不安な心をセルフケアする方法|コロナ禍の心理的ストレスをチェック
Go Toキャンペーンが始まり、活動的になり始めていた矢先、第3波でまた外出自粛ムードに。出口が見えない不安が渦巻く中、7月以降、女性の自殺率も上昇している。心が折れてしまったり、不安が募る暗い報道に影響を受けないために、“心に効く”セルフケア法を専門家に聞きました。
コロナ禍でストレスや不安が増えている!?
閉塞感が続く中、前年比で減少が続いていた自殺者数が4か月連続で増加。特に女性の自殺率が増している。警察庁によれば、10月の自殺者数は速報値で2153人。これは前年同月比39.9%(614人)の増加となる。男女別では、女性が前年比82.6%増の851人と前年比の1.8倍になっている。
「不況時の自殺はこれまで男性が中心でしたが、最近の女性の自殺率の上昇は、過去になかった現象です」
と、臨床心理士の関屋裕希さんは顔を曇らせる。コロナ禍で雇用や将来の不安が増した人、育児で外出機会が減り、子供と2人だけで過ごす時間が増えて気持ちが塞ぎ込みがちな人、在宅ワークや外出自粛で孤立感が増した人…状況は違えど多くの人がストレスを抱えている。
「ストレスがたまると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまく行えなくなり、自律神経のバランスが崩れ、体調不良や高血圧、冠状動脈疾患、うつ病などのリスクを高める結果につながります。だからこそ、大切なのは感情にフタをしたり、自分だけが不安がっていると思わないことです。『いま不安なのは当たり前』と、自分の感情を受け入れて、ケアをしてみましょう」(関屋さん・以下同)
では、どんなセルフケアを始めればいいのだろうか?
「その前に、まずしてほしいのが自分のストレス度合いを知ること。ストレスといっても、その要因を知ることと、どのくらい心身に影響が出ているかを知ることが重要です。下の簡易チェックで、自分がどの程度ストレスの影響を受けているかがわかるので、早速行ってみてください」
ストレス度合いを簡易チェック
あなたの最近1か月の状態はどうですか?(当てはまる箇所に○をつけてください)
ほとんどなかった…1点、ときどきあった…2点、しばしばあった…3点、ほとんどいつもあった…4点
□ひどく疲れた
□へとへとだ
□だるい
□気が張り詰めている
□不安だ
□落ち着かない
□憂うつだ
□何をするのも面倒だ
□気が晴れない
□食欲がない
□よく眠れない
上記11項目は「職業性ストレス簡易調査票」のダイジェスト版で心理的ストレス反応の度合いを現状把握するためのチェックリストです。○印をつけた箇所の数字の合計点が23点以上=黄信号、31点以上=赤信号と判定。点数の高かった人は心理的ストレスのリスクが高く、早めに心療内科などを受診することをおすすめします。
ストレスケアのやり方
1:自分を客観視するために…不安やもやもやを3つに分けて書き出す
次にしてほしいのが、わからないことを書き出す作業だ。
「これは、モヤモヤしてパニックになりそうなときに最適です。紙とペンを用意して、思いつくままに次の3つに分けて書き出します」
【1】「すぐに解決できること」
【2】「すぐに解決できないけど、わかっていること」
【3】「自分では解決できない、わからないこと」
「モヤモヤしたり、不安になるのはなぜか?
それは、自分でよくわからないからです。だから、悩みを3つに分類し、自分では変えられない『本当にわからないこと』は、解決できると思えるまで一旦、棚に上げて放っておきましょう。そして、すぐにできる【1】と【2】から解決してしまいます」
この作業を行うことで、よくわからない不安を客観視できるため、冷静になれるのだ。
2:基本のストレスケア…漸進的筋弛緩法と呼吸法
見えなかった不安を客観視して整理できたら、次は基本的なストレスケアを行おう。
「おすすめは2つ。
・1つ目が漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)
・2つ目が呼吸法
です。体の緊張と緩和(かんわ)を繰り返した後、4秒かけて鼻から息を吸い、8秒かけて吐く呼吸法を行うと、より効果的です」
漸進的筋弛緩法は、椅子に座って体にグッと力を入れ、一気に力を抜くのを2~3回反復する(下イラスト参照)。
●漸進的筋弛緩法:「緊張!←→緩和!」でリラックスしよう!
【1】椅子に浅く座って手を握り、両肩を耳に近づけて脇を締め、目を閉じて全身に力を入れて5秒キープ。
【2】一気に力を抜き背もたれに寄りかかり、20秒ほど力が抜ける感覚を味わう(2~3回繰り返す)。
「体は緊張させてから緩める方がリラックスできるため、イライラや心を落ち着かせるのにも役に立ちます」
日常的にストレス発散するのも大切だ。
「ストレスをため込むとうつ病になるリスクが高まり、発症すると死の衝動に駆られることもある。それを防ぐためには、楽しいことや達成感を得られる行動を取ることを心がけるといいですね」
家の片づけや運動、趣味、音楽、散歩などでプチ達成感や楽しさが感じられることなら何でもOKだ。
また、過去に自分がストレスを感じたときに、うまく解消した経験があれば、それを思い出し、同じように行動してみるのもいいという。
「閉塞感が漂うコロナ禍では、笑う・泣く・声を出す・歌うといった“カタルシス効果”の高い“発散系”の行動がおすすめです。そして、身近な人との日々のコミュニケーションを心がけ、人と接する感覚を忘れないように努めましょう」
ストレスを感じたら、ひとりで解決しようとせず、電話や動画通話などで誰かと話してみるのもおすすめだ。
教えてくれた人
心理学博士・関屋裕希さん/臨床心理士。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)でストレスマネジメントの開発も行う。東京大学大学院医学系研究科客員研究員。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)。
取材・文/北武司 イラスト/坂木浩子(ぽるか)
※女性セブン2020年12月10日
https://josei7.com/
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