兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし「第40回 確定申告に必須のアレを入手する」
若年性認知症を患う兄と2人暮らしをするライターのツガエマナミコさんが、日々の暮らしを綴る連載エッセイ。
今回は、確定申告にまつわるあれこれを振り返るエピソード。昨年は、家の住み替え、兄の退職などのライフイベントがあったツガエ家。兄の分の確定申告も必要なのか?と色々調べたツガエさんは、大きな壁にぶち当たり…。
「明るく、時にシュールに」、でも前向きに認知症を考えます。
確定申告は兄もしなければいけないのか?
2019年は、兄が失業給付金をいただく身となった年であり、今年は兄も確定申告の対象者となりました。昨年はマンションの売り買いをした年でもありまして、例年とは違う確定申告が折り重なった春でございます。
なんだかんだ申しましてもサラリーマンはこういう煩わしいことを会社が全部やってくださる点がうらやましい。わたくしはいろいろな能力に問題がありますけれども、会計能力が特別欠落しておりまして、欲深いわりに面倒くさがりのどんぶり勘定でございます。その上「明日でいいことは今日やらない」をモットーにしておりますゆえ、もう何十年も期日までに確定申告を終えたことがございません。
そもそも期日を守らねばならないのは、納税しなければいけないケースであってわたくしのように還付金請求しかしない底辺のフリーライターには3月15日という期日は一生関係のないこと。そう、「還付金の請求はいつでも大丈夫」がフリーランスの常識で、5年は遡って請求できると聞いています。
今回も3月半ばになって、花粉症による止まることを知らない鼻水と目の痒みの襲来とともに重たい腰を持ち上げました。
サラリーマンだった兄が、途中で退社して現在ハローワーク通いという状態で確定申告は必要なのか?ということからしてわからないのが正直なところでございます。
困ったときのネット検索で兄のケースを調べましたら「再就職していない場合は、確定申告が必要です」とあり、「源泉徴収票が必須」と書いてありました。
急に冷や汗が吹き出したのは、その後の文章でした。「源泉徴収票は会社が退職後1か月以内に退職者に渡すもの」と書いてあったのでさぁ大変。
つまり会社はとっくに兄に源泉徴収票を発行していると思われ、「もらったか?」となって自分の記憶がグルグル回り出しました。
“昨年末、離職票が届いたときの封筒に入っていた?”
“それとも会社から届いた兄の私物を詰め込んだ段ボールの中に入っていた? ”
“いや「大事なものだから」と、どこかにしまったんだっけ? ”
「え?どこに入れたかな?思い出せない…。ない、ない、ない、どこにもな~い!」
と、そんな感じで焦りまくり、いよいよわたくしも認知症の幕開け…と天を仰ぎました。残る手段はただ一つ、社長様にお電話でございます。
じつは、兄が休職扱いからズルズルと退職となり、未だ最後のご挨拶にも行っていない状況。「どの面下げて」と自己ツッコミしながら、“離職票届きました”ぶりのお電話をさせていただきました。
お久しい社長様の声に「ご挨拶にも行けないままで本当に申し訳ございませんっ!」と開口一番平謝りをして、源泉徴収票のことを恐る恐る切り出しました。すると
「ああ、そうですよね。会計士に確認して折り返します」とやさしく言われ、数時間後「こちらがうっかりしていました。さっそく取り寄せてお送りします」というお返事をいただくことができました。
こちらが紛失したのではないかとヒヤヒヤしていたので安堵し、ほっとしたついでに月末には会社にご挨拶に行くことをお約束して電話を切りました。
この安堵の勢いに乗って、マンションの売り買いをした場合は、どんな申告をすればいいのかを聞こうと税務署に電話してみました。この時期、混んでいるはずの税務署になぜか一発で繋がり、思いがけない正解にたどり着きました。
つづく…。(次回は5月14日公開予定)
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性57才。両親と独身の兄妹が、5年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現61才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。ハローワーク、病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ