米大統領選の候補者が高齢化する不思議 3つの謎解き
米大統領選の候補者が「高齢者ばかり」と話題だ。現在トップを走るバイデン氏は77才、サンダース氏は78才。そしてトランプ氏は73才。誰が当選しても米史上最高齢”の大統領が誕生する。その背景を在米ジャーナリストが明かす。
米大統領選候補者が高齢者ばかりの謎
米大統領選で共和党のドナルド・トランプ大統領(73才)の打倒を目指す民主党の候補者選びは、今月3日に全米14州・1地域で予備選・党員集会が開かれた「スーパーチューズデー」でひとつのヤマを越え、ジョー・バイデン前副大統領(77才)とバーニー・サンダース上院議員(78才)の両氏による一騎打ちの様相を呈している。
今回の大統領選では、70才を超える高齢の候補者が目立っている。バイデン氏、サンダースの他、すでに撤退した候補者を見渡しても、マイク・ブルームバーグ元ニューヨーク市長市長(78才)、エリザベス・ウォーレン上院議員(70才)などが注目を集めていた。
2017年1月20日にトランプ大統領が70才220日で大統領に就任して最高齢記録を塗り替えるまで、歴代大統領の中で就任時の最高齢は40代大統領のロナルド・レーガンの69才と349日だった。
なお、トランプ以前の歴代大統領の就任時の平均年齢は56才134日。42代のウィリアム・クリントンが46才154日、43代のジョージ・W・ブッシュが54才198日、44代のバラク・オバマが47才169日と若返りに向かっていたように見えただけに、ここ最近の高齢化は不思議に映る。
米大統領選 高齢化の謎解き1「老人支配国家」
その背景について、米パシフィック・リサーチ・インスティチュート所長を務める在米ジャーナリストの高濱賛(たかはま・たとう)氏が考察する。
「2年近く続く長丁場の大統領選を戦うには、『財力』『組織力』『体力』が不可欠です。3拍子を揃えるのは働き盛りの30~40代ではなかなか難しく、立候補できるのは必然的に高齢者が多くなります。
また、米人口の3分の1は55歳以上で、彼らが米国の富の3分の2を有しています。米国はまさに『老人支配国家』であるといえます。投票所に行くのは中高年層の方が若年層に比べて多く、有権者は概して自分の年齢に近い候補者に投票する傾向がある。これは研究機関のデータによって証明されていることです」
米大統領選 高齢化の謎解き2「ネクタイの色」
米国では年齢や性的思考、人種などについて公の場で攻撃したり、騒ぎ立てたりすることは『ポリティカル・コレクトネス』(=禁句)とされているため、米メディアも大統領選候補者たちの年齢について取り上げることは少ない。だがアメリカ国内でも、内心では「じいさん、ばあさんばかりだな」と思っている人が少なくないという。
民主党の大統領候補に躍り出たバイデン氏やサンダース氏は、高齢者だけでなく、女性や若年層からも人気を集めている。
「かつて中曽根康弘・元首相は『女性の大半はネクタイの色しか見ていない』というような発言をして批判を浴びましたが、私はある程度はそういう面もあるのではないかと思っています。バイデン氏もサンダース氏も、公開討論会などではパリッとしたスーツに原色のカラフルなネクタイを合わせていて、とても後期高齢者には見えません。
米大統領選 高齢化の謎解き3「少年ぽさ」
また人間的にも、頑固な中にもどこか少年っぽさが見え隠れしている。これらはトランプ大統領にも言えることですが、こういった年齢に反したチャーミングな部分が、女性や若年層からも支持されているのではないかと思います」
トランプ氏が再選を果たすにしても、民主党のバイデン氏かサンダース氏が共和党を打ち破るにしても、このままいけば来年1月には“米史上最高齢”の大統領が誕生しそうだ。