《深刻な介護の人材不足》「看護師を悩ませる夜間オンコール」「採用率を上げるには?」現場の職員たちが明かしたリアルな実情
介護人材不足が続いている。約7割の事業所が「職員の不足」を実感しており、中でも看護師の離職率は他の職種に比べて高い傾向にある(介護労働実態調査*)。介護施設の医療課題に取り組むドクターメイトが主催した施設の交流会に潜入。どんな悩みを抱え、どんなサービスを活用しているのか、現場の声をレポートする。
介護現場の人手不足、現場ではどう対処している?
介護労働安定センターの調査*によると、従業員が「不足している」と答えた事業所は65.8%と約7割に上り、前年度よりも上昇している。
また職種別では、介護職員の離職率は12.7%で3年連続低下しているが、看護職員の離職率は14.6%と他職種と比べてもっとも多い。
*公益財団法人介護労働安定センター令和7年度「介護労働実態調査」
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R7_jittai_chousa_press.pdf
長らく取り沙汰されている介護業界の人材不足に対し、実際に介護施設は何を感じ、どのような取り組みを行っているのか──。
千葉の12施設による交流会「介護現場の創意工夫と課題点」
交流会に参加したのは、千葉県を中心 とする特養(特別養護老人ホーム)などの12施設。施設長や介護職員、看護師など17名が集まった。
交流会を主催したドクターメイトは、人員不足に悩む介護施設の負担を軽減するための多彩な事業を展開している。
地域密着型で多彩なイベントを展開する施設
交流会に参加していた施設では、地域と連携して独自の取り組みを行っている様子が印象的だった。
高齢者複合ケア施設「グリーンヒル八千代台」(千葉・八千代市)では、年間を通して地元住民を巻き込んで多彩な催しを実施している。
「夏祭りには子どもたちを含めて約300人が参加しています。開設以来続けている12月の相撲行事には相撲部屋のお相撲さんを呼んで、地域住民を含めて約200人で楽しみます。高齢者だけでなく子どもたちともつながる共生型カフェも、5年以上続けています」
「施設長が大のイベント好き」という特別養護老人ホーム「吉祥園」(千葉・山武郡横芝光町)も行事が盛りだくさんだ。
「毎月1日は、月が変わったことを 利用者さんに意識してもらえるようにお赤飯を提供しています。今年からは、給食部が食堂で焼きそばやチャーハンなどを作り、その場で提供するライブキッチンを始めました」
施設が直面する課題にどう対処しているのか?
地域に根ざしたイベントに創意工夫を凝らす施設が多い一方で、「利用者の高齢化」や「看護師の働き方」の課題もあるようだ。
「利用者さんもだんだん高齢化してきていて、看取り件数が増えてきた」と明かすのは、特別養護老人ホーム「美香苑」(千葉・八千代市)。
梨園に囲まれた環境で利用者の食事には梨を振る舞うことが多いという同施設では、「看護師と介護職、リハビリ職が連携し、一人ひとりをゆっくり見送ることを大切にしながら、最期まで心地よく過ごしてもらいたいと思っています」。
オンコール問題についての声も挙がっていた。オンコールとは、施設勤務の看護師が、夜間や休日など勤務時間外に入居者の急変などがあったとき、すぐに対応できるよう待機する勤務形態のこと。
看護師が24時間常駐していない施設の場合、勤務時間外でも利用者に何かあったときには駆けつける「オンコール待機」が必要となり、これが看護師採用のネックになっていることがあるそうだ。
また、看護師が不在の深夜などに医療的なケアが生じた場合、看護師が24時間常駐していない施設では、オンコールは不可欠だが、介護職員もその判断や対応に負荷がかかるという。
広がるオンコール代行
こうした問題を受け、近年は夜間のオンコール対応を外部に委託するサービスを活用する動きが広がっている。今回の交流会を主催したドクターメイトのサービスもその一つで、導入施設が増加傾向にあるという。
特別養護老人ホーム「南三咲」(千葉・船橋市)では、
「夜間のオンコールの負担が大きかったため、オンコール代行サービスを導入したことで看護人材が潤いました。現在、看護師は10名体制になっています」
特別養護老人ホーム「舘山明光苑」(千葉・館山市)では、
「求人に『オンコールなし』と打ち出すと採用率が上がる傾向にあります。お子さんがまだ小さいかたなど夜間対応は難しい場合には、オンコール勤務がない働き方は魅力だと思います」
オンコール代行サービスは、看護師の採用率アップにつながるメリットがある一方で、「看護師だけが増えたとしても全体的な人手不足は解消しきれない」という課題や、「外部との連携には慎重に見極めたい」という現場ならではの声も聞かれた。
ある参加施設の担当者は、「普段は看護師が見ている利用者を外部のかたに託すのには不安もあります。情報共有がうまくい くのなら利用価値はあると思います。介護職員は夜中に看護師に電話をかけていいのか、遠慮や迷いも抱えています。伝え方を含め、使いこなせるようになるといいですよね」と明かしていた。
オンライン診療サービスでどこまで解決できる?
オンコール問題のほか、医師の診察に関する課題も。「認知症の利用者の薬の処方を医師に相談しにくい」「通院介助に人員や時間を割くのが負担」といった、さまざまな悩みの声が挙がっていた。こうした課題に対しては、「オンライン診療」サービスを取り入れているという声もあった。
「現場の負担を減らし、持続可能なものにするためにも、医療・介護の現場でも、特定の人だけに頼らず、必要な情報を共有し、対応できる仕組みづくりが必要です。
高齢化が進む多死社会ですから、看取りに関してもオンライン診療がかかわる未来がやってくるかもしれません」(ドクターメイトの代表で医師の青柳直樹さん)
介護現場の課題や悩みについて率直な意見が飛び交う温かい交流会だった。今後ますます、テクノロジーの力や外部サービスとの連携により、介護従事者が安心して働き続けられる環境が広がっていくことを期待したい。
取材・文・撮影/桜田容子
