《”ミスター血糖値”が解説》 ハードな運動は不要! 「食後15分・大きな筋肉を動かす」だけで血糖値急上昇を抑える簡単体操
高血糖や糖尿病は症状改善が難しく、一度治療を開始すると生涯にわたり投薬が必要なイメージが強い。だが、近年の研究により、薬に頼らず自力で血糖値を下げることは十分可能であることが分かってきた。そこで、”ミスター血糖値”こと、やのメディカルクリニック勝どき院長・矢野宏行医師が推奨する食後の簡単体操のやり方を紹介する。
激しい運動は逆効果
運動も糖尿病の予防・改善の大きな柱だが、「ハードな運動、長時間の運動は必要ない」と矢野医師。より重要なのはタイミングだという。
「食後30分から1時間で血糖値が上昇するので、その前にゆるやかな運動でエネルギーを消費する。理想は食後15分以内にスタートすることです」
運動には、継続して行なうことで筋肉量を増やし血糖値が上がりにくい体にする長期的効果と、体を動かすことでエネルギーを消費し血糖値を下げる短期的効果があり、「食後に15分体を動かせば短期的効果が生まれ、続けることで長期的効果にもつながる」という。
「散歩など軽い運動を毎食後15分間実践する。時間のない人、運動が苦手な人は5分からでもいいです。毎食後が難しければ、まず夕食後から取り組みましょう。ポイントは大きな筋肉を意識して動かすこと。太もも、お尻、背中などにある筋肉は、サイズが大きい分、消費されるエネルギーも多くなります」
矢野医師が推奨する運動のひとつが「階段昇降」だ。階段の1段目を利用して昇り降りするだけで、太ももやお腹の大きな筋肉を簡単に鍛えることができる。
背中の大きな広背筋を鍛えられるのが、「エアプルダウン」。両手をY字にゆっくり伸ばし、伸ばしきったところから肩甲骨を背骨側に引き寄せるようにして、最初のポーズに戻す。いずれもイラストを参考に正しい姿勢で実践してほしい。
「朝はホルモンの働きで血糖値が上がりやすいため、健康に良いと思って取り組む朝食前のジョギングの負荷で血糖値が上がる場合がある。早朝ジョギングや激しい運動よりも、食後にちょっと体を動かす、座りっぱなしにならずにちょっと歩くといったことのほうが生活に組み入れやすく、継続につながります」
血糖値には睡眠時間も大きく影響する。北海道大学が行なった男女3570人を対象にした4年間の追跡調査では、睡眠時間が5時間以下のグループは7時間以上のグループに比べて、糖尿病の発症が5.3倍もあったという。
「就寝中には血糖値が下がりますが、睡眠時間が短いと下がりきらないまま翌朝を迎えることになる。また、睡眠不足状態では、体がストレスを感じた時に分泌されるホルモンが増え、血糖値が必要以上に上がってしまいます」
質の高い睡眠は少しの工夫で実現できる。
「睡眠を促すホルモンのメラトニンは光の刺激を受けると働きが弱まってしまうので、部屋の灯りはすべて消し、遮光カーテンで外からの光もブロックしましょう」
耳栓で外部からの音を遮断する、寝室の温度を一定に保つ、スマホなどの電子機器の使用は寝る2時間前までにするなども有効だという。
こうした血糖値リセット法を実践した結果、多くの患者が自力で数値を改善してきたという。
「3か月で空腹時血糖値が160mg/dLから100mg/dLまで下がったケースや、ヘモグロビンA1cが7%台後半から5.8%に改善したケースもあります。
大切なのはできない日があっても自分を責めないこと。家族や仲間の支えも借りながら無理なく続けることが大切です」
結果を急がず、ゆるやかに続けていれば血糖値はきっと下がる。
食後15分以内に実践!簡単体操
太ももやお尻などの大きな筋肉を鍛える「階段昇降」
【1】背筋を自然に伸ばして軽くお腹に力を入れ、腕を曲げて立つ
【2】右足を乗せ、前傾しないように気をつける
【3】左足を乗せ、両足で立つ
【4】乗せた足の順で、右足→左足と降ろす
【5】【1】~【4】を適度に休憩を挟みながら7分間繰り返す
《Point》
・できるだけ同じペースを保つと運動効果大
・ゆっくり自分のペースで行なう
・疲れてきたらその場で足踏みするだけでも効果あり
・7分で物足りない時はペースを上げたり時間を延ばす
広い面積の広背筋を鍛える「1セット10回のエアプルダウン」
【1】両足を肩幅の広さで開いて背筋を伸ばす
【2】両手を軽く握り両腕を曲げて顔の近くに置く
(この時お腹に軽く力を入れる)
【3】「イチ、ニ、サン」と数えながらゆっくりと両腕を斜め上にY字になるように伸ばす
【4】伸ばし切ったらヒジで腰を刺すようなイメージで肩甲骨を背骨側に引き寄せ、はじめのポーズに戻す
【5】【1】~【4】の動作を10回2セット繰り返す
《Point》
・疲れを感じたら休憩を入れる
・500mLのペットボトルを手に持ち行なうと負荷を高め、さらに効果を得られる
◆教えてくれた人:やのメディカルクリニック勝どき院長・矢野宏行医師
※週刊ポスト2026年10月9日号
