元イタリアンの料理人が腕をふるう介護付有料老人ホーム<前編>
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
今回紹介するのは、介護付有料老人ホームの「アルタクラッセ二子玉川」だ。
アルタクラッセ二子玉川
人気の街として人を引き付ける二子玉川。住宅地として、ショッピングエリアとして、仕事場として多くの人が集まる。その二子玉川に「アルタクラッセ二子玉川」がある。「アルタクラッセ」とはイタリア語で「最高クラス」という意味だ。1983年に訪問入浴サービスとして創業し、30年以上にわたって訪問介護などの在宅介護サービスを中心に事業を拡大している「セントケア・ホールディング」がその長い歴史と豊かな経験を活かしてつくった。
このアルタクラッセ二子玉川は、特に食事に力を入れている。テーマは「お客様を内側から強くする食事」だという。プロフェッショナルな技術と母親の心がとけあったような、あたたかく、優しく、飽きのこないおいしさを理想とするセントケアの食事の工夫について、管理栄養士の吉野栄里子さんに話を聞いた。
「お客様にどれだけ食べてもらえるかを大事にしています。あまり食べられなくなってきた時にも、以前お好きだったものをお出しすると召し上がっていただけたりしますよ。おひとりおひとりの情報、状態を毎日気にかけています」(吉野さん 以下「」は同)
吉野さんはイタリアンレストランで働いていた時、まかない作りが得意だったそうだ。そちらのほうが性に合っていると感じていたという。まかない作りには生活を支えている実感があり、従業員のそれぞれの好みを把握するまで熱中したとのこと。その時の経験が今の高齢者向け施設での仕事に役立っているのだ。
「食事ができなくて何日かたつと、体力が落ちて食べられなくなってしまいます。そうなる前に、ご自分の口から何か召し上がっていただけるように工夫しています」
個々の入居者に合わせた食事を工夫
高齢者にとっての食事は生活の質(QOL:Quality Of Life)の維持・向上という点でも重要だ。口から食事ができなくなったことをきっかけに体力を落としてしまうことも多い。アルタクラッセ二子玉川では、入居者の家族とスタッフが集まって話す機会を年に2回作っている。食事についてもそこで情報共有をし、入居者の好みや状態に合わせる努力を続けているという。
日々の基本的なメニューは決まっているが、入居者の状態に合わせて柔軟に差し替えているとのこと。例えば、バナナジュースを自宅で毎朝飲むのが日課だった入居者に個別で作って出したり…。食事をあまり受け付けなくなってきても、バナナジュースは必ず飲んでいて、栄養面でもプラスになったという。他にも食が細くなってきた入居者に好物のあんこをパンに載せて出したところ、ぺろりと平らげるなど、少しの工夫で全く違ってくるそうだ。
毎日毎食、管理栄養士をはじめ食事を作ったスタッフが、入居者の食事状況を確認しているという。入居者と会話もしており、食材の硬さや味付けのフィードバックをもらっているそうだ。さらに調理に携わっているスタッフ同士で「これぐらいの大きさにしたら食べられる」など入居者の情報共有をしている。