。特に【2】のテストは「アムスラーチャート」といい、日本人の失明原因の1位である緑内障はもちろん、2位の糖尿病網膜症、3位の網膜色素変性、4位の黄斑変性(※)などの可能性をチェックできる。
これを教えてくれたのは、前出の平松さんだ。
「もっと早いうちに診察していれば、こんなことにならなかったのに…と悔やまれる患者さんを大勢見てきました。深刻な病気ほど自覚症状が表れにくく、明確な異変を感じる頃には、症状が進行しているケースが多いのです」(平松さん・以下同)
そこで思いついたのが、実際の眼科検査で古くから使われてきたアムスラーチャートを患者のセルフチェック用に簡略化し、広めることだったという。このチャートでは、自覚症状が出る前に、病気の兆候を発見できるからだ。
実際、平松さんの父親もこのアムスラーチャートで、緑内障を発見できた1人だという。
「私がこのチャートについて解説している雑誌の記事を父(当時59才)が読んで、たまたまチェックしたことで早期に発見できました」
(※)若生里奈ほか「日本における視覚障害の原因と現状」『日本眼科学会雑誌』第118巻6号、2014年、P.495~501
端が欠けて見えたら緑内障の可能性も
緑内障は40才以上の20人に1人がなる病気で、視野が欠けるのが特徴だ。目の内側から外側に向かってかかる圧力(眼圧)が視神経に損傷を与えるため、最終的には失明してしまう。一度ダメージを受けた視神経が回復することはなく、初期の段階では症状がないため、発見が遅れやすいのも、恐ろしい病気といわれる所以(ゆえん)だ。
「しかも、緑内障と視力は関係がないため、視力がよかったのに失明してしまう、というケースもあります。もし、視力に問題はないのに、上図の右目のように、アムスラーチャートの端が欠けて見えたらかなり緑内障の症状が進行している可能性があります。すぐに眼科で診察を受けてください」
アムスラーチャートがはっきりと欠けて見えるのは、緑内障がかなり進んだケースで、早期~中期の緑内障の場合は、一部分がぼやけて見えることが多いという。
「私の父の場合も、一部分がぼやっとして見える、と言っていました」
つまりは、ぼやっと見えた時点で病院へ行き、本格的な検査を受けるべきなのだ。
ほかにも、アムスラーチャートの真ん中のあたりだけがぐにゃっとゆがんで見えたら、糖尿病網膜症の可能性が。ただしこれは、糖尿病の合併症なので、糖尿病でない場合は発症しない。中心部分のゆがみに加え、線がぼやけたり欠けて見えたら、黄斑変性のケースもある。これは50才以上に多い病気で、目の奥にある黄斑という組織が、加齢によってダメージを受け、視力が下がる病気だ。
ほかにも、周囲のマス目が消えて見えるなどの異常な見え方をしたら、網膜が弱くなる網膜色素変性かもしれない。これらの見え方はあくまでも一例に過ぎない。なんとなくでも、アムスラーチャートが見えづらいなどの違和感を覚えたら、眼科を受診することをおすすめする。
●緑内障と眼圧の関係
目にたまる水分量が多くなると、眼圧が上がる。眼圧が上がると視神経に圧力がかかり、障害が起きる。
スマホの長時間使用で近視が悪化し緑内障に
そしていま、緑内障などを悪化させる原因の1つとして問題視されているのが、スマホの長時間使用だ。
「スマホはテレビやパソコンよりもずっと小さな画面です。ということは、かなり目に近い距離で画面を見続けることになります。スマホを見る時間が長くなるほど、ピント調節を行う毛様体筋(もうようたいきん)の緊張状態も長く続き、疲弊してしまって、近視が進行してしまうのです」
近視が悪化すると、眼軸長(がんじくちょう)(角膜から網膜までの長さ)が伸びて、視神経に障害を与えやすくなるので、緑内障になるリスクが高まるのだという。
「これまで、強度近視(マイナス6.0D以上)の人は近視でない人の2.6倍の確率で緑内障になるとされ、強度近視の人には注意を促してきましたが、いまは中等度近視(マイナス3.0D以上マイナス6.0D未満)でも、緑内障になる可能性を視野に入れた方がいいと思っています」
ブルーライトも悪影響を与える
また、スマホの画面を見続けていると、ブルーライトが交感神経を刺激し、体にさまざまな影響を及ぼす。たとえば、寝つきが悪くなったり、深い眠りにつけず睡眠の質が下がる、手足が冷える、精神的に不安定になる、などだ。
「ブルーライトは、前述の黄斑変性に関連したり、光障害で目に不調を与える可能性も推察されます」
残念ながらスマホの長時間使用は目と体にとってメリットはないのである。
40代以上の人は、1年に1回、眼底検査を
スマホを長時間使っていなかったり、先ほどのアムスラーチャートで異常がないから安心、というわけでもない。40代以上の人や、血縁者に緑内障患者がいる人は、緑内障の発生リスクが高いため、1年に1回は眼科検診を受けることが重要だ。
「視野が欠けていることに気づかず、見えづらさの原因が目の疲れだと考える人が少なくありません。目を休めても症状が改善しない場合や、目の疲れが何日も続くような場合は、必ず眼科を受診してください。緑内障の検査には、眼球内の圧力を測る眼圧検査が有用ですが、この検査だけでは9割の緑内障を見逃すというデータがあります。必ず、眼底検査も受けることをおすすめします」
1回の検査で問題がなくても、これから先ずっと異常がないという保証はない。検診は毎年受け、月に1回など、こまめにセルフチェックを続けることが早期発見・早期治療につながるのだ。
教えてくれた人
平松類/医師/医学博士。愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。現在、昭和大学兼任講師ほか、二本松眼科病院、彩の国東大宮メディカルセンター、三友堂病院で眼科医として勤務。述べ10万人以上の高齢者と接し、その症状や悩みに精通している。NHK「あさイチ」、TBSテレビ「ジョブチューン」、フジテレビ「バイキング」、テレビ朝日「林修の今でしょ!講座」、テレビ東京「主治医が見つかる診療所」、TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」「日本経済新聞」「毎日新聞」「女性セブン」「週刊文春」「週刊現代」などメディ出演多数。著書に、著書に、『1日3分見るだけでぐんぐん目が良くなる!ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書 』(以上SB新書)、『緑内障の最新治療』(時事通信社)等がある。
取材・文/土田由佳 イラスト/いちほ
※女性セブン2021年2月18・25日号
https://josei7.com/
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