新型コロナ介護施設職員にも感染者が!問われる施設の感染症対策
感染が拡大する新型コロナウイルスはもちろんのこと、インフルエンザや食中毒など、免疫力が低下した高齢の入居者にとってはウイルスや細菌感染が命取りになることが少なくない。
高齢者は感染したら重篤化のリスク
2月下旬、都内の介護老人保健施設で送迎車の運転を担当する60代男性職員の新型コロナウイルス感染が確認された。
食事や入浴、排泄介助など、高齢者施設では介護スタッフと利用者の距離が近く、感染のリスクは日常のあらゆる場所と場面に存在する。
新型コロナの流行を受け、家族を含め面会者の入館を全面的に中止する施設も増えてきた。
都内に複数の介護・福祉施設を運営する社会福祉法人・善光会(東京都大田区)では1月末に、「面会などによる来館を原則禁止」とした。
介護以外の業務を担うスタッフも外部との接触を避けるため、業務にテレビ電話(スカイプなど)を使うほどの徹底ぶりだ。今回の取材もスカイプを介して行なわれた。
ただ当然ながら、介護スタッフと利用者の接触をゼロにすることは不可能だ。
コロナウイルスだけではなく、介護付有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの施設では、インフルエンザやノロウイルス、疥癬、結核など様々な感染症を原因とした重篤な事例が毎年のように報告されている。
高齢者医療に詳しい国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹医師は次のように指摘する。
「老人ホームには複数の合併症を持った“ハイリスク高齢者”が多く生活しています。そうした方々は感染すれば重篤化する確率も高い。施設側の感染症対策がどれだけ行き届いているのか、入居者側も知っておくことが重要です」
終の棲家となるかもしれない介護施設を選ぶ際、重視されるのは費用のほか、ケアやリハビリの充実度、食事の内容などだった。
だが、これからは感染症対策の充実度も大きな要素のひとつに加えなければならない。
取材・文/末並俊司
介護ジャーナリスト。『週刊ポスト』を中心に活動する。2015年に母、16年に父が要介護状態となり、姉夫婦と協力して両親を自宅にて介護。また平行して16年後半に介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を修了。その後17年に母、18年に父を自宅にて看取る。現在は東京都板橋区にあるグループホームにて月に2回のボランティア活動を行っている。
※週刊ポスト2020年3月13日号