個別対応に力を入れたケアに取り組む介護付有料老人ホーム【まとめ】
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
介護施設を探す際、入居者一人ひとりに合わせた個別ケアをしてくれるかどうかを重視する人も多いのではないだろうか。しかし、個別ケアといっても、その中身は施設によってそれぞれ。そこで今回は、様々な観点から個別ケアに取り組んでいる施設を紹介する。
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コミュニケーションを重視し個別ケアに取り組む介護付有料老人ホーム「もみの樹・杉並」
高齢者向け施設は個室であっても集団生活なので、どうしても一律の対応にならざるを得ない面がある。そうした課題に取り組むために、もみの樹・杉並では入居者の意向に沿った個別ケアを行うためのプロジェクトを立ち上げているという。
「日々のケアには時間をかけています。自宅で過ごしているように、というのもコンセプトの一つなのでそこは大事にしています」(大和ライフサポート株式会社 執行役員・館長 鈴木利香さん、以下「」は同)
「オンリーワンプロジェクト」という入居者一人ひとりの希望を叶える企画を実施していて、「もう1回結婚式を挙げたい」「車椅子生活で諦めていたお墓参りに行きたい」「孫の結婚式に出席したい」といったことを実現してきたという。
「突発的な要望に応えるのではなく、事前に計画を立てて実施しています。車椅子で生活をされている方が、ご自宅に戻ってパソコンを前にし、生き生きとした表情が表れたという事例もあります」
ほかにも好きな歌手のコンサートにスタッフと一緒に行った話など、鈴木さんからはいくつもエピソードが出てくる。オンリーワンプロジェクトのポイントは、一人ひとりの希望を叶えるために丁寧に話を聞くことにあるそうだ。
もみの樹・杉並では、入居者にゆったりとした時間を過ごしてもらうことを重視している。そのために国の基準の2倍となる入居者1.5人に対し、スタッフ1人という手厚い配置をしている。夜間帯は看護スタッフを含めて6人体制。それにより、入居者が就寝時、そして起床時に慌ただしく準備をする必要はなく、それぞれのペースで過ごすことが可能になっているという。看護スタッフは24時間常駐。館内の清掃、洗濯は専門のスタッフを配置して、介護、看護スタッフがそれぞれの本来の仕事に専念できるようにしているそうだ。
「家族がそばでするような個別の対応をしたいです。施設全体でいろいろな企画を入居者向けにすることはもちろん大切ですが、好き嫌いがありますし、やはり個別で寄り添って差し上げたいです。とにかく個別対応ですね」
→コミュニケーションを重視し個別ケアに取り組む介護付有料老人ホーム<前編>
→コミュニケーションを重視し個別ケアに取り組む介護付有料老人ホーム<後編>
一人ひとりに担当が付きチームでケアにあたる介護付有料老人ホーム「アイムス蓮根」
看護師が24時間常駐し、看取りまで対応可能なアイムス蓮根。こちらでは、入居者一人ひとりに担当を付け、さらにチーム制にしているという。
「入居者様はたくさんいらっしゃいますが、一人ひとりに目を向けることが大事なことだと思っています。一人ひとりに受け持ちのスタッフを決めて、その方の希望や思いに対応できるようなシステムにしています」(アイムス蓮根施設長の山田亮介さん)
もちろん受け持ちのスタッフが24時間365日、1人でずっと介護ができるわけではない。そのため担当スタッフを中心としたチーム制をとっているという。グループの病院で行っている「固定チームナーシング」を介護にも応用しているそうだ。固定したメンバーによるチームで対応することによって、入居者との信頼関係が生まれやすく、質の高い介護が提供できるという。
介護主任の増田大輔さんによると、入居者の生きがいをサポートすることが自身の役割だという。それぞれの理由によってアイムス蓮根で生活をすることになった入居者の人生を、適切な距離感で手助けするために担当性は有効とのこと。
「担当制にすることで、一人ひとりのご入居者様の細かいニーズが把握しやすくなり、スタッフが責任感を持って仕事をすることができます。また、チームで担当しているので、継続性を持って介護をすることができます。例えば、職員が何らかの理由でしばらく離れたとしても、チームがあるのでどのような介護をすればいいのか分からなくなることはありません」(増田さん)
→一人ひとりに担当が付きチームでケアにあたる介護付有料老人ホーム<前編>
→一人ひとりに担当が付きチームでケアにあたる介護付有料老人ホーム<後編>
手厚い「個別ケア」を実現した介護付有料老人ホーム「チャームプレミア目白お留山」
2017年2月1日にオープンした「チャームプレミア目白お留山(めじろおとめやま)」。こちらの施設を作る際、今まで運営してきた施設の入居者から出てきた要望を精査するところから始めたという。様々な声を聞いていく中で出てきた答えが「個別ケア」。
「要望から導き出した個別ケアを実現するために4つのサービスをご提供します。傾聴タイム、目白倶楽部という機能訓練、プレミア食、目白を楽しむ日というアクティビティです」(ホーム長の伊田幸太さん 以下「」は伊田さん)
「傾聴タイム」では、個別で週1回コンシェルジュとの会話を楽しめる。会話を望まない場合は、近隣への散歩などの個別の時間として利用することもでき、もちろん強制されるものではない。入居直後で不安感を抱えている方や、本当は聞きたいことがあるがなかなか言い出しにくいと感じている方に特に効果があるそうだ。
「目白を楽しむ日」と名付けられたサービスでは、一人ひとりにアクティビティプランを作成し、1日に1つ以上のアクティビティに参加できるようにするという。アクティビティが1日に1つしかない場合、それに興味がなければその日に参加できるものがなくなってしまい、自分ひとりで時間を過ごすことになる。実際、費用面からやむを得ない…としている高齢者向け施設も多いが、チャームプレミア目白お留山では、1日に複数のアクティビティが用意されているので、好みのものを見つけやすい。
「個別ケアを実践するには、何よりも一人ひとりの状態や個人史をしっかり把握することが大切です。人はそれぞれの価値観を持っていますから、相手に合わせて対応を変えるのは当然です。個別ケアは一人ひとりの問題解決のためにあります。心に寄り添い、声がけをします。結果としてその方に合ったアクティビティを用意できるので、部屋に閉じこもらないようになります」
入浴にも個別ケアの考えが取り入れられている。個々の状態に合わせて対応が可能で、プライバシー、衛生面も確保されている。一人ひとりの入浴が終わる度に、お湯を全て入れ替えるといった配慮もなされているそうだ。
→手厚い「個別ケア」を実現した介護付有料老人ホーム<前編>
→手厚い「個別ケア」を実現した介護付有料老人ホーム<後編>
いかがだっただろうか。それぞれの施設で取り組んでいる個別ケア。集団生活の中でも一人ひとりの要望に応えてくれるのは心強い。個別ケアといってもその範囲は広いので、自分の希望に合った対応をしてくれるところを探したい。
撮影/津野貴生 取材・文/ヤムラコウジ
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。