キレる高齢者とうまく付き合うには|アンガーマネジメント実例
「アンガーマネジメント」を知っていればよかったのに…。暴走する高齢者によるトラブルは芸能界でもあとを絶たない。
埼玉スーパーアリーナでの公演をドタキャンした沢田研二ことジュリー。会場を一杯にできなかったことに激怒したジュリーも70才を超え、キレる老人ともいわれた。また、“暴走老人”という言葉も広く知られるようになってきた。そんなキレやすい高齢者と上手に付き合うには今話題の「アンガーマネジメント」が有効らしい。
アンガーマネジメントで介護のストレス軽減
「高齢者がキレやすくなるには加齢による原因があります」と、『高齢者に『キレない技術』』(小学館刊)の著書がある、アンガーマネジメントコンサルタントの川上淳子さんは語る。
川上さんによると、老化によって感情を司る脳の前頭野が縮小し、感情が抑制しにくくなり、キレる言動が顕著になってくるという。「アンガーマネジメント」を知ることで、「親をはじめ、身近な高齢者と付き合いやすくなる」と川上さんは続ける。
特に高齢の親の介護をしている人は、「アンガーマネジメント」を身に付けることで日々のストレスが軽減するという。
アンガーマネジメントとは? 実例で理解しよう
「アンガーマネジメント」とは、1970代にアメリカで生まれた怒りをコントロールする心理トレーニングのこと。怒りの原因や性質、怒りの感情がわき上がるメカニズムを知ることで、感情を制御することができるというものだ。
キレやすい高齢者に怒りを感じると人におすすめのイライラ対処法「アンガーマネジメント」について、具体的な事例に沿って紹介する。
【キレる高齢者へのアンガーマネジメント・事例】
~運転免許証を返納しない頑固な父の場合~
「高齢者だからってなぜ運転できないんだ。
オレは死んでも運転免許を手放さん」(80才男性)
川上さんによると、何度忠告しても運転免許証を返納しない高齢者には、「アンガーマネジメント」の手法の中でも、「ソリューション・フォーカス・アプローチ」が有効。これは、過去ではなく、未来に向かって努力することを大事にするという会話術だ。
運転免許の返納を渋る高齢者と上手にコミュニケーションするための事例を紹介する。
●父がキレる【NG事例】
息子:高齢者の事故のニュース、見たでしょ。オヤジはまだ運転してるの?
父親:ああ。病院に行かなくちゃならんしな。車がないといろいろと困るんだよ。
息子:そうじゃなくてさ、いつまでも運転していると事故るよ。父さん、もう80でしょ!
父親:80だから運転しちゃダメな法律でもあんのか!
息子:ないけどさ、この頃、みんな、運転免許証、自主返納してる。
父親:オレは死んでも運転免許証を手放さねえぞ。
息子:まったく。頑固オヤジが! こんなに心配してるのに。
●こう言い換えよう!【OK事例】
息子:父さん、久しぶり。最近、体調はどう?
父親:ああ、健診で血圧が高くて、血液検査、ひっかかってさ。貧血気味だ。
息子:どこの病院に行ってるの?
父親:〇〇病院
息子:遠いな。オレ、高校生の頃、バスあったけど、今、どうなっているの?
父親:バスは今ないよ。電車もあるが、家から駅までが大変さ。車でねえと行かんね
息子:そうか大変だな。高齢者の事故のニュース、多いから。父さん、運転してて困ったこととか、ぶつかりそうでヒヤっとしたとか、なかった?
父親:そういえば、この頃塀にこすって、車傷つけてるな
息子:そうか、注意しないとな。これからも運転する? どうする?
父親:ニュース見ると、確かに人ごととは思えんが、悩ましいな。
息子:父さん、運転免許証を自主返納してくれると安心だし、うれしいよ。警視庁のホームページで調べたら指定タクシー業者の運賃が10%割り引きになるって。他にも特典があるけど、県ごとに違うから詳しく調べてみようか?
父親:近所の鈴木さんも返納したみたいだしな。話を聞きに行ってみるか
NG事例では、「そうじゃなくて」といった否定的な言葉や、「もう80」など年寄りだと決めつける言葉が。「みんな返納している」と言われても、高齢者にとって誰のことなのかわからないうえ、一方的な言い方は、相手の怒りを招く。
OK事例のように、まずは父親の体調や地域の公共交通機関の現状を聞くことからはじめるのが正解。次に、運転での不安や困っていることを聞き、今後どうしたいのか本人の希望を言えるような言葉がけを。さらに、運転免許証を自主返納したときのメリットを伝えるとよい。
怒りの感情は6秒で収まる
カッとなったときの怒りの感情のピークは長くて6秒間といわれる。イラっとしたら6秒数える「カウントバック」をはじめ、前述の「ソリューション・フォーカス・アプローチ」のほかに、頭を真っ白にする「ストップシンキング」など、アンガーマネジメントの手法を覚えておくことで、キレやすい高齢者とのコミュニケーションや介護のストレスはぐっと軽減できる。
介護の日常で役立つアンガーマネジメントの手法は、川上さんの著書『高齢者に『キレない』技術』(小学館刊)で詳しく解説されている。家庭での事例のほか、介護や看護の現場でも使える「アンガーマネジメント」の手法なども取り上げている。
構成・文/介護ポストセブン編集部
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