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健康

《専門医直伝》65歳からでも肺の老化は食い止められる! 呼吸筋を鍛える「腹式呼吸」と誤嚥性肺炎を防ぐ「ベロトレ」のやり方

 心臓と肺。生命維持に欠かせない重要な臓器ゆえ、年齢に伴う機能低下が死に直結しかねない。しかし、どちらの臓器も「老化に抗う方法はある」と断言する専門医がいる。「TAKANAWA GATEWAY Clinics 睡眠・呼吸器」理事長で呼吸器専門医の宮崎雅樹医師が今日からできる「呼吸筋トレーニング」と誤嚥性肺炎予防法を解説する。

肺の機能を甦らせ誤嚥性肺炎を予防する

 心臓と同様に機能の衰えがQOL(生活の質)に直結し、命に関わることもある臓器が肺だ。日本人の死因のうち肺炎、誤嚥性肺炎がそれぞれ5位、6位と上位を占め、そのほとんどが65歳以上の高齢者だった(厚生労働省「人口動態統計」2024年)。

 そもそも高齢者はなぜ肺炎死が多いのか。『長生きしたけりゃ肺を鍛えなさい』(エクスナレッジ刊)の著者で呼吸器専門医の宮崎雅樹医師(「TAKANAWA GATEWAY Clinics 睡眠・呼吸器」理事長)はこう言う。

「加齢による弾力性の喪失、呼吸筋の衰えなどで肺の機能は低下します。歳を重ねると血中酸素量が少なくなる傾向があり、免疫力低下、ウイルスや細菌感染による肺炎が重なると、全身の細胞に十分な酸素や栄養が送れなくなり、様々な臓器がダメージを受け、やがて死に至ることになります」(以下、「 」は宮崎医師)

 高齢者の肺炎罹患は、死に至らずともその後の体力低下などで寝たきりとなるリスクが高い。

「肺炎による死亡や重症化を防ぎ、健康で長生きするには日頃から肺の機能を維持することが大切です。肺そのものを鍛えることはできませんが、運動や食事、生活習慣の改善などで肺の機能を維持・向上させることは65歳を過ぎてからでも十分可能です」

 そこで宮崎医師が推奨するメソッドの一つが、「腹式呼吸」「スクワット」「ストレッチ」による「筋力」の強化だ。

「肺を動かす呼吸筋とは、肋骨の間にある肋間筋と肺の下にある横隔膜です。加齢に伴い呼吸筋が衰えると、肺の機能低下に直結します。その対策として有効なのが腹式呼吸です。毎晩寝る前に布団の上などで10~20回実践すれば、呼吸筋が鍛えられ、肺の収縮が大きくなることで、機能の維持・向上が期待できます」

 同様に、全身で最も大きい太ももの筋肉を鍛えるスクワットは、「呼吸筋を含む全身の筋力維持に役立ち、結果的に肺の機能維持に繋がる」という。

「転倒の不安や関節の痛みがある人は、椅子に座った姿勢から立ち上がる運動や、座ったまま片足を上げてひざを伸ばす運動から始めてください」

 座った姿勢のまま行なう両肩の上げ下げや首を回すなどのストレッチも、「お風呂上がりなど毎日行なうことで呼吸筋の柔らかさを保つ効果が期待できる」という。

 運動とともに重要なのが「食事」の工夫だ。

「食物の消化や吸収・分解で消費される酸素、排出される二酸化炭素の量は栄養素で異なり、肺にかかる負担も変わります。酸素の消費量や二酸化炭素の排出量は脂質やタンパク質より炭水化物(糖質)のほうが多いため、肺の機能維持のために摂りすぎを避ける必要があります」

 ただ、炭水化物の摂取量を減らすだけでは「低栄養」を招く恐れがある。

「歳を重ねて食欲が低下してくると、脂質やタンパク質を含めてバランスよく食べることが重要になる。単に食事量を減らして低栄養状態が続くと、免疫力の低下を招き、かえって肺炎にかかりやすくなります」

 なかでも積極的に摂取したいのが「青魚」などの良質なタンパク質だ。

「高齢者の場合、運動不足に加えてタンパク質不足で筋力が低下した人が目立ちます。当然、呼吸筋の低下も進むため、糖質摂取を減らした分はタンパク質を多く摂るようにしましょう。特にアジ、サバ、イワシなどの青魚にはタンパク質に加えて脂質のなかでも良質なEPA、DHAが多く含まれており、お勧めです」

宮崎式「肺トレ」【1】筋肉を鍛える!

《腹式呼吸》

お腹を膨らませる、凹ませる運動により横隔膜(呼吸筋)を強化

《スクワット》

全身でもっとも大きい「太ももの筋肉」を鍛え呼吸筋・肺機能を強化

《ストレッチ》

座ったまま両肩を上げ下げする、首や上体を左右にねじるストレッチにより、加齢で硬くなった呼吸筋を柔らかくする

宮崎式「肺トレ」【2】食事で肺が若返る!

《炭水化物(糖質)の摂取を減らす》

酸素の消費量、二酸化炭素排出量の多い糖質摂取を減らし、肺の負担を軽減する

《良質なタンパク質を摂取する》

青魚、牛肉や豚肉、鶏卵、納豆、チーズなどを積極的に摂取し、呼吸筋の筋力低下を防ぐ

唐辛子の効果

 日本人の死因第6位の誤嚥性肺炎について、「死に至る過程(加齢による機能低下と肺炎による機能低下が重なり重症化する過程)は肺炎も誤嚥性肺炎も同じ」と宮崎医師は指摘する。

 誤嚥性肺炎は嚥下機能の低下が引き金となり、誤って気道に入った飲食物などから細菌感染して発症するため、予防にはまず嚥下機能を鍛えることが重要になる(別掲図参照)。

食べ物や飲み物の誤嚥を防ぐために宮崎医師が推奨するメソッドが「ベロトレ」だ。

「舌を思い切り前に出したり、引っ込めたりを繰り返すベロトレは舌を動かす筋肉が強化され、誤嚥を防ぐ効果が期待できます。首をゆっくり前後左右に動かし首筋を伸ばす『首トレ』、頬を膨らませたり凹ませたりを繰り返す『口トレ』を合わせると、誤嚥防止により効果が期待できます」

 誤嚥による細菌感染予防が期待できるのが「唾液腺マッサージ」だ。

「唾液腺のある箇所をマッサージすることで、加齢とともに低下する唾液の分泌を促し、細菌の増殖を防ぐ効果が期待できます。同様に、歯ブラシや歯間ブラシなどで口腔内を清潔に保つ口腔ケアも重要です」

 誤嚥予防に役立つ食材もあるという。

「唐辛子はぜひ取り入れてほしい食材です。辛味成分のカプサイシンには、加齢により衰えた嚥下反射機能を改善する効果があることがわかっています。また、ミント(ハッカ)に含まれるメントールにも同様の効果があるとされており、市販されているミントの香り付きマスクを着用するのも一手です」

 日頃の対策に加え、息苦しさなど急な肺の機能低下を感じたら医療機関の受診も検討したい。

「肺の機能低下は、喫煙はもちろん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの病気でも加速します。病気が疑われたら、呼吸器内科を受診し、治療により肺の機能低下を食い止めることも重要です」

 正しいメソッドで肺の老化を食い止めたい。

宮崎式「誤嚥性肺炎」予防術

《ベロトレ》

舌を動かす筋肉が強化され、誤嚥をふせぐ

《唾液腺マッサージ》

口腔内の乾燥による細菌増殖を防ぐ効果がある

《唐辛子を食事に取り入れる》

辛み成分のカプサイシンには嚥下反射改善の働きがあり、誤嚥の予防につながる

《ミントの香り付きマスクを着用》

唐辛子と同様、ミントに嚥下反射改善の効果があると報告されている

◆教えてくれた人:「TAKANAWA GATEWAY Clinics 睡眠・呼吸器」理事長・宮崎雅樹医師

※週刊ポスト2026年9月25日・10月2日号

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